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朝から名古屋めし! ホテルの朝食サブスクリクションはどれだけおトク?

大竹敏之名古屋ネタライター
味噌カツ、ひつまぶし、きしめん、あんかけスパ、小倉トーストと朝から名古屋めし三昧

30日間・1万2000円で平日は何度でも利用OK

名古屋のホテルで、9月から朝食サブスクリプションのプランが始まりました。ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋(中区・金山)の「【平日限定】BREAKFAST CLUB~朝食サブスクリプション」です。

通常料金3500円の朝食ブッフェを30日間1万2000円で、平日限定で何度でも利用可。同伴者も1名半額(1750円)で利用できます。販売期間は9月1日~11月30日の3カ月となっています。

朝食サブスクは東京ドームホテルやリーガロイヤルホテル京都でも導入され、ホテルシーンにおいてトレンド化しつつあります。導入の理由を担当者はこう語ります。

「コロナ禍が続く中、夕食よりも朝食にフォーカスしました。宿泊客はもちろん、地元の皆様にもホテルを利用するきっかけにしてもらいたいと考え企画しました」と同ホテル副支配人の大石孝司さん。

10年以上前からブッフェメニューの名古屋めしを強化

「名物 名古屋めし」と大きなポップを配し1コーナーに集約。日替わりで毎日5種類ほどの名古屋めしが用意される。食べ方や調理法の解説もあって興味が深まる
「名物 名古屋めし」と大きなポップを配し1コーナーに集約。日替わりで毎日5種類ほどの名古屋めしが用意される。食べ方や調理法の解説もあって興味が深まる

ブッフェメニューの特徴は何といっても“名古屋めし”の充実です。

「ひつまぶし、味噌カツ、手羽先、あんかけスパゲッティ、きしめん、小倉トーストなど、日替わりで毎日5種類ほどを用意しています。当ホテルのブッフェでは10年以上前から名古屋めしを取り入れていて、5~6年前からは主要なメニューはほぼ網羅しています」と大石さん。

ご当地グルメが充実したラインナップは、これまでも県外の宿泊客から好評を博してきました。「名古屋めしは種類がたくさんあるので、あれもこれも食べたいと思っていても滞在中になかなか食べ切れない。そんな時、ここで一度にいろいろ食べられるので、皆様喜んでくださいます」(大石さん)

一番人気はひつまぶし。わさび、ねぎの薬味を入れ、さらにだしを注いでお茶漬けにも。普段はめったに食べられないから、と地元の人にも好評
一番人気はひつまぶし。わさび、ねぎの薬味を入れ、さらにだしを注いでお茶漬けにも。普段はめったに食べられないから、と地元の人にも好評

毎日利用すれば1食あたり600円! ホテル側には意外な狙いも

一方、リピート利用を前提とするサブスクは、地元客がメインターゲットとなります。名古屋の朝食というと真っ先に思い浮かぶのが喫茶店のモーニングサービス。400円前後のコーヒー代だけでトーストやゆで玉子などが無料でつくのが当たり前、そんなサービスに慣れ親しんでいる名古屋人にとって、ホテルのサブスクはどれくらいおトクに感じられるものでしょうか?

「プランは1万2000円で、利用期間は30日間の平日限定。販売期間の9、10、11月はいずれも土日祝日を除くと20日となります。その間毎日ご利用すれば一回あたり600円になります」(大石さん)。

何と! 喫茶店のモーニングとさほど変わらない価格でホテルの朝食を食べられるというわけです。自宅や勤務先がホテルに近ければ、そんな利用法も物理的に可能。もちろんそれは極端なケースとしても、通常料金は3500円なので3回利用すれば元は取れる計算です。

「皆様が毎日ご利用されたら赤字になってしまいますが(苦笑)、朝食サブスクリプションには、SDGsの観点からフードロス削減の取り組みという面もあります。当面は11月までの3カ月間販売のプランですが、採算性とフードロスの両面から精査して、今後の継続についても検討していきたいと思っています」と大石さん。

