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にしおかすみこからあふれ出す「ポンコツ」家族への思い

中西正男芸能記者
家族への思いを語るにしおかすみこさん

 ムチを手にした女王様キャラでブレークしたピン芸人のにしおかすみこさん(46)。家族のリアルな現状を発信する連載を9月から始めました。「認知症の母」「ダウン症の姉」「酔っ払いの父」「一発屋の自分」という家族にありったけの愛を込めて「ポンコツ」という言葉を使い、シリアスな話をコミカルに綴っています。家の中を明かすことへの葛藤。そして、むき出しの悩み。胸の内を吐露しました。

仕事8割減

 新型コロナ禍でロケもなくなり、去年の4月、5月は完全に仕事がゼロになりました。そこから少しは戻りましたけど、コロナ禍前の仕事量を10とすると、今でも2くらいの状況になっています。

 ずっと家賃18万円のところに住んでいたんですけど、コロナ禍前からすでに自分の収入に見合ってなかったですし、引っ越しを考えてはいたんです。

 ただ、慣れ親しんだところで居心地もいい。なので、居られるだけ居ようと思っていたんですけど、コロナ禍で踏ん切りがついたというか、引っ越しせざるを得ないことになりました。貯金もありませんでしたし、家賃10万円の物件を見つけて昨春には引っ越しの段取りをつけたんです。

 そんな中で久々に実家に戻ってみようと思い、千葉に向かいました。実家にはお正月には戻ったり、何かあれば戻るという感じで、頻繁に戻るわけではないけれど何年も戻っていないわけではない。そんな感じでした。

 でも、その時の実家の様子に驚きました。家中が砂だらけでとんでもない状況になっている。ゴミも放置しっぱなし。そして、明らかに母の様子も違う。

 何かが確実におかしい。いろいろ動いて調べてみると、母が認知症であることが分かりました。そこから10万円の物件ではなく、実家に住むことを決めました。それが去年の6月頃のことでした。

誰から倒れていくんだろう

 ウチの家族を説明すると、母は認知症になりました。1歳上の姉はダウン症です。父は酔っ払い。そんな家族です。

 今の状況で言うと、家のことをやるのは基本的に私です。

 母が「姉の面倒を見るのは自分の仕事」と思っているので、完ぺきではないですけど、ご飯を作って姉に食べさせてはいます。

 姉は単純に表現するのは本当に難しいですけど、恐らく小学校1年生くらいの自立の感じだと思います。

 さらに、姉も歳を取ってきてできないことが増えてきた気もしますし、母だけではカバーできていないところもあるので、私が作り置きの料理を準備したりしてサポートしています。

 父は母が作ったものがあれば食べるし、私の作り置きも食べますし、自分のタイミングでチャチャッと作って食べる時もあります。

 酔っ払いではあるんですけど、アルコール依存症というわけではない。いろいろ手伝ってくれたらありがたいんですけど、父は昔から天然というか…。

 自分ではやってるつもりなんです。だから責めちゃうと「やってるのに…」となってしまうので、父は父でまた別の気遣いが求められると言いますか。

 現状、私からすると父が戦力になってくれているのかは微妙な状況です。ただ「戦力にならない」と言っちゃうと、この原稿を出していただいた時に、それを読んでショックを受けちゃうだろうから、果たして何と言うのが妥当なのか。今、それを考えながらしゃべっています(笑)。

 家族4人で暮らすのは20年ぶりくらいですね。地元だと言っても、私は20年そこに住んでないので、家の周りの状況も把握できてないし、家族3人がそれぞれどんなリズムで暮らしているのかも分からない。あらゆるものが手探りの中、久々の4人での生活が始まりました。

3人が死んでから書こうか

 先々を考えると、否応なしにシミュレーションをしたりもします。3人いる中で誰から倒れていくんだろう。2人同時に倒れたらどうしたらいいんだろう。本当にいろいろ考えます。

