Yahoo!ニュース

名古屋のソウルフード「スガキヤ」の新業態。狙いは意外な弱点の克服!

大竹敏之名古屋ネタライター
スーちゃんハウスのメニューの数々。ラーメン430円など

ワンコインでおつりが来るリーズナブルさが魅力

名古屋のソウルフード、スガキヤのラーメン。70年以上の歴史を誇り、愛知県を中心におよそ280店舗を展開。1杯430円のリーズナブルさと、ショッピングモールのフードコート主体の店舗展開で、庶民の味として親しまれ続けています。

そのスガキヤが新しいタイプの店舗「スーちゃんハウス」を12月12日にオープン。ラーメンがメインの従来の「スガキヤ」にスイーツなどのオリジナルメニューをプラスし、さらにたこ焼き店「たこ寿」を併設する複合業態です。

「スーちゃんハウス 星が丘テックランド店」(名古屋市千種区)は、地下鉄星が丘駅下車すぐ。
「スーちゃんハウス 星が丘テックランド店」(名古屋市千種区)は、地下鉄星が丘駅下車すぐ。

強化する客層は意外にも・・・

この新業態の狙いは、意外なウイークポイントの克服でした。

10~20代の若年層のお客様にもっとご利用いただきたいと考えました」と広報担当者。

ここでスガキヤに慣れ親しんだ地元の人ほど「おや?」と思うはず。スガキヤはショッピングモールでの買い物のついでに二世代三世代で利用するファミリー客も多く、またソフトクリームも定番で人気のため学生のファーストフード的需要も高いというパブリックイメージが浸透しているのです。

ところが、そんな長く定着していたイメージは、いつの間にか実態と距離が開いてしまっていたのだといいます。

「お客様の利用動向などをあらためて調査したところ、私たちが思っていたよりも年齢層がかなり高いことが分かったのです

ピンクをキーカラーとしたかわいらしい雰囲気の店内
ピンクをキーカラーとしたかわいらしい雰囲気の店内

スガキヤは、ある地元テレビ局の調査で、愛知県民のおよそ9割が「行ったことがある」と回答したほど、地元で広く浸透しています。ところが、行ったことがある人もある年代になるといったん離れてしまっていることが、同社の調査から判明したのです。

“映え”と“変わらぬ“リーズナブルさ”を重視

「お父さんお母さんと一緒に来ていたお子様が、高校生、大学生になると自分で外食するようになり、お店の選択肢が広がります。そこでスガキヤを選んでくださる確率が相対的に下がってしまうのです」

このスガキヤからいったん離れてしまった若い世代を再びふり向かせる。そのための新店舗開発で重視したのは“映え”と“変わらぬリーズナブルさ”でした。

“映え”の主役は長年愛されているマスコットキャラクターのスーちゃんです。店名の通りスーちゃんの家がコンセプトになっていて、店舗の壁などあちこちにキュートなそのイラストが描かれ、テーブルはトレードマークの三つ編みがモチーフ。ぬいぐるみもソファの各所に座っています。スーちゃんシェークのカップにも顔が描かれ、各種トッピングもカラフル。一部の店舗でしか取り扱いのないスーちゃんグッズもフルラインナップで取りそろえています。写真を撮ってSNSに投稿したくなるデザインやメニューが目白押しなのです。

手前から、スーちゃん憧れのプレミアムソフトクリーム490円(アプリクーポン利用で390円)、スーちゃんシェーク390円、まるごと生ポテト390円
手前から、スーちゃん憧れのプレミアムソフトクリーム490円(アプリクーポン利用で390円)、スーちゃんシェーク390円、まるごと生ポテト390円

キュートなスーちゃんグッズの数々。およそ10種あり、フルラインナップを取りそろえるのは数店舗しかない
キュートなスーちゃんグッズの数々。およそ10種あり、フルラインナップを取りそろえるのは数店舗しかない

ラーメン、たこ焼きといった食事メニューに加えてカフェメニューを強化しているため、客単価のアップも狙っているのかと思いきや、決してそうではないといいます。

2024年3月に1号店をオープンしたたこ焼き店「たこ寿」を併設
2024年3月に1号店をオープンしたたこ焼き店「たこ寿」を併設

「近くに高校や大学がたくさんあり、学生さんたちにも多くご利用いただきたいと思っています。スガキヤのラーメンはもちろんですが、たこ焼き、ポテト、シェークなどお食事だけでなくカフェ利用もできるようなメニューも取りそろえているため、より様々なシーンでご利用いただければと考えています」

まるごと生ポテトは5種類のディップソースを用意。1種は無料で、追加は1個40円
まるごと生ポテトは5種類のディップソースを用意。1種は無料で、追加は1個40円

スガキヤは近年、SNSの活用にも積極的。公式アカウントはXが2021年3月から、スーちゃんのアカウントはインスタが2021年3月、Xが2024年9月に開設し、新しいメニューや店舗、キャンペーンなどの情報を発信しています。

メニュー、店づくり、発信と令和にマッチした進化を遂げているスガキヤ。老舗のリブライディングの成功事例となるか、名古屋や飲食店の枠にとどまらず要注目です。

※写真撮影/すべて筆者

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

大竹敏之の最近の記事