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キャサリン妃撮影のホロコースト生存者の写真 英国博物館で展示「私たちの心の中に永遠に刻まれるべき」

佐藤仁学術研究員・著述家
2020年の国際ホロコースト記念日に生存者と語り合うキャサリン妃(写真:REX/アフロ)

「とても辛く苦しかったホロコーストの時代の歴史の記憶は私たちの心の中に永遠に刻まれるべきです」

ケンブリッジ公爵夫人キャサリン妃が昨年、ホロコーストの生存者と対面して、キャサリン妃自身が彼らを撮影した写真が、帝国戦争博物館に展示されている。イギリスのロンドンにある帝国戦争博物館ではイギリスや世界の歴史上の戦争に関する展示を行ってる。

2021年8月6日から帝国戦争博物館では「Generations: Portraits of Holocaust Survivors」というタイトルで、ホロコースト生存者や家族の写真が50枚展示されている。そのなかに、キャサリン妃が撮影したホロコースト生存者のスティーブン・フランク氏、イヴォンエ・ベルシュタイン氏らと家族の写真も展示。2022年1月まで展示予定。キャサリン妃は2020年の国際ホロコースト記念日には式典にも参加していた。ホロコーストの歴史の記憶の継承にも積極的に活動している。

キャサリン妃は「とても辛く苦しかったホロコーストの時代の歴史の記憶は私たちの心の中に永遠に刻まれるべきです。想像を絶するような経験と信じられないようなトラウマを抱えて生きてきた2人の生存者の方にお会いできてうれしかったです」と語っていた。

帝国戦争博物館は「ホロコースト生存者の写真を通じて、当時の記憶や経験を伝えていきたいです。これらの写真は心を動かすようなものばかりです。ホロコーストというユダヤ民族抹殺を生き延びて、戦後家族ができて、未来に向けて命をつなぐことができました」とコメントを寄せている。

進む「ホロコーストの記憶のデジタル化」

第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが支配下の欧州で約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。帝国戦争博物館ではオンラインでバーチャルホロコースト展示ツアーも行っている。オンラインなので世界中のどこからでもアクセスしてツアーに参加が可能。帝国戦争博物館ではバーチャルホロコースト展示以外にも様々な戦争に関するバーチャルオンラインツアーを提供している。

戦後70年以上が経過しホロコースト生存者らの高齢化も進み、多くの人が他界してしまった。当時の記憶や経験を後世に伝えようとしてホロコースト生存者らの証言を動画や3Dなどで記録して保存している、いわゆる記憶のデジタル化は積極的に進められている。またホロコーストの犠牲者の遺品やメモ、生存者らが所有していたホロコースト時代の物の多くは、家族らがホロコースト博物館などに寄付している。特に新型コロナウィルス感染拡大によるロックダウンで多くの博物館が閉鎖されてしまってからは展示物のデジタル化が加速されており、バーチャルツアーで世界中の人が閲覧できるようになっている。

欧米では主要都市のほとんどにホロコースト博物館があり、ホロコーストに関する様々な物品が展示されている。そして、それらの多くはデジタル化されて世界中からオンラインで閲覧が可能であり、研究者やホロコースト教育に活用されている。いわゆる記憶のデジタル化の一環であり、後世にホロコーストの歴史を伝えることに貢献している。

▼キャサリン妃がツイッターでホロコースト生存者との対談を報告

▼2020年国際ホロコースト記念日に参加するキャサリン妃

写真:REX/アフロ

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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