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男子7人制日本代表・岩渕健輔ヘッドコーチ、協会専務理事待望論へ返答。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
選手を讃える談話が続いた(著者撮影)。

 日本ラグビー協会で今年6月以降の専務理事就任が取り沙汰されている岩渕健輔氏が6月4日、関東近郊で取材に応じた。

 5月25日から今月2日までは男子7人制日本代表ヘッドコーチとして、世界サーキットであるセブンズワールドシリーズのロンドン大会、パリ大会に参戦。同シリーズへ常時参戦できるコアチームから降格したとあって、「申し訳ない」と繰り返していた。同職では、2020年のオリンピック東京大会でのメダル獲得が期待される。

 イングランドのケンブリッジ大学に留学経験のある岩渕氏は、2015年までの4年間、男子15人制日本代表のゼネラルマネージャーとしてワールドカップイングランド大会での歴史的3勝に向け尽力した。

 男子7人制日本代表の指揮官には昨年6月に就任しており、他には日本ラグビー協会理事、男女の7人制ラグビー日本代表の総監督も兼務する。今年は若返りを図る日本協会で新専務理事に白羽の矢が立っているとされ、その報せは本人の渡欧中に広く伝えられた。

 以下、共同取材時の会見中の一問一答の一部(編集箇所あり))

――ワールドシリーズ終盤戦の感想は。

「感想は申し訳ない、です。自分がヘッドコーチになって1年になりますが、今回は残留が最低条件だったと思います。

 就任時、他国と比べてスタッツ、能力を分析したらどの項目を取っても最下位でした。そのなかでコアチームに残留するには、とにかく(各大会の)最終ラウンドまでもつれ込ませるしかなかった。最後の最後まで走れる、ギリギリまで我慢できるようなチームを作らなくてはいけないからと、選手はずっとハードな練習をしてきてくれて、パリ大会もその頑張りで最後までもつれ込ませてくれました。

 そんななか、大一番が何回かありました。ロンドン大会のウェールズ代表戦(2日目チャレンジトロフィーの初戦、0-17)、パリ大会のスコットランド代表戦(1日目のプールマッチの最終戦、21-22)、イングランド代表戦(2日目チャレンジトロフィーの初戦、7-52)…。ここで勝てなかったのは選手云々ではなく、僕のヘッドコーチとしての力の問題が大きかったと思います。

 ミスが出た、ボールキープ力やタックルが云々というラグビーのフィールドのなかの問題も色々とあるのですが、それとは別に私自身のチーム作りの問題(がある)。メンバーリングは比較的同じようにやっていけたので、そこについてはストレスは感じていません。

 ひとつ、あるとすれば、日本国籍が取れているにもかかわらずなかなか(自軍の試合に)出られない(海外出身の)選手がいたことです。選手やチームに問題があったのではなく、日本ラグビー協会とワールドラグビーとの間のこと(交渉結果)で、何大会か遅れてしまったり、最後まで出られなかったりする選手がいた。ここは7、15人制を問わず、全体的な戦略(の立案)が大事になります。グラウンド上の責任は私の負うところが大きいですが、それ以外のところでもしっかりしていかなければいけないと思います。

 正直なところ、1年前に私が現場にコミットすることになって、その(海外出身者が滞りなく代表資格を取れる)体制をうまく作れなかったのは、改善すべき点だと思います」

――ワールドシリーズのコアチームから外された。

「(オリンピックに向けて)ワールドシリーズ残留後の強化計画と、そうでなくなった時の強化計画をすでに作っています。現場としては強化計画を立てていますし、長いスパンで考えていたこともあります。

 ただ、今回のワールドシリーズが終わった段階で一区切りついたので、まず協会にレビューを上げ、今後どうするかについて協会と話をすることになります。私自身のヘッドコーチとしての能力を協会がどう見るか。(今後は)それを受けてからになると思います」

――男女7人制日本代表の総監督として。

「オリンピックの前年に男女ともコアチームにいないことは、強化としてはいいことではありません。ただ一方で――無理に前向きに考える必要はないのですが――前回のリオデジャネイロ大会前に女子はワールドシリーズに出て、ボロボロになって戦えなくなったことがありました。その時の男子はワールドシリーズを10大会回らなかったことで、逆にいい強化ができた(本番では4位入賞)。もちろん、前向きではないのですが、前向きに捉えてやっていくしかない」

――岩渕さんは今後、チームにどう関わるか。

「オリンピックで勝負したいと思ってこの仕事を受けたので、もう1回続けさせてもらえるならやりたいです。その辺を含め、強化委員長を含め協会のレビューを受けたいと思います」

――現在、6月以降に専務理事となる見込みと報じられています。そうなった場合、現場との兼ね合いはどうしたいか。

「どうしたいというよりは、私自身、現場にコミットして、ようやく少しずつチームになってきたところで。もちろん結果については申し訳ないし、責任を感じるし、不甲斐ないと思っていますが、一方で、ロンドンでイングランド代表に勝ったり、フランスでフランス代表に勝ったりと、前向きな部分も出てきています。自分としてはいまの職をやるということで、やらせてもらっています。自分はずっとチームと一緒にいたので、いま報道されていることについては考えてもいませんでしたし、そこについてはもう1回、協会のなかでどんな話があるのか…だと、思っています」

――次期会長候補と見られる森重隆現副会長は6月1日、都内で「さっき岩渕に電話をしたが出ない」と話しておられました。

「非通知で、どなたからかかってきたかがわからなかったです。報道もなされていましたが、自分としては、(現場に)集中したかった」

――国際戦略で能力を発揮して欲しい、と言われています。

「そう言っていただけるのはありがたいですが、まずは選手ときょう1日合宿をして、皆ともう1度話をして、次の準備をしなきゃいけない。選手たちは恥ずかしいパフォーマンスをしたわけではないと僕自身は思っています。『とにかく次を向いて、6月からガンガン行くよ!』と皆にも言いましたので。今後は2~3週間休んで、次の活動(合宿)に入る予定でいます」

 遡って3月22日、日本のサンウルブズが2016年参戦の国際リーグ・スーパーラグビーからの2020年限りでの除外が発表された。岩渕が実現に尽力してきたスーパーラグビー参戦への扉が閉ざされたのを受け、日本ラグビー界のガバナンスへの批判が噴出した。

 そんななか、かねてよりサンウルブズに嫌悪感を示していたとされる森喜朗・元名誉会長が、ワールドカップ日本大会(今年9月開幕)へ向けた盛り上がりの欠如を踏まえ現執行部を叱責。6月の理事会改選における執行部の若返りが急務とされている。岩渕の専務理事就任待望論は、その延長線上で本格化していた。

 渦中の本人は、あくまでオリンピック東京大会へ視線を向ける。専務理事との兼務の可能性については、「それもこれから…」と明言を避けている。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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