フェイスブックやツイッターが中国本土で解禁か、経済振興策「自由貿易区」で規制緩和、香港紙が報じる
香港の英字紙、サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、まもなく中国本土の一部の地域で米フェイスブックなどの外国企業のネットサービスが解禁になる見通しだ。
同紙は中国政府筋の話として、上海市に設置される予定の「自由貿易試験区」で、フェイスブック、ツイッターといったソーシャルメディアや、米ニューヨーク・タイムズの電子版へのアクセスが可能になると伝えている。
鉄壁の「万里のファイアウォール」に例外
自由貿易区では経済振興策の一環として、人民元の自由交換や金利の自由化、外国直接投資規制や課税規制の改革などを行い、国内外の企業を誘致する。
上海市では8月に国の認可が下りており、まもなく浦東新区内に設立される予定という。
この自由貿易区の面積は約28平方キロメートル。当初の計画が成功すれば、数年後には対象を浦東全域に広げ、区域面積は約1210平方キロメートルになる。
中国本土では2009年からフェイスブックとツイッターへのアクセスが禁止されている。また温家宝前首相一族の不正蓄財疑惑を昨年報道したニューヨーク・タイムズも最近になって電子版へのアクセスが禁止された。特別行政区の香港を経由して中国本土向けサービスを行っているグーグルについても、検索サービスと電子メールサービスが時折利用できなくなるという。
中国政府は、外国企業によるネットサービスが中東で起きたような大規模な政治運動につながることを恐れ、「ゴールデンシールド」と名付けたプロジェクト(いわゆる万里のファイアウォール)でインターネットのアクセス制限を行っている。
サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、こうした中国の言論統制を撤廃させようと、海外のネット企業が当局に働きかけている。例えば、今年の9月にフェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)が自身の著書の出版イベントのために北京を訪れたが、この時同氏は、国務院(内閣)新聞弁公室のトップである蔡名照主任と会談している。
新聞弁公室のウェブサイトでは、この時の写真を掲載しているのだが、そこにはサンドバーグ氏と蔡氏の2人がフェイスブックのプラットフォームや、中国企業の海外展開、協力関係について話したなどと記されている。
具体的な内容は説明されていないが、おそらくこの時両氏は、同国本土におけるフェイスブック解禁に向けた何らかの話をしたと見られている。
小さな一歩だが、将来の可能性は大
なお匿名の中国政府筋はサウスチャイナ・モーニング・ポストに対し、「外国企業誘致のためには、外国人が快適に生活し、仕事ができるように本国と同じ環境を用意する必要がある」と述べたという。
またこの人物は「もしフェイスブックを利用できず、ニューヨーク・タイムズも読めないのであれば、自由貿易区とほかの地域との違いが分からず、何が特別なのかと疑問視されてしまう」とも述べている。
もしこのニュースの通り、中国本土へのサービス提供が可能になれば、フェイスブックやツイッターの利用者数は大きく増えることになる。サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、天津市や広東省の都市もすでに自由貿易区を設置する案を国に提出しているという。今後、政府の経済振興策が拡大すれば、自由貿易区も増えていくと見られている。
フェイスブックの現在の利用者数は11億5000万人だが、その伸び率は鈍化している。一方、中国のインターネット利用者数は5億6000万人。また同国スマートフォン市場の規模は、昨年米国を抜いて世界最大となった。自由貿易区は当面試験段階にあるため、フェイスブックにとってはまだ小さな一歩にすぎない。しかしこれが成功すれば、将来の可能性はとてつもなく大きいと言われている。
(JBpress:2013年9月26日号に掲載)