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2年目の抱負は長打と左打ち! 植田海選手《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
昨年6月6日、腰痛で離脱する直前の新潟遠征で、試合前の練習をする植田選手。

2016年は穏やかなお天気で始まりました。テレビ中継される屋外スポーツで選手たちは額に汗を光らせ、箱根駅伝などはちょっと気温が高すぎて辛かったんじゃないかと思うくらい。でもサッカーやラグビーなどを現場で生観戦される方には、とても有難い温もりだったでしょうね。テレビで見ていても日差しが眩しいほどでしたから。

阪神タイガースの選手たちは既に始動していて、新人選手も2日から次々に自主トレを公開しています。もうすぐ入寮し、すぐに鳴尾浜での新人合同自主トレがスタートするので、その準備に余念がない時期ですね。ということは皆さんが鳴尾浜のスタンドで練習見学できる日も近づいてきたわけで、もうワクワクされているのでは?ことしもよろしくお願いします。

植田海選手の2015年

さて、きょうは1年前の2日に地元・滋賀県で自主トレを公開した植田海選手(19)の、2年目に賭ける思いなどを聞きましたのでご紹介します。まずはルーキーイヤーの振り返りです。昨年の成績をご覧ください。

【ファーム公式戦】

試合 51 打率 .200

打数 125 安打 25 打点 5

本塁打 1 三塁打 0 二塁打 1

三振 34 四球 11 死球 1

盗塁 6  犠打 1 失策 11

◆初安打

3月22日 中日戦 (鳴)

◆初マルチ安打

4月2日 オリックス戦 (鳴)

◆初盗塁

4月14日 オリックス (京セラ)

◆初二塁打

4月15日 オリックス戦 (神戸2)

◆初本塁打

5月2日 広島戦 (由宇)

【練習試合、交流試合】

試合 18試合 打率 .244

打数 45 安打 11 打点 2

本塁打 0 三塁打 0 二塁打 1 

三振 11 四球 9 死球 1

盗塁 4 失策 1

【フェニックスリーグ】

試合 13 打率 .265

打数 34 安打 9 打点 2

本塁打 0 三塁打 0 二塁打 1

三振 5 四球 3 死球 0

盗塁 5 失策 0

「30点くらい」だった1年目

昨シーズンの自分自身を振り返って、100点満点でどれくらいの点数をつけますか?「30点くらいですかねえ」。思いのほか辛めの自己採点。「何もできなかったんで…」。それはやっぱり腰を痛め、6月半ばから3ヶ月間ほど試合に出られなかったことも含めて?「はい。時間かかってしまいました」とつぶやきます。

9月18日、スタメンに復帰した試合でヒットを打った植田選手。
9月18日、スタメンに復帰した試合でヒットを打った植田選手。

2月のキャンプからしっかりと打ち、試合でもヒットが出て、ショートの守備をサラリとこなすルーキー。期待が大きかっただけに「植田選手の長期離脱は残念」とファンの皆さんはおっしゃいます。本人にはもっともっと長い3ヶ月だったでしょうね。バッティングも悔しい思い?「もっと打ちたかったというのはあります。もっと打てると思っていたので…」。でもそうはいかなかった?「はい。ピッチャーの球もよかったです。やっぱり、違いました」

守備に関しては安芸キャンプでもうその片りんは見えていたと思いますが、鳴尾浜のファンの皆さんも植田選手のプレーを見て「おっ」と思われた方は多かったようです。我々もしかりで、思わず「このショートは前田大和選手以来かも」と、その間にいた選手たちに対して失礼なことを言ってしまいました。すみません。でも2015年の重大ニュースに『植田選手の守備』を挙げた人もあるくらいです。ただ本人に聞くと「守備はそんなに。でも打球が速いですね」という感想。あくまでも自然体でした。

3月にさっそくサヨナラ打

印象に残っている試合は?「うーん。印象。どれですかねえ」。サヨナラヒットもありました。「あれは教育リーグなので」。そうですか。かなりのインパクトでしたよ。我々にも。

