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新型トヨタ86とスバルBRZの、意外な共通点。

河口まなぶ自動車ジャーナリスト

トヨタとスバルが共同開発したFRスポーツカーである、86とBRZが5日、同車史上で最大のマイナーチェンジを果たした。

トヨタとスバルの協業による、自動車史上に類を見ない共同開発のスポーツカーの誕生は、2012年に大きな話題を呼んだ。2台はバッチが違うだけでなく、その乗り味走り味にもトヨタ流、スバル流の違いがあった。

端的にいえばトヨタ流はFRスポーツカーらしく、ドリフト自在のアグレッシブなハンドリングに。スバル流はFRスポーツカーながら、安定性を重視したハンドリングとされていた。

あれから4年が経った今日、それまでに毎年の細かな改良を経て、86とBRZの乗り味走り味は、その方向性が近づいてきたのが興味深いところだ。

ビッグマイナーチェンジを果たした2台は、ともに乗り心地を向上させると同時に、ハンドルを回した時のフィーリングの質を向上させることに注力した。

世界の優れたスポーツカーはみな一様にハンドルを回す時のフィーリングが優れており、走りを手で感じるこの部分のフィーリングは、そのクルマの走りの良し悪しを物語る。

そうした部分に徹底的にこだわったことで、2台はともにハンドルを回した時に滑らかで上質な感覚を届けるようになった。

そこで面白いのが、2台の違いだ。実は登場当初は乗り味走り味がハッキリと違っていたわけだが、今回のビッグマイナーチェンジではサスペンション系のパーツは全く同じであり、違いはサスペンションを構成するダンパーというパーツのセッティングと、電動パワーステアリングの制御のみだという。

この2点に関しては、トヨタとスバルがそれぞれ独自にチューニングを施しているわけだが、結果的に同じ方向性を示すものとなったのだ。

86は以前よりも落ち着きを感じさせる乗り味としてBRZに近づいた上で、ハンドルを回す時のしっとりした感覚に注力した。

BRZはもともとの落ち着きを維持しながらさらに乗り心地を向上させ、ハンドルを回す時のスムーズな感覚に注力した。

トヨタもスバルも、これまでの4年で培ったノウハウをそれぞれに投入して乗り味走り味を作り上げたわけで、そこには根本的な思想と哲学の違いが織り込まれている。しかしながら、そうした思想と哲学に基づくアプローチこそ違えど、FRスポーツカーとして目指した場所が近いというのは面白い。

そしてそこには、両社で商品の乗り味走り味を決める担当者が、世界のトレンドを細かくウォッチした上で、世界のライバルに引けを取らない乗り味走り味を作り込んだ背景がある。

ビッグマイナーチェンジを果たし、注目されているトヨタ86とスバルBRZの間には、実はそんなトピックがあったりもするのだ。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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