Yahoo!ニュース

「ミリオンダラー・ベイビー」の舞台になったNYの伝説的ボクシングジムが移転 山口裕朗フォトギャラリー

杉浦大介スポーツライター

Photo By 山口裕朗/Hiroaki Yamaguchi 

ニューヨークのボクシングジムといえば、誰もがまずブルックリンのグリーソンズジムを思い浮かべることだろう。その名門ジムが、昨年11月28日に1ブロック隣りに移転。12月17日には新ジムで初めてとなるアマチュアボクシングイベントが行われた。

アマチュア戦は大盛況 Photo By Hiroaki Yamaguchi
アマチュア戦は大盛況 Photo By Hiroaki Yamaguchi

この日に登場したのはいわゆるホワイトカラーばかりで、選手のクオリティは様々。それでも多くのファンが観戦に訪れ、ブルックリン・ボクシングの底力を感じさせた。

ロッカールームに夢が貯まる Photo By Hiroaki Yamaguchi
ロッカールームに夢が貯まる Photo By Hiroaki Yamaguchi
勝者に手渡されるトロフィー Photo By Hiroaki Yamaguchi
勝者に手渡されるトロフィー Photo By Hiroaki Yamaguchi
エバーラストのグローブ Photo By Hiroaki Yamaguchi
エバーラストのグローブ Photo By Hiroaki Yamaguchi

「(移転は)複雑な心境だった。旧ジムには多くの思い出が詰まっていたからね。ただ、新天地に移ってエキサイトしているよ」

オーナーのブルース・シルバーグレイドが地元メディアに語っていた通り、1937年に創設されて以降、これほどの伝統を築き上げてきたジムは全米でも数少ない。 

ジェイク・ラモッタ、カルロス・オルティスといった往年の名王者が汗を流し、ジェリー・クーニー、ロベルト・デュランもここを本拠地にした。

一時的にトレーニングに利用した選手はウィルフレッド・ベニテス、ヘクター・カマチョ、フリオ・セサール・チャベス、ラリー・ホームズ、トーマス・ハーンズ、マイク・タイソン、そしてモハメド・アリ・・・・・・etc。

また、「レイジング・ブル」「ミリオンダラー・ベイビー」といった名作映画の舞台になったことでも知られる。

勝者は誇らしげ Photo By Hiroaki Yamaguchi
勝者は誇らしげ Photo By Hiroaki Yamaguchi
カラフルなグローブ Photo By Hiroaki Yamaguchi
カラフルなグローブ Photo By Hiroaki Yamaguchi
バンテージをチェック Photo By Hiroaki Yamaguchi
バンテージをチェック Photo By Hiroaki Yamaguchi

もともとボビー・グリーソンによってブロンクスに創設されたジムは、1974年にマンハッタンの30丁目に移転。その後、マンハッタンの家賃高騰に伴い、1984年にブルックリンのダンボ地区に引っ越した。そして、今回、またも住所を変えることになった。

家主の希望による移転だったが、場所は前のジムのほど近く。しかも契約により、より近代的にリノベーションすることも可能になった。近年の会員の80%はビジネスマン、女性、子供たちだというだけに、今回の変化は歓迎されるだろう。

麗しき女性ファイターたち Photo By Hiroaki Yamaguchi
麗しき女性ファイターたち Photo By Hiroaki Yamaguchi
セコンドの役割は重要 Photo By Hiroaki Yamaguchi
セコンドの役割は重要 Photo By Hiroaki Yamaguchi

旧ジムよりやや狭くなったとはいえ、それでもフロアは非常に広大。ボクシングリング3つ、プロレス用1つを置けるだけのスペースがある。スピードバッグは6台、ヘビーバッグは8つ。さらにエクササイズや筋力トレーニングのマシーンも豊富に備えるなど、施設の充実度ではやはりNo.1である。

義足のファイターも登場 Photo By Hiroaki Yamaguchi
義足のファイターも登場 Photo By Hiroaki Yamaguchi
義足ファイター、判定負け Photo By Hiroaki Yamaguchi
義足ファイター、判定負け Photo By Hiroaki Yamaguchi

家賃、物価などがアメリカの他の州に比べて3〜4割は高いと言われるニューヨークでは、ジム経営も容易ではない。

しかし、グリーソンズは月に一度の割合でこの日のようにホワイトカラーのためのエキジビションイベントを開催。また、ジムフロアを映画、テレビなどの収録のために有料で開放するなど、様々な形で生き残りの術を見つけてきた。

そして、近年もザブ・ジュダー、ポーリー・マリナージ、ビビアン・ハリス、ユーリ・フォアマン、ダニエル・ジェイコブス、ピーター・クィリンといった世界タイトルホルダーたちが、練習場に使用したり、自由に出入りしたり、それぞれのやり方でグリーソンズジムに足跡を残している。

ここでまた新しい場所に移り、今度はどんなドラマが生まれていくのか。名門グリーソンズジムは、多くの名ボクサーに使用されることで時を越えていく。殿堂マディソン・スクウェア・ガーデンと並び、ニューヨーク・ボクシングの象徴的な場所として生き残り続けていくに違いない。

オフィスに刻まれた栄光の軌跡 Photo By Hiroaki Yamaguchi
オフィスに刻まれた栄光の軌跡 Photo By Hiroaki Yamaguchi
スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

杉浦大介の最近の記事