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こんな投手は二度と出ない!? 同じシーズンに「最多セーブ&最優秀防御率」

宇根夏樹ベースボール・ライター
赤堀元之(写真:岡沢克郎/アフロ)

 2020年にリリーフとして50イニング以上を投げた投手は、セ・リーグに8人、パ・リーグに5人いた。それぞれのリーグで最も多かったのは、55.0イニングのヘロニモ・フランスア(広島東洋カープ)と53.0イニングの平良海馬(埼玉西武ライオンズ)だ。ちなみに、岩貞祐太(阪神タイガース)や平井克典(埼玉西武)は、ここには入らない。岩貞の71.0イニング中、41.0イニングは先発なので、リリーフとしては30.0イニングとなる。平井の60.1イニングは、先発が17.1イニング、リリーフは43.0イニングだ。

 もっとも、各リーグ最多のフランスアと平良ですら、規定投球回の半分にも届かなかった。

 防御率のランキングは、規定投球回以上の投手を対象としている。最優秀防御率のタイトルを手にするのは、基本的には先発投手だ。21世紀に入ってから、このタイトルを獲得した延べ41人中40人は、登板に占める先発の割合が90%を超えた。残る1人、2004年にパ・リーグ1位の防御率2.90を記録した松坂大輔(当時・西武ライオンズ/現・埼玉西武ライオンズ)も、リリーフの方が多かったわけではなく、23登板中、先発が19試合(82.6%)、リリーフは4試合(17.4%)だった。

 けれども、時代を遡ると、リーグ最多のセーブを挙げ、そのシーズンに規定投球回に到達し、リーグ1位の防御率を記録した投手もいる。それも、1人や2人ではない。延べ7人を数える。

筆者作成
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 なかでも、1982年の斉藤明夫は、史上初の1シーズン30セーブ以上を記録した。1976年に鈴木孝政が挙げた26セーブも、1982年に斉藤(と29セーブの江夏豊)に更新されるまでは、シーズン最多記録だった。

 防御率1位&最多セーブの7人目となった、1992年の赤堀元之は、最後の2登板が先発。そこで、計15.0イニングを投げて規定投球回に到達し、最優秀防御率のタイトルを獲得した。赤堀のリリーフ防御率(115.0イニング)と先発防御率(15.0イニング)は、まったく同じ。どちらも、防御率1.80を記録した。

 また、最多セーブ以外にも、10先発未満で最優秀防御率は、セーブが公式記録となった1974年以降に5人いる。その最後は1994年。赤堀の2年後だ。西武の新谷博が、先発8登板とリリーフ33登板で計130.0イニングを投げ、パ・リーグ1位の防御率2.91を記録した。

 なお、21世紀に最優秀防御率のタイトルを獲得した投手が、20年(2001~20年)×2リーグ=40人ではなく、それよりも1人多いのは、2003年のパ・リーグは防御率1位が2人いたことによる。それについては、2020年のシーズンが始まる前に、こちらで書いた。

タイトルを分け合った投手たち。最多勝は多いが、最多奪三振と最優秀防御率で並んだのは…

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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