次に来る「韓流の世界的ヒット」!? "ピキピキダンス”っていったい何?
近頃、韓国エンタメ界からこんな指摘が聞こえてくる。
「世界的ヒットとちょっとご無沙汰してる」
ドラマでは「イカゲーム」がヒットしたのが2021年。音楽は「Dynamite」が2020年で、映画の「パラサイト」は2019年。それ以降、韓流全体の浸透や定着がスゴイが、じつは「ものすごいヒット作」が出ていないのではないか、という声だ。
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しかしこの流れを、全く意外な場所から変えるかもしれない。そんなムーブメントが起きつつある。発祥の地は韓国で一番人気のあるスポーツの”現場”だ。
「野球場」
韓国プロ野球リーグKIAタイガースのチアリーダーが繰り広げる「ピキピキダンス」がSNSで大バズリ中。相手チームが三振を喫した後、それを喜ぶための「三振アウトソング」として踊られるこのダンス。両手の親指を立てて腕を交互に上下に動かし、同時に腰を左右に振る。この動きを無表情で行う。
これが今、韓国国内で動画の再生回数1000万越えを連発する大ヒットに。aespaのカリナが8月の台湾でのイベントでサラッとダンスのマネをしてみせたり、IVEがライブで踊ったりといった広がりも見せている。
のみならずアメリカでも熱気が報じられ始めている。
「ニューヨークタイムズ」が2024年8月27日、「TikTokを席巻するこの韓国のチアリーダーたちは誰なのか?(Who Are the Korean Cheerleaders Flooding TikTok?)」というタイトルで記事を掲載し、この応援でのダンスと楽曲を紹介した。
この記事をきっかけに、「ピキピキダンス」を扱う韓国国内報道とチャレンジ動画も急増している。シンプルな音楽とダンス、チアリーダーの魅力的なパフォーマンス、「化粧中のチアが急に踊り始める」という意外なヒットのきっかけ、SNSがそのステージであるという点。これらの点が注目を集めている。
主人公はチアリーダー「イ・ジュウン」
韓国の主要メディア「聯合ニュース」は2024年8月28日、「"無表情の'ピキピキダンス'がTikTokを魅了"…NYT、KBOチアリーダーに注目」という見出しで、この現象を伝えている。
火付け役となったのは、2024年6月22日にYouTubeにアップロードされた「化粧直し中ピキピキイ・ジュウン(Lee Ju-Eun)チアリーダー」という動画だった。KIAタイガース球団公式のチアリーダーである彼女。自チームの守備イニングに、化粧直しをしていたところ、マウンドの投手が三振を取り「ピキピキアウトソング」が突然始まった。
驚いた彼女は、右手に持っていたクッションをバッグに急いで入れたまま左手でバッグを握り、途中で右手にバッグを移しながらピキピキダンスを踊る。この予想外の展開と、仕事をやり遂げる、という真摯な対応が多くの視聴者の心を掴んだ。「ハプニング」がバズる要素にもなったのだ。
韓国のプロ野球選手や有名人も次々とこのダンスに参加している。2024年7月13日のキウム-NC戦(イ・ジュウンのKIAタイガースとは関係ない試合)では、外国人選手のロニー・ドーソンが二塁到達直後にピキピキダンスを踊り、話題を呼んだ。また、K-POPアイドルグループfromis_9のメンバーが始球式でこのダンスを披露し、K-POPファンの間でも注目を集めた。
このブームに対し、球団側も「公式ピキピキダンスイベント」を実施。2024年7月19日から8月4日まで「ピキピキチャレンジ」イベントを開催した。今ではスタンド全体でこのダンスをやる風景も見られるという。
原曲にも「ストーリーあり」 20年前の曲が東南アジア経由で韓国に
ではこの「ピキピキダンス」、起源は何なのか。
楽曲は2021年にリリースされたDJ Prengky Gantay(インドネシア)の「DJ JTL My Lecon (Prenky Gantay)」というリミックス曲として知られている。
じつはこの曲のオリジナル、2001年にK-POPグループjtLが発表した楽曲「My Lecon」だ。
韓国で20年以上前に発表された楽曲がインドネシアでリミックスされ、さらに韓国の野球場で新たな命を吹き込まれた。それもホントに何気ない瞬間を切り取った動画から、世界に広まっている。
楽曲の良さやシンプルさ、そして原曲のストーリーと「化粧中のチアが立ち上がる」というハプニング。この「ピキピキダンス」、スポーツとエンターテイメント、そしてソーシャルメディアが交差する文化現象として、今後も注目を集めそうだ。