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精神科医が教えない「子育ての悩み」を解消させる方法「人生における本当に大切なこと」

ひとみしょう哲学者・作家・心理コーチ

ほとんどの人は科学に首までどっぷり浸かっています。皆さん知らず知らずのうちに科学至上主義者になっているのです。つまり、なんらかのデータをもとに、「高い確率でそう言えそうなこと」を、人々は無意識のうちに「正しい」と「信じる」――今の時代はそんな時代です。

子育ての悩みとは

しかし、皆さんが気づいていないだけで、じつは科学が捨象しているものはたくさんあります。なぜなら、そもそも私たちの心は科学では割り切れないからです。

科学の心理学は割り切れないものを、例えば認知行動療法で割り切ろうと試みます。認知を矯正してもなお、矯正されなかったことこそが真の問題であるにもかかわらず。

あるいは薬によって割り切ろうとします。しかし、それでも割り切れないものは残ります。

これは私たちの心が「なぜかそうなっている」ということであって、なにも私のせいではありません。

子育てにおける悩みとは、まさにその割り切れないものの内にあります。

例えば、子どもの「自己肯定感」の低さに悩んでいる親に対して、「まずは親自身の自己肯定感を高めましょう」と指導するお医者がいます。自己肯定感というのが、この場合、何を意味するのかよくわからないのですが、要するにお医者は「こうすれば、ああなる」という方程式の中で何らかを語っています。

問いをつくる力

他方、哲学は割り切れないことこそを扱う学問です。

例えば、親が自分の自己肯定感(のようなもの)を高めてもなお、子どもの自己肯定感(のようなもの)が低い。それはなぜだろう? と問うところから哲学は始まります。要するに、世間一般に言われている「こうすれば、ああなる」をやっても、そうはならなかった。そこから何かを問うのが哲学です。

親の自己肯定感が低いと子どもの自己肯定感も低くなると言われているが、それは果たして本当だろうか? という問いでもいいでしょう。

そもそも自己肯定感とは何か? という問いでもいいでしょう。

なぜうちの子は無気力なのか? という目に見える現象から問いを立てるのもいいでしょう。

人生における本当に大切なこと

多くの人は無意識のうちに科学を信じているので、「こうすれば、ああなる」という理路から親子そろって外れてしまったと知るや「おちこぼれた」と即断するようです。子どもがゲーム中毒みたいになっている。親が何らかの「しつけ」を施しても子どもは1日7時間もゲームをしている。ああ、もうダメだ。うちの子はおちこぼれた。私は親失格だ……。夫婦で肩を落とし、深夜にひそかに泣くご家庭もあると聞きます。

しかし哲学は、「おちこぼれたところから一緒に考えようぜ」と、あなたの肩を抱きしめてくれます。「人生における本当に大切なことは科学が捨象したものの内にあるのだよ」とささやいてくれます。

問いを作ることは誰でもできます。

ぜひ、あなたの人生から問いを作ってみてください。できれば、問いをお子さんと一緒に考え、一緒に答えを探す旅に出てみてください。少しずつ状況が変わってくるでしょう。少なくとも「こうしても、ああならない」と絶望するだけの親を卒業できるはずです。

哲学者・作家・心理コーチ

8歳から「なんか寂しいとは何か」について考えはじめる。独学で哲学することに限界を感じ、42歳で大学の哲学科に入学。キルケゴール哲学に出合い「なんか寂しいとは何か」という問いの答えを発見する。その結果、在学中に哲学エッセイ『自分を愛する方法』『希望を生みだす方法』(ともに玄文社)、小説『鈴虫』が出版された。46歳、特待生&首席で卒業。卒業後、中島義道先生主宰の「哲学塾カント」に入塾。キルケゴールなどの哲学を中島義道先生に、ジャック・ラカンとメルロー=ポンティの思想を福田肇先生に教わる(現在も教わっている)。いくつかの学会に所属。人見アカデミーと人見読解塾を主宰している。

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