尖閣諸島問題に関心が無い人は2割近く、その理由は(2023年公開版)
尖閣諸島問題に関心がある人は7割を超える
内閣府は2023年12月、尖閣諸島に関する世論調査(※)の結果概要を発表した。その公開資料から尖閣諸島への関心度合いなどを確認する。
尖閣諸島は行政的には沖縄県石垣市の一部であり、南西諸島西端に位置する魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖ノ北岩、沖ノ南岩、飛瀬などから成る島々の総称。戦後発効したサンフランシスコ講和条約で国際的に日本領帰属として確定しており、歴史的にも国際法上も疑うことなく、日本固有の領土である。ところが1960年代後半に東シナ海で石油埋蔵の可能性があることが指摘されて「以降」、中国や台湾が領有権を主張し始め、外圧や実力行使を繰り返している。
なお現時点ではすべてが無人島で、久場島(および周辺小島)は私有地、その他は国有地となっている。
その尖閣諸島(問題)について関心があるか否かを聞いたところ、強い関心を持つ人は40.2%、どちらかといえば関心がある人は38.1%となり、合わせて78.3%が関心派との結果が出た。
逆にどちらかといえば関心が無い人は15.1%、強く関心が無い人は4.4%となり、合わせて19.5%が無関心派に属する形となった。
前回の調査結果と比較すると、関心派の大幅な増加、無関心派の減少が確認できる。中国の強硬姿勢は近年さらに強まりを見せており、テレビやラジオなどの電波媒体で伝えられることも多くなったのが一因だろう。
関心派と無関心派、それぞれの心のうちは
関心派・無関心派それぞれにつき、その内容・理由を尋ねた結果が次以降のグラフ。まずは関心派の関心内容だが、「我が国の尖閣諸島に対する領有権の根拠」を挙げる人がもっとも多く、58.5%との結果となった。なお空白部分は該当年でその調査項目が存在しなかったことを意味する(グラフには直近調査年の結果のみ数字を表記しているため、数字がない項目は直近年で項目そのものが無いことになる)。
次いで「周辺の資源」「歴史的経緯」「政府や自治体の対応や取り組み」「中国・台湾の主張」「日中関係に与える影響」が続く。見方を変えれば今件問題に関して広報・啓蒙・公知を行う場合、これらの要件に重点を置いて情報を提供すれば、多くの「知りたい」「確認したい」との需要に応えることができることになる。
また「他の人の意見や考え」「研究成果・論文」への回答値が低いのにも注目したい。この結果からは他の個人やグループなどの主張や意見に興味は無く、関連問題における事実、実情を知りたい、興味があるといった関心派の認識が透けて見える。
一方、無関心派が関心を示さない理由として挙げたのは「尖閣諸島に関して知る機会や考える機会が無かった」で、56.8%。次いで「自分の生活にあまり影響が無い」が43.8%と続いている。
トップの「尖閣諸島に関して知る機会や考える機会が無かった」は、関係機関やメディアによる啓蒙・情報公開が不足している実情を意味している。見方を変えれば、知る・考える機会が存分にあれば、この項目の回答者は尖閣諸島に対する関心を持つようになる可能性がある。
次いで「自分の生活にあまり影響が無い」だが、国レベルでの事象である尖閣諸島に関する事案だが(日本国としては「尖閣諸島に関する領有権の問題」そのものがそもそも論として存在しないという見解であることに注意)、一人一人の立ち位置から見れば、直接生活には関係の無い範ちゅうの話と受け止められるのも無理はない。
ただしこれは周辺海域の施政権にもかかわる問題となり、対応次第では同諸島以外の問題にも連鎖反応が生じるリスクも大いにある(東シナ海ガス田問題が好例)。要は「尖閣諸島だけの問題で、自分の日常生活には影響が無い」と回答者が考えているに過ぎない、見方を変えれば回答者の認識・情報が不足していることになる。この点ではトップの回答「尖閣諸島に関して知る機会や考える機会が無かった」も近いものとなる。
第3位以降の「紛争や武力衝突など負のイメージを連想する」「内容が難しい」は、個々の心境・性質によるところもあり、仕方の無いものとの判断もできる。しかしトップや第2位の理由は、多分に啓蒙・情報公知不足によるところが大きい。
これらの動きもあわせ、今調査の調査要目にある「(調査目的として)尖閣諸島に関する国民の意識を調査し、今後の施策の参考とする」を誠実に、そして確実に実行することを期待したい。
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※尖閣諸島に関する世論調査
2023年9月7日から10月15日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人3000人に対し、調査員による個別面接聴取方式によって行われたもので、有効回答数は1649人。2014年までの調査では20歳以上を対象としていたのに対し、2017年からは18歳以上を対象としているため、2014年分までと2017年分以降との間に厳密な連続性は無いことに注意が必要。また2019年調査までは個別面接聴取法を用いていたが、2023年以降は郵送法で実施しているため、2019年までと2023年以降との間に厳密な連続性は無い。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。