あなたの肌の悩み、実は心の問題かも?体型醜形障害(BDD)と皮膚疾患の意外な関係
皆さんは「体型醜形障害」という言葉をご存知でしょうか?英語では「Body Dysmorphic Disorder」、略して「BDD」と呼ばれるこの病気は、自分の容姿や体型に過度に執着し、実際には目立たない、あるいはごくわずかな身体的特徴を重大な欠点だと思い込んでしまう精神疾患です。
BDDは皮膚疾患と深い関わりがあることが分かっています。例えば、にきび、乾癬(かんせん)、白斑(はくはん)といった皮膚疾患がある人の中には、その症状を過度に気にしすぎてBDDを発症するケースがあるのです。
実際、皮膚科を受診する患者さんの中にはBDDの人が一定数含まれており、その割合は一般人口の2%に対して、9%から15%にも上るという研究結果があります。つまり、皮膚科医はBDDの最前線にいるといっても過言ではありません。
【BDDの症状と日常生活への影響】
BDDの人は、自分の容姿に関する強迫的な思考にとらわれ、鏡で何度も自分をチェックしたり、メイクで欠点を隠そうとしたりします。また、皮膚をつついたり引っかいたりする行為も特徴的な症状です。
これらの症状は日常生活に大きな支障をきたします。社交の場を避けたり、仕事や学業に集中できなくなったりすることも珍しくありません。さらに深刻なケースでは、うつ病や不安障害を併発したり、自殺念慮を抱いたりすることもあります。
BDDは単なる「容姿へのこだわり」ではなく、生活の質を著しく低下させる重大な精神疾患です。患者さんの肌の状態だけでなく、心の状態にも注意を払うことが非常に重要だと考えています。
【BDDの治療法と皮膚科医の役割】
BDDの治療には主に2つのアプローチがあります。1つは認知行動療法(CBT)と呼ばれる心理療法で、もう1つは抗うつ薬などの薬物療法です。
認知行動療法では、患者さんの歪んだ思考パターンを修正し、健全な自己イメージを構築することを目指します。一方、薬物療法では主に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が使用されます。これらの薬は、BDDの症状だけでなく、併発しやすいうつ病や不安障害の症状も改善する効果があります。
皮膚科医の役割は、BDDの可能性がある患者さんを早期に発見し、適切な専門医へ紹介することです。また、皮膚疾患の治療を通じて患者さんの自己イメージの改善をサポートすることも重要です。
しかし、BDDの患者さんは自分の症状を認識できないことが多く、治療に結びつけるのが難しい場合があります。そのため、皮膚科医には高い観察力と、患者さんとの信頼関係構築が求められます。
BDDと皮膚疾患の関係性について理解を深めることは、より良い医療サービスの提供につながります。皮膚科医だけでなく、精神科医や心理士との連携も重要です。
皆さんも、自分や周りの人の容姿へのこだわりが度を超していると感じたら、専門医への相談を検討してみてはいかがでしょうか。肌の健康は、心の健康と密接に関わっているのです。
参考文献:
Li, V., Frasier, K., Woolhiser, E., Daly, K., Christoforides, S., Harpine, C., ... & Lephart, E. D. (2024). Exploring the Intersection of Body Dysmorphic Disorder (BDD) and Dermatological Conditions: A Narrative Review. Dermatology and Therapy, 1-15.