なぜバルサはクーマンを解任しないのか?メッシの残した大きな穴とシャビを呼べない現状。
決断の時が、近づいている。
バルセロナが厳しい状況に追い込まれている。チャンピオンズリーグ・グループステージ開幕節でバイエルン・ミュンヘンに完敗(0−3)すると、そこから調子を落とした。
グラナダ戦(1−1)、カディス戦(0−0)を終え、一時はレバンテ戦(3−0)の勝利で持ち直したが、ベンフィカ戦(0−3)、アトレティコ・マドリー戦(0−2)と重要な試合で連敗している。
「(アトレティコに)負けるとは思っていなかった。もちろん、望んでいなかった。試合の入り方はよかった。勇敢に戦った。だけど、簡単に2ゴールを許してしまった。その後は、3時間くらいプレーしていたとしても、僕たちは得点を決められなかったと思う」とはアトレティコ戦後のピケのコメントだ。
「正直に言わなければいけない。とても難しい。僕たちは苦しんでいる。しかし、問題は一つではない。いくつかあって、それを人々は理解していると思う。困難な時期だ。嘘をつくことはない。ロッカールームの雰囲気は良い。でも、すごく複雑になっている」
■クーマン監督の進退
勝利から見放されているバルセロナだが、現在、取り沙汰されているのがロナルド・クーマン監督の解任の可能性だ。
クーマン監督がバルセロナの指揮官に就任したのは2020年夏だ。ただ、彼を呼んだのはジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長である。ジョアン・ラポルタ現会長ではない。
ラポルタ会長とクーマン監督の関係は決して良好とは言えない。実際、この夏にラポルタ会長は監督交代を検討していた。ユリアン・ナーゲルスマン監督、トーマス・トゥヘル監督、ヨアヒム・レーヴ監督とドイツ人指揮官を好んでいるラポルタ会長にとって、クーマン監督はファーストチョイスではなかった。
クーマン監督は、元バルセロナの選手である。バルセロナの“創造主”であるヨハン・クライフの指導を受け、ドリームチームの一員としてピッチで躍動。1991−92シーズンには、チャンピンズカップ(現チャンピオンズリーグ)のファイナルで、FKから決勝点を挙げてクラブ史上初の欧州制覇に貢献した。
そのクーマン監督の存在は無視できる類のものではない。しかし一方で、何かしらの変化が求められているというのも自明である。
この夏、バルセロナはリオネル・メッシが退団した。彼はパリ・サンジェルマンに移籍して、先日、チャンピオンズリーグ・グループステージ第2節マンチェスター・シティ戦で移籍後初ゴールを記録している。
メッシが残した穴は大きい。背番号10を引き継いだアンス・ファティが負傷から復帰したのは朗報だが、18歳の選手にすべてを委ねるわけにはいかない。
■後任候補と抱える問題
シャビ・エルナンデス監督(アル・サッド)、ロベルト・マルティネス監督(ベルギー代表)、エリック・テン・ハーグ監督(アヤックス)、アントニオ・コンテ監督(フリー)、アンドレア・ピルロ監督(フリー)...。後任候補には、複数の名前が挙げられている。
ラポルタ会長の本命は、シャビだろう。第一次ラポルタ政権(2003年―2010年)で、選手としてまさにバルサの黄金時代を謳歌していた人物だ。ただ、シャビは以前から、バルセロナを率いるのであればゼロからプロジェクトをスタートしたいという考えを示してきた。補強に関しても権利を有する願望を持ち、シーズン途中での就任は想像しにくい。
なお、第一次ラポルタ政権において、シーズン途中に監督の解任が行われた過去はない。フランク・ライカールト監督、ジョゼップ・グアルディオラ監督が中長期のスパンで指揮を執った。
クーマン監督の現行契約は2022年夏までだ。彼の契約解除にあたっては、1300万ユーロ(約17億円)前後の資金が必要になるとされている。コロナ禍で資金難に喘ぐバルセロナとしては、“解任劇”は容易ではない。
「どのような結果であれ、クーマンは続投する。彼には信頼が残されている」とはアトレティコ戦前のラポルタ会長の弁だ。
ひとまず、解任はない。だが、現地時間24日にはレアル・マドリーとのクラシコが控えている。そこまでに、クラブは水面下で動くだろう。そして、その結果を見て、再びクーマン解任の可能性が持ち上がるかもしれない。