韓国野球レポート2019:いまだ残る「昭和」な球場、大田(テジョン)・ハンファ生命イーグルスパーク
2010年代の新球場建設ラッシュの中、韓国のプロ野球本拠地球場は、おおむね最新鋭の「近代的」スタジアムに変わっていった。収容数ナンバーワンの首都ソウルにある蚕室(チャムシル)スタジアムが、KBO発足後最初に建設されたものだが、ソウル五輪に備えて1982年に建設されたこの球場は、当時最新鋭の技術で建てられ、度重なるイノベーションによりさほど古さは感じさせない。創設当初のKBOの使用球場は、ここ以外は、当時の日本の地方球場並みのものだった。
現在のKBOのスタジアムでこの蚕室スタジアムの後建設されたのは、現在ktウィズが使用している1989年開場の水原ktウィズパークだが、こちらの方は、その建設年代の新しさに反して、つくりが当時の韓国の球場の典型的な形をしており、古さはどうしても感じてしまう。それでも、ktはこの町に根付くべく、リーグ参入に際してこの球場を大幅改装した。
この球場と似た形をしているのが、先日紹介したサムソン・ライオンズの旧本拠、大邱(テグ)市民球場と今回紹介する大田(テジョン)のハンファ生命イーグルスパークだ。かつては、この町の旧名であった「ハンバッ」を球場の名にしていたが、現在はチームの親会社関連のネーミングライツによりこの名に変わった。
韓国プロ野球の歴史を見守り続けてきた古参球場
この球場には以前来たことがあったので、今回は訪問の予定をしていなかったのだが、新球場の建設が決まったと聞き、その姿を見納めておこうと足を運んだ。
そういう事情もあり、パス申請はせず、客席からの観戦となった。せっかくなので、ビールでも飲もうかと、球場前の出店で海苔巻き、キムパップとプラスチックボトルの1リットルビールを買う。ハム入りキムパップが2500ウォン(250円)に、ビールが6000ウォン(600円)。スタンドでビールのキャップを開けると、大量の泡が出てきた。いつまでも冷たいのを味わえるよう半冷凍してくれているのだが、あいにく4月最初のこの町はまだまだ寒い。ナイター観戦は白い息を吐きながらのものになる。
1965年開場の大田ハンバッ球場は、最初はOB(現斗山)ベアーズの本拠としてKBO発足の1982年からプロ野球の球場として使用された。その後、OBがソウルに移り、新規参入したピングレ(現ハンファ)イーグルスが1985年(一軍は86年)からホームとしている。この球場は37年間韓国プロ野球の歴史を見守り続けている唯一の球場なのだ。
古い球場に施されるイノベーション
そんなイーグルスパークだが、各地に2万人規模の新球場が建設される中、2012年以降観客席の増設を繰り返し、現在は1万3000人を収容できるようになっている。
以前ここを訪ねたのは2006年だったのだが、その時との大きな違いは、1,3塁側内野に2階席が設けられたことだ。ネット裏だけは増築しなかったので、2階席の上段はネット裏の天井より高い位置になる。
また、外野席もレフトの最上段にはラグジュアリーシートが増設され、同じくレフトの前方のスタンドが削られ、両軍のブルペンが設けられていた。外野フェンスも後ろにずらせたという。
フィールドも一度は人工芝にしたものの、韓国球界の天然芝回帰の風潮に合わせて、現在は天然芝に戻されている。
そして新しい歴史へ
しかし、KBO発足以来のプロ野球本拠地の歴史を刻んできたこの球場も、あと数年でその役割を終えることが決定したという。隣接する競技場を取り壊した上で、新球場「テジョンベースボールドリームパーク」を建設することが決定したのだ。現在、韓国では内野に巨大な高層スタンドを建て、外野スタンドはほとんどないという球場がトレンドだが、新球場も同じようなつくりになるだろう。都心にも近い新球場のスタンドからは、年々成長を遂げる大田の摩天楼が望めるようになるに違いない。
(文中の写真は全て筆者撮影)