ついに10億人突破したFacebookのメッセンジャー、その課題と可能性
米フェイスブックは7月20日に、同社のメッセージングアプリ「Messenger(メッセンジャー)」の利用者数が10億人を超えたと発表した。
公開から5年で10億人の大台に
これは「月間アクティブユーザー数(MAU)」と呼ばれる、1カ月に1度以上サービスを利用した人の数。このメッセンジャーは当初、フェイスブックアプリ本体の1つの機能として提供されていたが、同社は2011年8月にこれを切り離し、単体アプリとして公開した。
米テッククランチによると、メッセンジャーの利用者数(MAU)は2014年4月時点で2億人だったが、同年11月には5億人に到達。そして今年1月には8億人、4月には9億人と推移し、メッセンジャーは公開からほぼ5年で10億人の大台を突破した。
一方でフェイスブック傘下の写真共有サービス「Instagram(インスタグラム)」の今年4月時点の利用者数(MAU)は4億人。
また同じく同社傘下の写真メッセージングアプリ「WhatsApp(ワッツアップ)」の利用者数(MAU)は10億人だが、こちらは10億人に到達するのに7年かかっている(米ベンチャービートの記事)。
フェイスブックによると、同社のメッセンジャーは利用者数以外にも様々な記録を達成している。例えばこのアプリは通話機能を備えているが、こうしたインターネットを介すVoice over IP(VoIP)と呼ばれる通話のうち、メッセンジャーが占める割合は10%になるという。
このほか、企業と一般の利用者がやりとりしている1カ月当たりのメッセージ数は10億。メッセンジャーでは1カ月当たり170億枚の写真が送信され、1日当たり2200万のGIF動画が送信されていると、同社は説明している。
注目される「チャットボット」
しかしメッセンジャーの利用者数が10億人を超えた今、フェイスブックは新たな問題に直面していると米コンピューターワールドの記事は指摘している。
それは収益化(マネタイズ)の問題だ。フェイスブックはかねてメッセンジャーの利用者数が10億人を達成した際には、収益化の方法について検討する必要があると述べていた。
しかし一般的にメッセージングサービスは、ソーシャルメディアのように広告を表示することが難しい。画面の中に広告を表示すると、利用者の会話が邪魔されるからだ。
そこで今、注目されているのが、利用者の質問などに自動で応答する「チャットボット」という技術だとコンピューターワールドは指摘している。
これは米アップルの「Siri」のような音声アシスタントサービスに似ているが、異なるのは、この技術を導入する企業がそれぞれに自社向けの自動会話システムを構築できる点だ。
実はフェイスブックは今年4月にメッセンジャーアプリ向けのチャットボット技術を発表した。これを使うと例えば、企業はメッセンジャーを介して、注文の受付や商品発送の通知などの顧客対応を自動で行えるようになる。
さらに企業は、メッセージ画面に画像を表示したり、「購入」ボタンを追加したりすることもできる。また自然言語処理を行うフェイスブックのボットエンジン「Wit.ai」も利用可能だ。
将来は電子商取引のプラットフォームに?
フェイスブックはこの仕組みにより、近い将来、企業と商品販売の売り上げを分配したりすることができる可能性があると、前述のコンピューターワールドの記事は伝えている。
昨今の若者は電子メールなどは使わず、日常、中心的にメッセージングアプリを使っていると言われている。こうした傾向が今後さらに進めば、将来はチャットボットを備えたメッセージングサービスが電子商取引のプラットフォームになるのかもしれない。
なおフェイスブックによると、企業などがすでに立ち上げたメッセンジャー用チャットボットの数は1万8000に上る。またすでに2万3000人以上の開発者が前述のボットエンジン「Wit.ai」を利用しているという。
(JBpress:2016年7月22日号に掲載/原題「フェイスブックのメッセージアプリ、利用者10億人 今後の課題はマネタイズ、チャットボット技術に活路」)