もちろん名古屋めしだけでなく、シェフが目の前で調理するオムレツをはじめ、和洋の料理、パン、デザート、ドリンクなどバラエティに富んだラインナップが用意される
もちろん名古屋めしだけでなく、シェフが目の前で調理するオムレツをはじめ、和洋の料理、パン、デザート、ドリンクなどバラエティに富んだラインナップが用意される

予想をはるかに上回る反響。毎日通うヘビーユーザーも

この朝食サブスク、発売後の反響は予想以上とのこと。

100件ほどのご利用を見込んで始めたのですが、現在(9月10日)までに170件以上のお問合せをいただいています。地域に住むご年配の方からビジネスマン、ご夫婦や大学生からのご予約も。想像していた以上に幅広い層のお客様にご活用いただいています」(大石さん)

利用者の声を拾ってみても評判は上々です。

「出勤前に毎日利用しています。それまではコンビニで済ますか食事を抜くかだったのですが、毎日豪華な朝食が食べられるのはありがたい。しっかり食べて、朝昼兼用にしています」(40代男性)

「今日で4回目。出勤前に立ち寄っています。フルーツがたくさん摂れるし、名古屋めしでは普段はめったに食べられないひつまぶしがあるのもうれしい。もともとホテルが好きなので、朝の時間を優雅に過ごせるのがいいですね」(30代女性)

会場はホテル2階のカジュアルダイニング「ガーデンコート」。利用時間は平日朝7~10時(最終入場9時半)
会場はホテル2階のカジュアルダイニング「ガーデンコート」。利用時間は平日朝7~10時(最終入場9時半)

“おトクさ”以上に“プチぜい沢”を求める朝食ニーズに訴求

喫茶店のモーニング需要が高いとおり、名古屋の消費者は朝食に対する関心が高いといえます。おトクさばかりが注目されがちなモーニングですが、毎朝のように400円前後の外食費を使うのは、いわば日常のプチぜい沢。名古屋のモーニングユーザーは、おトクさ以上に朝のゆったりしたひとときを大切にしているのです。

ホテルの朝食サブスクは、1万2000円という価格だけ見ると一見高額に感じるかもしれません。しかし、飛び抜けてゴージャスなものというより、喫茶店のモーニングの延長線上にあるワンランク上のプチぜい沢と考えれば、名古屋の人にとっては現実的な選択肢のひとつになり得るのではないでしょうか。

金山は名古屋の副都心で都心部にも郊外にもアクセスしやすい。駅はJR在来線、名鉄、地下鉄が乗り入れる総合駅で、ガーデンコートの窓際席からはJRと名鉄が交差する様子が見られ、鉄道ファン垂涎の特等席
金山は名古屋の副都心で都心部にも郊外にもアクセスしやすい。駅はJR在来線、名鉄、地下鉄が乗り入れる総合駅で、ガーデンコートの窓際席からはJRと名鉄が交差する様子が見られ、鉄道ファン垂涎の特等席

アクセスのよい同ホテルは旅行者にとっても利用しやすく、かつ朝食ブッフェはご当地グルメも気軽に楽しめて旅気分を高めてくれます。名古屋に何度か足を運ぶ予定があるのなら、朝食サブスクは、朝から活力をチャージできる魅力的なプランになりそうです。

名古屋の人にとっては朝食をより充実させる選択肢のひとつに。旅行者にとっては名古屋めしを気軽に幅広く味わえる機会に。ホテルの朝食サブスクが、名古屋の朝の満足度をいっそう高めてくれることを期待しましょう。

ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋は、金山総合駅南口の金山南ビル内。高さ130m超の超高層ビルで、高層階にあるホテル客室やレストランからの眺望も見事
ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋は、金山総合駅南口の金山南ビル内。高さ130m超の超高層ビルで、高層階にあるホテル客室やレストランからの眺望も見事

(写真撮影/すべて筆者)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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