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米政府閉鎖で「タダ働き」の気象局員 どんな支障が起きているのか

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
無給で雪かきをする国立公園局の職員 (14日ワシントンDC リンカーン記念堂前)(写真:ロイター/アフロ)

国立公園はゴミであふれ、美術館は閉鎖が続く――。史上最長の3週間以上にわたって一部の政府機関が閉鎖されているアメリカでは、連邦職員の給料が支払われないために、こうした非常事態が起きています。驚いたことに一時ワシントンでは、婚姻業務を担当する事務所も閉鎖されたために、結婚に必要な結婚許可証の発行すら停止されていたのだそう。政府閉鎖は市民生活に大きな影を落としています。

無給で働く人々

そのような中で、国の安全や国民生活に欠かせない業務を担う42万人の連邦職員は、無給での業務を強いられています。その職業というのは、例えば麻薬取締官、刑務所の看守、警官、空港職員や消防士などです。

人命と財産を守るというミッションを持つ気象局の予報官もその一つ。気象局は1日24時間、週7日間の業務を必要とします。そうした厳しい環境の中での無給状態で、職員の精神状態は相当なものだと考えられます。

気象業務への支障

政府閉鎖は気象業務にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。

気象局によると、人々の安全を守るために必要な気象情報は提供するものの、その発信頻度や精度は普段よりも劣る可能性があるとのことです。

【情報発信の減少】

例えば13日(日)アメリカ東部に冬の嵐が襲い大雪が降りましたが、前もって警報や降雪量の予想は発表されたものの、実際の降雪量についての情報は出されなかった地域があったようです。

また、下はシアトル気象局のツイッターの投稿ですが、情報発信の頻度が少なくなる旨を通知しています。

【ハリケーン予測への影響】

こうした日々の気象業務に加え、政府閉鎖は来年度以降のハリケーン予測にも悪影響を及ぼすおそれがあるようです。

というのは、普段ハリケーンの発生しない冬の時期はその前のシーズンに発生したハリケーンを分析し、モデルを見直して来年度の予測に役立てているのですが、今冬はそれが行われないためです。

気象官の叫び

ところで2013年に起きた政府閉鎖では、無給で働くことの辛さを、ある方法で発信した気象予報官がいました。

下がその人物が書いた気象情報文ですが、左端のアルファベットを縦に読むと「Please pay us (給料を支払ってください)」と書かれてあるのが分かります。書いた人もすごいですが、これを見つけた人も立派です。

政府閉鎖が終われば無給で働いた分の給料が支払われるようですが、先の見えない事態に職員の疲労は限界に達しているようです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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