麻しん(はしか)ワクチン「1回だけ接種」の人は注意! 気付かないうちに発症する「修飾麻しん」とは
各地で麻しん(はしか)の報告例が増えてきました。現時点ではそれぞれの感染経路を追うことができていますが、感染者数が増えてくると、どこで感染したのかなどが分からなくなってしまう可能性があります。特に、感染した人が中途半端な免疫を有していると、「修飾(しゅうしょく)麻しん」という状態になるため注意が必要です。
「修飾麻しん」とは
麻しんは定期で2回に分けてワクチンを予防接種します。しかしながら、忙しい、忘れていたなどの理由で2回目の接種が行われないことがあります。
子どもの頃に1回だけワクチンを接種しているなど、麻しんに対して中途半端な免疫を持っている場合、麻しんウイルスに感染すると、軽症で典型的ではない麻しんを発症することがあります。
こういった麻しんを「修飾麻しん」と呼びます(図1)。
症状は軽症になり、経過が通常の麻しん(図2)と異なるため、他の発疹性疾患である風しんなどと誤診されやすくなります。
修飾麻しんの感染性は通常の麻しんよりも劣りますが、それでも感染性があることには間違いなく、微熱とブツブツがある場合、一度は疑う必要があります。
とはいえ、実際に診断することは難しく、疑った医師が麻しんの抗体検査やウイルスゲノムを検出する検査を行うことで診断できます。
「1回接種」では不十分
麻しん風しん(MR)ワクチンは定期接種に位置付けられているとはいえ、実は2回接種率は100%ではありません。
感染性が高い感染症であるため、地域や国から麻しんを排除するために必要なワクチン接種率は95%という目標値になっています。しかし、令和4年度の第2期接種率は92.4%と目標値を下回っており、北海道、鹿児島県、沖縄県にいたっては2回接種率は90%を下回っています(図3)。
さらに、麻しんについて知らない世代が親になっていることもあって、全国的に接種率が年々低下傾向にあるという現状も問題です。
なぜ麻しんが報道されるのか?
定期接種化されて、現在ではほとんど感染者がいないのに、なぜ麻しんが数例報告されただけで報道されるのでしょうか。
理由の1つとして、「子どものありふれた感染症」「幼少期に感染しておけば大丈夫」という誤解が過去にあったことから、軽視している人が多いためです。麻しんは免疫を有さない状態では感染率が100%の病毒性が高いウイルスで、脳炎などの合併症を起こしたり、場合によっては亡くなったりすることもある、怖い病気です。
その他の理由として、免疫を持っていない人がたくさん存在することが挙げられます。上述したように、定期接種でさえ2回の接種が十分できていない地域があります。
2000年よりも前に生まれた人のうち、まだ1回しか接種していない世代は、2回目のワクチン接種を検討ください(図4)。
(参考)
(1) 厚生労働省. 麻しん風しん予防接種の実施状況. (URL:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou21/dl/231106-01.pdf)