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【現地レポート】人がいなくなった中部国際空港(セントレア)。新型コロナウイルス影響でレストランも閑散

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
欠航便の影響で使われないチェックインカウンターが目立った(2月12日、筆者撮影)

 新型コロナウイルスの影響で各航空会社では中国便を相次いで運休している。訪日外国人(インバウンド)の中でも全体で約3割弱を占めるのが中国人であるが、羽田空港・成田空港以上に、関西空港や中部空港(以下セントレア)など中国路線が多い空港における影響が大きくなっている。

関空は約8割、セントレアは約6割の中国便が運休

 2月17日に関西空港を運営する関西エアポートは、2月17日~23日の1週間で当初は週612便を運航する計画であったが、そのうち492便が欠航することになったと発表した。約8割の便が欠航することになった。また、香港・マカオ・台湾への便においても当初予定では週262便が運航予定だったが約23%の60便が欠航となる。

 セントレアにおいても、中部国際空港会社が2月13日に発表したデータによると、1月時点では週211便の中国便が130便減り、2月中旬時点で81便のみの運航となる。約6割の便が減った計算となる。香港便も1月時点の週38便から14便減って24便(台北経由便を含む)となっている。1月時点の中国本土・香港便の合計は249便で、セントレアの国際線全体の旅客便が週482便ということで、半数強の便が香港を含む中国便となっているのが現状だ。今後、更なる欠航も想定されることはもちろん、運航している便の搭乗率も低迷しており、中国路線の影響が直撃している。

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閑散としている中部国際空港(2月12日、筆者撮影)
閑散としている中部国際空港(2月12日、筆者撮影)

セントレアを取材。カウンターも閑散状態

 筆者は2月12日(水)にセントレアを取材した。朝9時前に到着したが、国際線のチェックインカウンターが閑散している姿に驚かされた。いつもは中国の航空会社のチェックインカウンター前には長い行列ができており、搭乗手続きに長い時間を要していたが、取材した日は既に中国便の多くが欠航となっており、中国の航空会社のチェックインカウンターには人がいない閑散な状態になっていた。台風などの災害時以外で空港が閉鎖となっている状況以外でこれだけ人が少ないのは見たことがないくらいの人の少なさであった。

欠航便が相次いでおり、チェックインカウンターも一部使われていなかった(2月12日、筆者撮影)
欠航便が相次いでおり、チェックインカウンターも一部使われていなかった(2月12日、筆者撮影)
欠航を案内する中国の航空会社(2月12日、筆者撮影)
欠航を案内する中国の航空会社(2月12日、筆者撮影)

人気名古屋グルメのお店も待ち時間なし

 それ以上に驚かされたのが空港ターミナル内のレストランだ。筆者は午前中の取材が終わった後、昼食を食べる為に3階のレストランへ向かった。正午過ぎのいつもは一番混雑している時間に、時々訪れる名古屋名物の味噌カツが食べられる人気店「矢場とん」へ行ってみると、待ち時間なしどころか半分以上の席が空いている状況だった。筆者自身も年に数回は訪れているが、こんなに空いているのは初めてだった。お店の人と雑談していたなかでも、中国便の減便がお客様の数に大きく響いていることは明確だった。

人気名古屋グルメ「矢場とん」も行列なしですぐに入れた(2月12日正午過ぎ、筆者撮影)
人気名古屋グルメ「矢場とん」も行列なしですぐに入れた(2月12日正午過ぎ、筆者撮影)
人気の味噌カツが空港で食べられると国内外の空港利用者から人気(2月12日、筆者撮影)
人気の味噌カツが空港で食べられると国内外の空港利用者から人気(2月12日、筆者撮影)

 またセントレア周辺にはホテルも多くあり、普段は中国人観光客で満室の状況が続いていたが、今は空室が多い状況になっているなど、中国人観光客が日本に来ない影響が直撃している。セントレア周辺のホテルは飛行機に乗る人だけでなく、東京から大阪へ向かう途中に大型バスで立ち寄る団体旅行客の利用も多い状況になっている。

 取材が終わり、名古屋駅まで名鉄特急「ミュースカイ」に乗車したが、最近では発車直前は満席で座席指定券が購入できないこともあったが、この日の車内は空席が多くあるなど、1日中、インバウンドの減少を感じることになった。

2018年度は開港初年度超え、過去最高の利用者数に

 セントレアは愛知万博が開催された2005年に開港し、昨日(2月17日)開港15周年を迎えた。開港初年度(2005年度)には1235万人の利用者を記録したが、2008年のリーマンショック、2009年の日本航空経営破綻などの影響もあり、一時は年間900万人(2011年度は889万人)を下回る状況となったが、インバウンド増加に加えて、航空路線の積極的な誘致やLCC(格安航空会社)の新規乗り入れが相次ぎ、2018年度には1253万人と初めて初年度を上回る利用者数を記録した。

飛行機に乗らなくても楽しめる空港

 また2018年10月には、ボーイング787初号機を建物の中で展示している新感覚飛行機テーマパーク「FLIGHT OF DREAMS」がオープンし、「FLIGHT OF DREAMS」に隣接するエリアにはLCC専用の第2ターミナルを2019年9月にオープンさせた。「FLIGHT OF DREAMS」はシアトルの街並みをイメージしており、飛行機を見ながら食事ができるほか、フライトシミュレーターやプロジェクションマッピングなども楽しめるなど、名古屋の新しい観光スポットにもなった。

2018年9月にオープンした新感覚飛行機テーマパーク「FLIGHT OF DREAMS」(2019年9月、筆者撮影)
2018年9月にオープンした新感覚飛行機テーマパーク「FLIGHT OF DREAMS」(2019年9月、筆者撮影)
中部国際空港のLCC専用の第2ターミナル(2019年9月、筆者撮影)
中部国際空港のLCC専用の第2ターミナル(2019年9月、筆者撮影)

 それらの効果もあり、2019年度は上期(4月~9月)時点で2018年度の同時期に比べて約1割増の698万人を記録するなど、順調に推移していたなかでの新型コロナウイルスの発生となった。

 しばらくは、閑古鳥の状況が続くことになるが、このような状態であるからこそ、飛行機に乗らなくても楽しめるセントレアのターミナル施設のレストランや展望デッキ、また「FLIGHT OF DREAMS」に遊びにいくなど、レジャースポットとしてのセントレアへ休日に出かけてみるのもいいだろう。 

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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