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「物議を醸したノーベル平和賞受賞者の代表例」キッシンジャー氏が授与式に参列 会場で注目を浴びる

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
授与式で挨拶をするキッシンジャー氏とサントス大統領 Photo:Abumi

ノーベル賞授与式はスウェーデンで開催されるが、平和賞のみノルウェーの首都オスロで執り行われる。今年の平和賞授与式の招待客リストで、物議を醸している人物がヘンリー・キッシンジャー元米国務長官だ。同氏はベトナム戦争終結に貢献したとして、1973年に平和賞を授与されたが、授与式には姿を現さなかった。授与には反対の声もあり、当時、抗議をしていたノルウェー・ノーベル委員会メンバーだった中央党と自由党の2人は辞任した。

今年、キッシンジャー氏は、ノーベル委員会とオスロ大学に正式招待されており、平和賞授与式にも参列。11日(日)に開催予定のノーベル平和賞フォーラム・オスロの一環で「大統領選後の米国と世界平和」についてスピーカーとして討論予定。

左派政党や一部のオスロ大学の教授などからは、抗議の声が上がっている。左派新聞クラッセカンペン紙に対し、委員会ディレクターのニョルスタ氏は、「同氏の当時の役割については様々な意見がある。今年のフォーラムのテーマは、これからの米国と世界平和についてであり、一個人の過去の歴史的事件における責任についてではない」と回答。

今年の平和賞は、コロンビアの内戦終結に向けた努力を評価されたサントス大統領が受賞。10日の授与式終了直後には、サントス大統領がキッシンジャー氏と握手を交わす光景も見られた。ノルウェーの最大手全国紙アフテンポステンは、「(会場だった)オスロ市庁舎で話題をさらったのは、物議を醸した平和賞受賞者キッシャンジャーだった」と報道。

Screenshot:Facebook, Linda H Helleland
Screenshot:Facebook, Linda H Helleland

授与式の夜に開催された晩餐会では、ノルウェーのリンダ・カトリーネ・ホフスタ・ヘッレラン文化大臣が自身のフェイスブックに「お話ができて光栄でした」と写真を投稿。アーナ・ソールバルグ首相と同大臣、両氏の夫がキッシンジャー氏と笑顔で映っている1枚だった。左派社会党のヴァーレン氏を筆頭に、「戦争犯罪人とセルフィーですか?」、「保守党の政治家と戦争犯罪人」と、写真が拡散され、SNSで批判する人たちも続出。

1989年の平和賞受賞者であるダライラマ14世は、2014年にノルウェーを訪問。しかし、中国との国交関係を懸念した首相や政府関係者は、公式な面会を断った。これまで平和賞受賞者の候補者として何度か名前があがっている中央情報局(CIA)の元職員、エドワード・スノーデン氏。同氏の受け入れにも、ノルウェーは消極的な姿勢を見せており、平和団体関係者などからは、批判の声が上がっている。その中で、首相や大臣がキッシンジャー氏とセルフィーを撮ったことは、一部の人々を驚かせたようだ。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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