3月8日に行われた春季教育リーグ・オリックス戦(鳴尾浜)のことです。2対2の9回裏に一二三選手が四球を選び、小豆畑選手の犠打と西田選手の中前打、2死後に横田選手も四球で満塁となりました。続く植田選手が森本投手の真っすぐを打って左前タイムリー!一二三選手が還ってサヨナラ勝ちです。笑顔いっぱいで戻ってきた殊勲の“末っ子”を、先輩たちが手荒く祝福したのは言うまでもありません。

この日は初めて2番(ショート)で先発出場していた植田選手。3打席連続フライアウトのあと、7回に右前打を放ちながら牽制でアウトになって、その次の打席が9回だったのです。試合後には「詰まってバット折れてました。真っすぐしか来ていなかったので、変化球は捨てていた」と言い、決めてやろうと思っていたかのと聞いたら「はい。アウトになったら次はないので」とニヤリ。

ところが、自信はあった?という問いに「そんなに自信ってのは…。あんまり打てると思って打席に入っていないんで。ああいう場面ですか?今までも打ったり打たなかったりでしたねえ」と正直すぎる返事だったのを覚えています。とても普通で気負うことがない受け答えは、植田選手のプレーそのもの。大きな魅力ですね。

10月、フェニックスのイベントでキャッチボール。子どもの球にコケちゃいました!
10月、フェニックスのイベントでキャッチボール。子どもの球にコケちゃいました!

終盤に放った決勝打!のはずが…

そのサヨナラ打は公式戦ではないので、と本人が却下しています。しばらく考えたのち「あ、オリックス戦であります。僕が打って勝ち越して、それが決勝点やと思ったら、また逆転された試合。でもいつの試合かわからない」と言うので、調べてみました。すぐに判明しました。

4月16日のウエスタン・オリックス戦(神戸2)。4対2とオリックスがリードしていた8回に黒瀬選手と代打・一二三選手が連続四球、江越選手は右飛で1死となり中谷選手の左前打で満塁。まず代打の原口選手が押し出しの四球を選んで1点差、続く横田選手は空振り三振で2死となりますが、小宮山選手も四球を選んで押し出し。同点となってなおも満塁の場面に、9番の植田選手が中山投手の真っすぐをセンター前へ!

三塁から中谷選手が生還して、ついに勝ち越したもののリードは1点だけで、その裏を迎えました。伊藤和投手が先頭から二塁打、四球、四球で鉄平選手に二塁打を浴びて逆転。代わった小嶋投手も1死後に宮崎選手の2点タイムリーと、計4点を許して8対5。9回は無得点で試合が終わっています。

試合後のコメントを見返してみると「負けていたのが同点になって、みんながつないでいたから打ててよかった。回ってこい!と思っていました。きのう中山投手に打ち取られたので、きょうは打ったろうと」。なかなか強気なことも言っていたんですね。「今、調子がいいのでバットも振れていると思います。弱かったけど、いい当たりでした。1球目は真っすぐか変化球か迷っていて、(打った)2球目は真っすぐを狙っていました」

公式戦の2試合連続ヒットも初めてで、古屋監督は「決勝タイムリーになり損ねたねえ。植田は練習よりゲーム向き。守備もいい、ちゃんと守ってくれるからね」と、この3日後の4月19日に19歳となるルーキーを高く評価しました。

この試合で合っていますか?「それです!」。よかった。一番印象に残っているというのは、自身のバッティングですか?それとも勝ち越したこと?「つないでもらってタイムリーを打ったからですね」。試合後の言葉と同じでした。とはいえ自身のバッティングが好調だったというのもあるでしょう。

他には?「それか、ホームランですかね」。5月2日の広島戦(由宇)で打った第1号ソロ。紅白戦や練習試合、教育リーグでもなかった、正真正銘のプロ初ホームランでした。感触は覚えている?「よかったですよ~。あれだけは。ほんまに」としみじみ。由宇球場だったから見られなかったのが残念でした。「そうですね。僕、鳴尾浜でそんなに打っていないかも」。ことしはお願いします。

今季はどういうところを目指しましょうか?「去年は長打が全然打てなかったから、ことしは打ちたい。二塁打とか打ちたいですねえ。自分としては右中間とか左中間とかレフト線とか。内野の頭を越すっていうのは要らない。三塁打や二塁打を多く打てるといいなと思います」とのこと。足もある選手だけに長打は期待したいところですね。

