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新型コロナ休校で10代のSNSとゲーム利用時間は大幅増、依存状態の子どもも増加中、対策は急務

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
(写真:アフロ)

新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、全国を対象に非常事態宣言が発令された。多くの学校が休校状態となって、もうすぐ二ヶ月になる。在宅時間が長くなることで、子どもたちのネット・ゲーム・動画利用時間が大幅に伸び、依存状態もかなり危険な状態となっている。学校が再開したときには日常に戻れない状況となっている危険性もある。子どもたちの利用時間の実態と対策について考えていきたい。

新型コロナ休校で伸びるスマホ・SNS利用時間

中高校生・大学生を対象としたTesTee Labの「コロナウイルスの影響調査(行動編)」(2020年4月)によると、利用・視聴が増えた媒体は「スマホ」がトップ。中学生を例に挙げると、「TV」が54.8%、「雑誌・漫画・本」が18.9%、「PC」が12.7%に対して、「スマホ」は72.2%と大幅に増加している。

さらに利用・視聴が増えたサービス・ジャンルについて聞いたところ、「YouTube」が全年代で8、9割に。中学生を例に挙げると、上位から「YouTube」(87.8%)、「SNS」(72.7%)、「ゲームアプリ」(56.7%)などとなっており、動画・SNS・ゲームの時間が長くなったことがよく分かる。

同「コロナウイルスの影響調査(現状への不安)」(2020年4月)では、年齢が上がるほど「不安に感じる」割合が高くなっており、逆に年齢が低いほど「退屈に感じる」が高くなっている。休校が二ヶ月に延び、退屈に感じている学生が増えているようだ。

LINE社の利用動向に関するレポート(2020年4月)でも、臨時休校から10代のLINE利用時間が大幅に活発化していることがわかっている。3月のスタンプ送信数は、全体で前月比で21%増加だったのに対して10代では65%増加。ビデオ通話は全体で34%増加だったのに対して10代では80%増加している状態だ。友人と満足に会えない子どもたちがSNSで交流し、退屈や不安を紛らわしているというわけだ。

増えるゲームプレイ時間、世界でも急増中

ゲーム時間も大幅に増えている。AppApeが4月8日時点でのAndroid日間利用者数(DAU)上位300アプリを対象に、利用者数の移り変わりを調べた結果が興味深い。

大きく伸びたのは10代に人気のゲーム機Switchの利用時間制限ができるアプリ、「ニンテンドーみまもりSwitch」。平日・休日ともに8割程度伸びており、多い日は通常の平日の2.8倍に伸びている。

子どものスマホアプリ利用を管理するDocomoの「あんしんモード」も平日に16%伸びるなど、子どもが在宅でスマホやゲームなどを利用する時間が伸び、保護者が利用時間を管理する必要があったことがわかる。

ゲームでも、10代に人気のゲームアプリの利用が伸びた。たとえば10代男子に人気のゲームにその傾向が強く、「荒野行動」は最大で35%増、「eFootballウイニングイレブン2020」は29%増だった。その他、コミックアプリや動画アプリの利用も増えたという。

この傾向は世界も共通だ。ニールセンによると、3月23日から29日にかけて、新型コロナウイルスによる自宅隔離の影響で世界各国のゲームのプレイ時間が増加したという。米国で45%増、フランスで38%増、イギリスで29%増、ドイツで20%増となったそうだ。さらに、米国の29%はオンラインプレイが増えたという。

学ぶ意欲・習慣づけを大切に、利用時間制限を

3月の休校との違いは、3月はほぼ学習が学び終わっている時期だったのに対して、4月は新年度でまったく新しい学習が多いこと。ほとんどが新しいクラスとなっており、担任・クラスメイトとの関係性がないことだ。本来は進学・進級の時期で一番モチベーションが高まっている時期にもかかわらず、学べない苛立ちもあるだろう。

ある中学生は、「がんばっていた部活もやれない。不安だし、受験とかどうなるのかわからないし、勉強ばかりで息が詰まるし、ついついゲームをしたり動画を見ている」と言っていた。やりたいことがやれず、自宅にいるしかないのでできることが限られていることはわかるし、早くやりたいことをさせてあげたいと思う。

しかし、中には一日10時間以上ゲームをしたり、既に昼夜逆転している子どももいるようだ。学校が再開すれば急いで遅れた学習を取り戻さなければならないし、子どもたちにはこの先長く続く日常が待っている。「かわいそうだから」とゲームや動画などを利用させすぎると、学校が再開しても日常に戻れなくなってしまうだろう。

学習習慣は、早起きをさせて、決まった時間で学習させる習慣づけをすることから生まれる。午前中は集中しやすい時間帯でもあるので、学校からの課題や学習教材などに取り組ませよう。オンライン授業がない地域がほとんどなので、民間の通信教育やオンライン授業などを利用してモチベーションを保つのもいいのではないか。

学習意欲については、本当は学ぶ楽しさを知ったり、理解できた嬉しさや褒められる体験、友だちと学ぶことなども影響するので、一番難しいところだ。しかし幸い、進級・進学したばかりなので、新学年の学習については新鮮であり、学習意欲も高めだ。決まった時間に新学年の学習に取り組ませるのがいいだろう。必ずその日に学んだことを保護者も確認し、夕飯時などに、子どもの学習進度や頑張りなどを評価する時間を設けるようにしよう。

そもそもゲームやスマホなどは長時間利用になりがちであり、子どもだけで利用をコントロールすることは難しい。そのためには、やはりYouTubeやゲームなどの利用時間は制限し、それ以外のことを用意することが大切だ。子どもがやることや楽しんでできることをなるべくたくさん用意してあげてほしい。たとえばお手伝い、室内トレーニングや運動、習い事の練習、電子書籍、やったことがない新しいこと、親子で挑戦できることなどもいいだろう。

iPhoneやiPadなどのiOS端末は「スクリーンタイム」機能、Android端末は「ファミリーリンク」機能を使えば、カテゴリーごとの利用時間制限などができる。前述の通り、ゲーム機Switchは「ニンテンドーみまもりSwitch」機能を使うとやはり利用時間制限が可能だ。まだ使っていないご家庭は、ぜひ利用時間制限に活用してみてほしい。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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