リンクではなくキャプチャ - 若年世代の「シェア」で問われるメディアの生き残り戦略
ウェブメディアをしていて時折おそろしく感じるのは、スマホネイティブ世代の行動が予測できないことです。
LINEの巨大グループやMixChannelのカップルキス動画など、理解が追いつくより先に新しい現象が発生する様子を見聞きすると、このような感覚のズレがやがて自分の職域にも影響を及ぼすであろう予感がします。
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スマホネイティブ世代、さらにその先の、もっと今と違う何らかの世代が大多数になった世の中では、ウェブメディアもまたオールドメディアとしてくくられるのでしょう。このスピード感では、それはそう遠くない未来のような気がします。
そのような現状で、さいきん目につくようになったのは、若年層のソーシャルシェアの方法が変化していることです。特にこれはTwitterなどで顕著で、おもしろかった情報を共有する際に、記事などのリンクをシェアするのではなく、キャプチャをシェアするというものです。
インターンの大学生に聞いてみると、LINEなどでもこのように、おもしろかった記事のおもしろかった部分だけを、画像として送り合うのが一般的になりつつあるといいます。そしてこのような現象によって、メディアは今後、生き残り戦略を問われることになるでしょう。
どういうことかと言うと、おもしろかった部分だけを画像としてシェアし、そこでユーザーの体験が完結してしまうと、コンテンツを掲載しているメディアにアクセスを返すことができません。これは以前問題になった、バイラルメディアの情報の二次利用よりも深刻です。
可視化されないシェアがすでに生まれているということには、メディアを運営する側ももっと自覚的になるべきかもしれません。トレンド総研が2015年2月に実施した調査によれば、若年層のLINEの利用率は70%、次いでTwitterが37%に登っています。
「10~20代のコミュニケーション事情」に関するレポート - トレンド総研
キャプチャによるシェアが進むと、ソーシャルシェア数やPVを基準にした従来のメディア運営モデルは成立しないことになります。これは、キャプチャによるシェアではコンテクストが生まれないためです。
例えばネイティブアドはある一定のコンテクストをもとに成約につなげる作りになっている場合がほとんどかと思いますが、この方法でシェアされてしまうと、おもしろい部分だけが抜き出されてしまい、成約に至る流れが寸断されてしまいます。
そもそも出典サイトへの導線が存在しないのだから、アドネットワークであれ、バナーであれ、ネイティブアドであれ、広告収入は減少することになるでしょう。メディアのひとつの側面である売り上げを上げるという役割が失われます。iOS9の広告ブロックより根が深いです。
「iOS 9」のコンテンツブロック機能、広告だけではなくGoogle Analyticsなどアクセス解析ツールもブロックされる可能性
ではメディアの認知の拡大やブランディングができるかというとそれも難しくなるでしょう。コンテクストを重視しない文化では、わざわざおもしろい情報を発信したメディアを調べようとはしません。回ってきた画像の出典元を調べるのはなかなか難しいことでもあります。
結果として、このような変化に対応できないメディアは、中長期的に存続の危機に立たされる可能性があります。実態の調査がなされていない現在はまだ問題になっていませんが、キャプチャでシェアする文化というのは、実はメディアの生き残りを問う現象なのではないでしょうか。
リテラシーが高い層であれば、作り手側に利益を生まないこのようなシェアが浸透すると、そもそもコンテンツが供給されなくなるとわかるかもしれません。しかしこのような判断がつくようになる前からスマホが当たり前になっている世代に、それを教えることはできるでしょうか。
おもしろかった記事のおもしろかった部分をシェアするという行為は、ユーザーの立場になってみると、自然なことでもあります。情報量は画像のほうが多く、手軽であることは間違いないので、この流れはこの先も進んでいくものと思われます。
Twitter Japan社は10代のユーザー向けにセーフティーセンターを開設しました。このような情報教育により、キャプチャにまつわる著作権の説明はなされるべきと思いますが、同時に、サイトキャプチャを多用しているのは当のメディアでもあることは自戒しなければなりません。
10代の皆さんへのアドバイス - Twitter セーフティーセンター
このような現象が完全に一般化してしまうと、もっとも生き残りやすいのは会員登録をさせてユーザーを囲い、一部課金型でマネタイズをするメディアになるかと思います。変化の激しいウェブ業界においては、マネタイズもブランディングもしやすいからです。
また、Yahoo!やLINEのようなプラットフォーマーと、良質なコンテンツを制作するパブリッシャーの二極化が進行し、いずれにせよ中途半端なメディアは淘汰されてしまうでしょう。メディアに関係する立場として、自戒を込めてマーケティングに努めたいものです。