白いご飯が大好物です

9月20日、滋賀県守山市での試合後に行われた野球教室で笑顔いっぱい。
9月20日、滋賀県守山市での試合後に行われた野球教室で笑顔いっぱい。

ここからは少し脱線して、少し緩い話を聞いてみました。植田選手らしい、とってもナチュラルで飾らない返事が続きます。肩の力を抜いてお読みください。まず野球を始めたのはいつで、きっかけは何かという質問です。「小学2年の時。きっかけは特に。おじさん、ですかねえ。おじさんとキャッチボールをしていて」。地元のスポーツ少年団に入って、初めて守ったポジションはショートだそうです。それ以降も「ほとんどがショート」だと言っていました。

プロ野球選手になりたかった?「小学生の頃は普通にプロ行きたいと思うけど、中学では特に思わなかったですね。ただ甲子園を目指してたって感じで」。意識したのは?「高校3年じゃないですかね。転校したので2年の時は試合に出られなかったし」。そうでしたか。でも3年になってスカウトの人が来られたりして?「はい。そこからです」。最初で最後だった3年夏の甲子園は打率.571の打撃、守備や走塁も高く評価されて、小さい頃からファンだった阪神へ。この縁に感謝ですね。

次に食べものの好き嫌い。好きなものは?「ごはん」。え?「白ごはん」…何ごはん?「白ごはん」。何度も聞き返してしまって、植田選手すみません。それはつまり焼き飯とか炊き込みご飯とかじゃない、白いご飯がいいってことですか?「というか、ご飯が好きなんです。おかずがなくても白いご飯だけ食べられるくらい。熱かったら」。へええ!何だか嬉しくなりますね。お母さんの炊かれたご飯が美味しかったんですよ、きっと。

じゃあ嫌いなものは?「乳製品です」。あらま。牛乳も?チーズも?チーズケーキなんかもダメ?「はい。全部苦手です」。牛乳は飲めって言われたでしょうに。給食はどうしてたの?「ちょくちょく残していました」。ですよねえ。私も昔はピザすら食べられないくらい苦手だったので、よくわかります。

続いて、好きな女性のタイプを教えてください。外見でも性格でも。「外見はないですけど、笑っている感じが。いっぱい笑っている人がいいですね」。ほほー、そう来ましたか。やっぱり植田選手らしい気がします。ただ“いっぱい笑っている感じ”をよりわかりやすくするために、好きなタレントさんも聞きましょう。「女優やったら…倉科カナ、とか」。ああ~なるほど。あんなふうに笑ってくれる人ですね。了解しました。

好きな色は?「青。紺色みたいな、濃い青が好きです」。ただし用具に取り入れたりは特にしないそうです。もらって嬉しいプレゼントは?「嬉しいものですか。プレゼントは何でも嬉しいですよ」。よくできました!仲のいい選手は?「同級生がいないんで…」。そう、一番近いのは1つ年上の横田選手ですもんね。後輩が入ってくるとはいえピッチャーだから監督のお世話(?)は2年連続で植田選手の役目。でもまあ掛布監督は去年もいらしたしね。「はい。慣れているので大丈夫です」

スイッチ本格挑戦の2年目

自分でも楽しみだという植田選手の左打席、楽しみです!
自分でも楽しみだという植田選手の左打席、楽しみです!

年明けの自主トレは特に場所を決めず、グラウンドへ行ったり日によって色々だとか。ことしは暖かいお正月でよかったですね。そして7日に寮へ戻り、8日から鳴尾浜で練習をする予定だそうです。

では最後に、2年目の抱負をお願いします。

「やっぱり、1軍ですかね。まず1試合でも1軍戦に出るのが目標です」

2月のキャンプでは?

「左打ち。とりあえずはそこです。練習はしていますけど、どれくらいできるのか、実戦でやってみないとわからないので」

ことしはスイッチヒッターとして本格的に取り組んでいくことになる植田選手。子どもの頃にやったことはあるんでしょう?「でも遊びみたいなもんですから」。自分自身で楽しみでもある?「はい!」。即座に元気な声が返ってきました。我々も楽しみです。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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