Yahoo!ニュース

宮内庁はSNS活用を決定したわけではない

山下晋司皇室解説者
(写真:イメージマート)

宮内庁が来年度からのSNS活用を「決定した」かのような記事がいくつも出ているが、そのような事実はない。

大手新聞社のネット記事も紛らわしい書き方をしており、一般の人が誤解するのも無理はない。

宮内庁は来年度概算要求で「積極的な広報展開のための体制整備」のために長官官房参事官1人と職員2人の増員を出したが、SNS活用を決めた上でこの増員を要求したわけではない。増員された暁にはその職員にSNSも含めた広報の在り方を検討、実施してもらうということである。

よって冒頭に書いたとおり、SNSの活用も視野には入れているが現時点で「決定した」わけではない。

松野官房長官も9月1日午前の記者会見で「宮内庁において広報活動にSNSを活用すると決定した事実はなく、皇室に関する情報をより積極的に発信するためにどのような手法があるかについて今後検討を行っていく旨、先般宮内庁から説明が行われたものと聞いています」と述べている。

SNSは活用しないと決めたわけではないので、来年度または再来年度に始める可能性はある。

仮にSNSを活用するとしても、長官会見や次長会見のようなオンレコで宮内記者会に話した内容すらホームページに掲載していない官庁に何ができるのかは疑問である。

国民に皇室の正しい情報を伝えるという姿勢は宮内庁として当然のことである。ただ、週刊誌等に書かれたことに対する反論のようなことも必要ではあるが、普段から公表できることは積極的に発信していくという今すぐにでもできることから始めるべきではないだろうか。

本稿で書いたSNS活用についても、未決定事項の「宮内庁がSNSを活用」という内容が独り歩きしている、または独り歩きしそうだと認識した段階で即座に増員要求の「正しい」理由をホームページで説明するといった対応が必要だろう。

皇室解説者

昭和31年 大阪市生まれ、関西大学卒。20数年の宮内庁勤務後、平成13年に退職。宮内庁では昭和63年~平成7年まで長官官房総務課で報道を担当。昭和天皇の崩御・大喪の礼、平成の即位の礼・大嘗祭、秋篠宮殿下の結婚、皇太子(現在の天皇陛下)の結婚などの諸行事を報道担当として経験。平成時代の天皇皇后の中国訪問、米国訪問及び皇太子(現在の天皇陛下)のモロッコ・英国訪問に報道担当として同行。宮内庁退職後は出版社役員を経たのち独立。独立後は、BSテレ東・テレビ東京「皇室の窓スペシャル」の監修のほか、週刊誌・テレビなど各メディアでの解説、記者勉強会の講師、書籍・テレビ番組の監修、執筆、講演などを行っている。

山下晋司の最近の記事