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中国人が見た東京五輪開会式 入場行進のメロディーに歓喜! でも中国メディアの報道は……

中島恵ジャーナリスト
東京五輪の開会式で入場する中国選手団(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 7月23日、夜8時(日本時間)から、東京オリンピックの開会式が行われた。約半年後の2022年2月に北京で冬季オリンピックが開かれる予定の中国では、どのように受け止められたのだろうか。

 メディアでの報道は多くはないが…

 中国メディアの報道を見てみると、新聞での扱いは、今月中旬から豪雨被害に見舞われている河南省鄭州での救助の様子や、習近平国家主席のチベット自治区視察のニュースなど国内ニュースが多く、東京オリンピックに関する報道は、比較的少なめだった。

 各メディアの報道は、淡々と開会式の様子(パフォーマンス、入場行進、点火までの一連の内容)を時系列で伝えるものが中心だったが、むろん、中国選手団については詳しく報じているものもあった。

 今回、中国からは最多の777人の代表団が参加しているが、とくに活躍が期待される選手の出場日程に関する情報や、中国選手団のユニフォームのデザインなどについての報道だった。

 ゲーム音楽に歓喜の声が続出

 個人が発信するSNSではどうだろうか。

 筆者の知り合いで、中国に住む中国人のSNSを見ると、以前日本に旅行にやってきたり、日本に住んだことのある人は、生中継を見ていて、その様子を興奮ぎみに投稿していたが、日本との関わりが深くない人たちの間では、生中継までじっくり見ている人はあまりいなかったようだ。

 しかし、20~30代の若者が最も歓喜した瞬間があった。入場行進のメロディーが流れてきたときだ。

「わ~、ドラクエのテーマ曲だ! 大賛!(とくに「いいね!」)」

「ここでファイナル・ファンタジーの曲が流れるとは!やっぱり、ここは日本だね!」

 世界的に知られている日本のゲーム音楽のメロディーが流れてきたことに驚き、微博(ウェイボー)や微信(ウィーチャット)のタイムラインに次々と写真や動画を投稿する人が非常に多く、中国での人気の高さがうかがわれた。

 日本でも入場行進のメロディーが流れてきたとたん、「感動した」「鳥肌が立った!」という声がSNS上に大量に投稿され興奮状態だったが、日ごろから日本のゲームに親しんでいる中国の若者も、まったく同様の反応を示した。

 また、「君が代」を歌ったMISIAさんへの「いいね!」も多く、その歌唱力と衣装を賞賛する声も大きかった。

 ユニークなものとしては、聖火ランナーの中に、元プロ野球選手・監督の王貞治さんがいたことに触れている人がいたこと。「王さんの父親の出身地は中国の浙江省だ」と説明し、王さんの現役時代の写真をわざわざ投稿していたことが印象的だった。

写真:ロイター/アフロ

来年は中国で冬季五輪

 日本に住む在日中国人の多くも、中国のSNS、ウィーチャットを利用して、主に中国人の友人に向けて、東京オリンピックの様子を逐一写真に撮り、投稿している人が多かった。

 やはり、日本選手団と中国選手団、パフォーマンスの写真を撮って載せているものが中心だったが、市松模様のオリンピックのエンブレムが夜空にドローンで表現されたときには、「すごい、すばらしい!」「きれい!」「いま、この瞬間、日本にいられてよかった!」などと投稿している人が多かった。

 来年の北京冬季五輪について触れているメディアや個人はまだ少なかったが、中国では残り200日を切った冬季五輪に向けて、すでに着々と準備が進められているといわれている。

 今回の東京五輪は無観客での開会式となったが、中国では、今年7月1日に行われた中国共産党の創立100周年の記念式典の会場で、7万人以上の観客を「マスクなし」で入れており、コロナ禍でも大規模イベントを成功させたという「実績」がある。

「中国政府は、是が非でも観客を入れて、コロナに打ち勝った証として、冬季五輪を成功させたい。そして、それを世界にアピールしたいと思っているだろう」と中国在住の友人はいう。そうしたことからも、中国政府は、今回の東京五輪に注目しているはずだ。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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