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「何もしないのがサービスです。」というビジネスクラスの驚きの機内サービス。

鳥塚亮大井川鐵道代表取締役社長。前えちごトキめき鉄道社長
おいしいお酒においしいお料理。あこがれのビジネスクラスのはずが・・・

国際線の飛行機の中にはファーストクラスとビジネスクラスという上等なクラスがあります。

最近はビジネスクラスの座席が良くなってファーストクラスとの差が小さくなりましたので、ファーストクラスを廃止してビジネスクラスを充実させる航空会社が増えてきていますが、庶民としてはどちらにしても高嶺の花。「一度は乗ってみたい」のがビジネスクラスですね。

さて、離陸してしばらくすると客室前方のカーテンが閉められ、エコノミークラスから見ると、「あのカーテンの向こうはどんなおいしいお料理やお酒がサービスされるんだろうなあ。」と興味津々ですが、前回の香港航空でお話しいたしましたように、確かにおいしいお料理がおしゃれに盛り付けられてサービスされています。

筆者の古巣のブリティッシュエアウエイズでも、フルフラットになるゆったりとした座席で、おいしいお料理がいただける機内サービスが自慢です。

先日、ヨーロッパへ行くのに久しぶりに乗せていただき、快適な旅を楽しませていただきました。

出発前のブリティッシュエアウエイズのビジネスクラス。フルフラットのベッドになる座席が互い違いに並んでいます。(B777)
出発前のブリティッシュエアウエイズのビジネスクラス。フルフラットのベッドになる座席が互い違いに並んでいます。(B777)
飛行機の中では転倒防止のためステムのない低いグラスがよく使われています。
飛行機の中では転倒防止のためステムのない低いグラスがよく使われています。

機内に入り座席に座るとウエルカムドリンク。ソフトドリンクかシャンパンがサービスされます。

まだドアが閉まる前です。

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そして機内食のメニューが配られます。

わくわくする瞬間ですね。

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離陸してベルト着用のサインが消えると、お食事の前のお飲物のサービス。

ナッツが添えられています。

前回の特別機内食の記事でお伝えいたしましたが、アレルギーや宗教上の理由、健康上の理由でお食事が制限されている方は、ここから特別食のご提供となりますが、幸い筆者は自主的制限以外にはありませんので、ふつうの機内食をいただきました。

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スターターはアラスカ産タラバガニと海老のサラダ。

こちらは白ワインといただきます。

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メインは牛ほほ肉の赤ワイン煮込みをチョイス。

今度は赤ワインをいただきます。

この後、デザートのケーキやチーズなどがたくさん用意されていたのですが筆者はここでギブアップ。

もったいないと思われるかもしれませんが、ヨーロッパ旅行に出るとなると前の晩は仕事の片づけでほぼ徹夜状態。

飛行場に到着後はビジネスクラスの場合、空港のラウンジで軽く食事を済ませている場合がほとんどですから、もう無理なのです。

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デザートは無理と申し上げると、「それではコーヒーを」とクルーが気を使ってチョコレート菓子を添えて運んできてくれました。

食べてすぐ寝るのはよくないと知りつつ、なにしろフルフラットのベッドになるシートですから、横になった途端、その後の記憶が途切れてしまいました。

東京からロンドンまで12時間ですが、たっぷり休んで、到着前にもう一食機内食が出されると、12時間もあっという間に感じるから不思議です。

鮪のタタキ キヌアサラダ
鮪のタタキ キヌアサラダ
メインはベイクドチキン、マッシュポテト添えをチョイス。
メインはベイクドチキン、マッシュポテト添えをチョイス。

2食目もしっかりとしたお食事でした。

「何もしないサービス」とは?

さて、これだけだと単なる食レポになりますが、本日ご紹介したいのが何もしないサービス。

上記のようなフルサービスは主として日中時間帯を飛行する便で行われていますが、夜間時間帯を中心に運航する便では機内でゆっくりお休みいただくお客様のために、機内ではあえて何もしないことがサービスになる場合があります。

帰路、ロンドンから東京に向かう便は、夜の時間帯を飛んできて朝羽田、成田に到着する便になりますから、そういう便ではお客様のチョイスによって、あえて何もしないサービスが行なわれています。

ヒースロー空港で出発を待つB747。日本線は既にB777、B787に変わっていますが、路線によってはまだB747が幅を利かせています。
ヒースロー空港で出発を待つB747。日本線は既にB777、B787に変わっていますが、路線によってはまだB747が幅を利かせています。

