なぜこれほどインフルが流行しているのか? 年末年始に発熱したら
インフルエンザの患者数が急増しています。全国36都道府県で定点医療機関あたりの報告数が30人を超える「警報レベル」に入っています。歴史的に高い水準で流行している地域もあり、年末年始の発熱には注意が必要です。
なぜこれほど流行しているのか?
定点医療機関あたりのインフルエンザ報告数が42.66人と、高い水準にあります。統計をとり始めてから過去最多の流行水準に到達している県もあり、きわめて感染リスクが高い状態になっています。
定点医療機関というのは、その地域を代表する医療機関のことです。1週間あたりの感染者数をカウントし、10人以上で注意報レベル、30人以上で警報レベルとされています。体感としては、注意報レベルは「感染者が増えてきた」、警報レベルは「感染者がかなり多い」といったところです。
筆者の住んでいる大阪府におけるシーズンごとの報告数を見ると、コロナ禍以降初めてとなる警報レベルの流行が到来していることが分かります(図1)。前週から倍々で増えているので、まだ流行のピークに達していない地域が多いかもしれません。
大人のコミュニティではなく、幼稚園・保育園や学校など子どものコミュニティを介して感染が広がっています。さらに、コロナ禍以降警報レベルの流行を経験していない地域が多いため、乳幼児はまだ免疫がない可能性があります。初発の感染で重症化することがあるので、ご注意ください。
年末年始に発熱したら
この時期に発熱した場合、特に子どもではインフルエンザの可能性が高いです。
ただ、新型コロナも流行し始めており、体感としては10人中8~9人がインフルエンザ、1~2人が新型コロナと言った感じです。こればかりは検査してみないと分かりません。
厚労省が体外診断用として認可している市販の新型コロナ・インフルエンザの検査キットは入手しにくいため、診断のために医療機関を受診する人が増えるでしょう。
発熱後すぐに検査すると、まだ十分ウイルスが検出できるレベルではなく、誤って陰性に出てしまうことがあります。症状が出てから検査まで12~24時間程度あけたほうがよいでしょう。
年末年始の稼働医療機関は、平時の2割程度にまで減少します。今年は感染者が多いので、救急外来が混雑しているかもしれません。
体調不良に備えよう
日頃から解熱鎮痛薬を常備しておくことをおすすめします。持病によっては内服がすすめられない解熱鎮痛薬もあるため、かかりつけ医に確認してから常備するようにしましょう。ドラッグストアなどで購入する場合は、過去に内服したことがあるものを選びましょう。
年末年始に帰省する場合、解熱鎮痛薬だけでなく、健康保険証や「おくすり手帳」を忘れないようにしてください(図2)。手帳には、使用している薬剤名だけでなく、用法用量も記載されているので、一気に確認できるほうが医師にとってもありがたいです。
医療機関をすぐに受診したほうがよいか迷ったときには、かかりつけ医が閉まっていたら、自治体の所定の相談窓口や「救急安心センター(#7119)」・「子ども医療電話相談(#8000)」などの活用を検討してください(図3)。
マスク着用など感染対策を
新型コロナが5類感染症に移行した影響もあってか、インフルエンザの流行期でさえもマスクの着用率がコロナ禍以前より減っている気がします。飛沫やエアロゾルからの感染を予防する効果は高く、図1に示したように、コロナ禍ではインフルエンザの流行は2シーズン連続で抑制されていました。
これは、国民が協力して新型コロナ対策をすすめたことによって、インフルエンザの流行が起こらなかったことを意味します。これ以上の感染拡大を防ぐためにも、シーンに応じてマスク着用を検討ください。
飛沫やエアロゾルからの直接感染だけでなく、手についたウイルスは、粘膜から容易に感染します。電車のつり革などを触った後は、アルコール手指消毒や手洗いを心がけてください。目や鼻を触る前に、「この手にウイルスがついているかもしれない」と警戒してください。
インフルエンザと新型コロナのワクチンは、現在同時接種が可能となっているので、ご検討ください。特に一度もかかったことがない子どもでは、ワクチン接種による予防が効果的です。
(参考)
(1) 大阪府感染症情報センター. 定点把握疾患 疾患別過去データ比較.(https://www.iph.pref.osaka.jp/graph/teiten/teiten.html)