月旅行、ZOZO前澤社長とイーロン・マスクのソロバン勘定
KNNポール神田です。
IT社長の中でも、クレイジーな生き方を標榜する2人が世界に向けてコミットメントを発表した。
SpaceX 発表の様子
前澤社長は、1962年ケネディがアポロ計画前のヒューストンのライス大学での演説で使った、『We choose to the go to the moon』を一人称の『 I 』に変えた『I choose to the go to the moon』と自らの英語で宣言した。
『月旅行』を『アートプロジェクト』としたこと
パブロ・ピカソが月を間近に見ていたら、どんな絵を描いたんだろう。
ジョン・レノンが地球を丸く見ていたら、どんな曲を書いたんだろう。
彼らが宇宙に行っていたら、今の世界はどうなっていたんだろう。
かつての宇宙開発は、米ソの代理戦争であり、科学技術で牽引してきた。そして半世紀後、超富裕層向けの冒険旅行企画がたちあがりはじめた。イーロン・マスクは火星に人類が移住できる構想のゴールを設定し、テスラ車の販売で稼いで、火星への夢を実現しようとしている。
筆者も2001年のゼグラム社の宇宙旅行には予約したことがあるが、一週間をあの狭い空間で過ごすのは、大半は苦痛ではないかと考えていた。
しかし、前澤社長は、単に物見遊山の宇宙旅行ではなく、『アーティスト』たちを宇宙に連れ出し、宇宙から眺める地球を見て、インスパイアされた作品を残し、アートで『平和』を実現しようという。おそらく狭い空間の中でのアイデアは、お互いに刺激を与え合うことだろう。
『#dearMoon』というアートプロジェクトのビデオも公開となった…
『#dearMoon』ウェブサイトも公開された。
twitterもinstagramも用意。
https://twitter.com/dearmoonproject
https://www.instagram.com/dearmoonproject/
ZOZO 前澤社長のソロバン
何よりも、今回の発表で「Yusaku Maezawa」の名前は、一瞬にして世界へ知れ渡った。スタートトゥデイの株主にとっては、冷ややかな反応だったが…。しかし、2023年までの5年間、#dearMoon のプロジェクトとして、単なるネット通販の日本の企業ではなく、世界を睨んだアートと平和で『ゾゾスーツ』の広報活動もできるからだ。
惜しむらくは、デザイン性がどうのではなく、ドット柄のZOZO SUITをイーロン・マスクにも着せて、世界を露出するべきだったと思う。ブランドイメージが宇宙、アートプロジェクト、ZOZO SUITで世界から「S・M・L」の既成サイズがなくなる…のストーリー性を感じさせてくれたかと思う。…というよりも、これはZOZOの前澤社長というよりも、個人のYusaku Maezawa プロジェクトなのだろう。5年後にSpace Xが存続しているかという問題も懸念される。
イーロン・マスクのソロバン
このところ、テスラのCEOとしての、イーロン・マスクの失態ぶりは、精神疾患かと思うほど心配していた。
今回は、SpaceX社のプロジェクトだからTesla社とは直接的には関係がない。しかし、イーロン・マスクという起業家でありCEOという立場での一挙一動に世界が注目していることは確かだ。
今回の発表は、前澤社長が乗客としての、8名分でのチャーター予約をおこない、金額は発表しないが、個人的に出資もするという。SpaceX社にとっては、バスキアの絵画を所有するアートキュレーターの参加は、宇宙旅行の新たな表現手段としての上客だといえそうだ。
ソーシャルメディアに長けすぎたCEOの2人
イーロン・マスクCEOにも、前澤社長にもいえることだが、会社よりも著名になった有名人CEOは、プライベートも丸裸だ。
しかも、どちらも、簡単にツイートし続ける。今や、米国大統領が、通信社よりも、自ら発表してしまう『直』の時代だ。メディアが介在する必要がなくなりつつある。むしろ、メディアは直で発表されたことにより起こりつつある『現象』をレポートするしかないのかもしれない。
会社は株主のために存在するという考え方が主流だが、この2人については、応援したくなるファンになる、顧客になるという応援の仕方もありそうだ。とりあえず、プロジェクトの成功を祈り、不格好な初代ZOZO Suitで計測し、オーダーし、5年後の『平和』の夢を見たいと思った。イーロン・マスクの支援は大変だけど、ZOZOでジーンズをカスタマイズするくらいはできそうだ。