ロンドンから東京までも11時間以上の飛行時間になりますので、離陸後すぐに出される夕食は往路と同じようなフルミールが供されますが、日本に到着する前に出される朝食に関して、出発後にお客様が寝るモードに入る前に、クルーが好みを聞いて回ります。

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朝食サービス用のメニューです。

1:きちんとした朝食サービスを希望

2:飲み物だけを希望(到着50分前まで声を掛けません)  

3:何もいりません(到着40分前まで声を掛けません)   

お客様のご希望で選べるようになっています。

長距離の国際線では到着時刻の40分前までに機内サービスを終了し、クルーは片づけに入ります。

到着20分前にベルト着用サインが点灯します。

3の到着40分前に起こすということは、ぎりぎりまでお休みいただくということです。

メニューにある「クラブキッチン」というのは、機内の調理室の一角に、小腹が空いた時にちょっと食べられる軽食や飲み物類を常に置いてあるサービスで、「お目覚めの後、お飲物を好きに召し上がってください。」ということです。

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英語版はこちらです。

「MAXIMISE SLEEP」

We will leave you to sleep until 40 minutes prior to landing.

つまり「到着40分前まで寝かせといてあげましょう。」ということ。

これが筆者が言う何もしないサービスです。

せっかくビジネスクラスに乗ったのに、機内食を食べないなんてもったいない。

そう思うのはエコノミーのお客様で、ビジネスクラスのお客様は、到着後すぐに1日の仕事が待っているわけですから、食事よりも体を休めたい。そういう需要に合わせたサービスが「何もしないサービス」なのです。

この何もしないサービス、例えばシンガポールやバンコックなどから日本へ飛んでくる飛行時間6~7時間の路線で、早朝日本に到着するような便ではすでに10数年前から日本の航空会社でも開始していますが、実は、ブリティッシュエアウエイズが今から20年ほど前にロンドンーニューヨーク間のファーストクラスで始めたのが世界で最初です。

ロンドンーニューヨーク(逆も同じ)は世界一のビジネス路線です。飛行時間は約6時間。夜出発して朝到着する便ではお客様にとって一番ありがたいサービスは「寝かせてくれること。」ということで、ファーストクラスの座席がフルフラットになったのを契機として、機内では機内食などのサービスをしないというサービスを始めました。

出発前にラウンジで夕食をお召し上がりいただいて、シャワーを浴びていただいたら、飛行機の中ではゆっくり寝るだけ。搭乗口を通って機内へ入るとクルーが「お帰りなさい。」と言ってパジャマをくれます。お客様は出発までの時間でパジャマに着替えて、あとはぐっすりお休みいただいてリフレッシュしていただこうというサービスです。

わざわざ高いお金を払って、「何もしないでくれ。」「放っておいてくれ。」とは、何とも贅沢な話ですね。

でも、彼らにとって、お金を払う価値というのはそういうところにあるということです。

20年も前からヨーロッパではこんな考えもあったんですね。

これが日本人にはなかなか理解できないような多様性ということなのかもしれません。

ちなみに、筆者は「寝かせておいてくれ。」などということは言いません。

きっちり朝食サービスもいただきました。

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これが日本到着前にサービスされる朝食です。

フルーツから始まる英国式朝食。

やっぱりこれをいただかないと、ブリティッシュエアウエイズに乗った意味がありませんからね。

おいしくいただきました。

この春からは大阪-ロンドンも就航するようです。

キャンペーン価格もあるようですので、東京の方でも大阪から出発されるとお得な旅ができるかもしれませんね。

※文中の写真はすべて筆者撮影。

大井川鐵道代表取締役社長。前えちごトキめき鉄道社長

1960年生まれ東京都出身。元ブリティッシュエアウエイズ旅客運航部長。2009年に公募で千葉県のいすみ鉄道代表取締役社長に就任。ムーミン列車、昭和の国鉄形ディーゼルカー、訓練費用自己負担による自社養成乗務員運転士の募集、レストラン列車などをプロデュースし、いすみ鉄道を一躍全国区にし、地方創生に貢献。2019年9月、新潟県の第3セクターえちごトキめき鉄道社長、2024年6月、大井川鐵道社長。NPO法人「おいしいローカル線をつくる会」顧問。地元の鉄道を上手に使って観光客を呼び込むなど、地域の皆様方とともに地域全体が浮上する取り組みを進めています。

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