 でもね、シミュレーションで何かが解決されたことは一度もなくて、いつも最後はしんどくなって終わる。そればっかりです。

 なので「とりあえず今日はみんなが楽しそうだったらいいか」とか「母が笑って送り出してくれたからいいか」とか。そういう感じでやっています。現実は。

 ただ、何かあった時に対応する。決断する。それをするのは私しかいないので、その覚悟は持ちながら暮らしている。それもまた現実です。

 …そして、一方ですごく思うのは、私が芸能人じゃなかったら、今回の連載を始めなかったから、家族がこんなにさらされることもなかっただろうにということです。私が勝手なことをしたから負担をかけているなとも思います。

 覚悟を持って、腹をくくって書くことを決めましたし、家族を守り抜くと決めて踏み出した一歩でした。自分で決めたことなんですけど、本当に守り切れるのか。その不安もずっとあります。正直なところ。

 そんな感情になりながらも、なぜ連載を書くことにしたのか。たくさんの思いがあってのことだったんですけど、本当にリアルな話、お金がないから生活費を稼がなきゃいけない。仕事を広げなきゃいけない。家族のために稼がないといけない。これはありました。

 書く仕事だったらパソコン一つでどこにいてもできる。3人と暮らしながらでもお金が稼げる。そう思ったのも、本当に正直な話です。

 ただ、書くことによって3人を傷つけちゃいけない。なので、本当は3人が死んでからやろうかとも思っていたんです。

 でも、母と一緒に暮らすようになって、私の健康寿命があと何年あるのか。そして、これまでいろいろな劣等感があって、お笑いでも、人生全体でも「私なんかが…」と思って引いてきたところがありました。だけど、引いていたらいつまで経ってもその時は来ない。

 3人が死んでからと言っていて、仮にその時が来たとしても、その時の自分が書く気力があるのか分からない。だったら、思いがある今やる。そう思ったんです。

 あと、これは割と真剣に「疲れた人がホッとしたり、笑ってくれたら」ということを考えて決めたのもあります。これこそ、私なんかがおこがましいんですけど。

 ただ、9月20日の朝6時。連載の第1回がネット上にアップされる時は、本当にドキドキでした。

 扱っている話が認知症、ダウン症。そして父はアルコール依存症ではないけれどもお酒との距離が近い状態ではある。

 私も含めて、そんな家族を何という言葉で表すのがしっくりくるのか。そこを考えに考えた結果が「ポンコツ」だったんです。

 その表現が自分も含め適していると思うんですけど、同じ病気で苦しんでらっしゃる方々がこの言葉を聞いて気分を害されるのではないか。

 そんな意図は全くないですし、ないことを丁寧に書いたつもりだけど、思いもよらないハレーションが起きるかもしれない。アップ前は本当に不安でした。

 それと、芸人としてできれば“かわいそう”とはとられたくない。だから笑いを織り交ぜて綴っているつもりなんですけど、そこが機能せずに“かわいそう”と感じる方もいらっしゃるだろう。

 それでも、自分としては幾重にも意味があると思って発信したこと。でも、賛否両論はある内容だろうな。でも、でも、覚悟を持ってやったことだし…。そんな感じで、今でも迷い中です。これまたリアルな話として。

家族とは

 時々「全部なかったことにして逃げちゃいたい」と思うこともあります。でも、家に帰るんですよね。家族って何なんでしょうね。

 連載を始めたこと、家族には隠しておこうと思っていたんです。もっとズルい言い方をすると、バレないと思ってました。でも、その日にすぐバレたんです。

 たまたま父がパソコンを見ていたら、たまたま私の連載がニュースとして挙がってきて。それをまた母にすぐ言っちゃって、家中が大騒ぎになったんです。

 母は「こんなことを書くなんて」とまた感情を昂らせていました。勝手に始めた私も悪いんですけど、幾重にも勝手に始めるしかなかった。その中で悪いパターンに陥ってしまった。かなり重い気分にもなったんですけど、それから何日か経って母から言われたんです。

 「あなたの文章を好きになってもらいなさい」

 その瞬間、思いました。「親として、連載のことを飲み込んだんだ」と。

 一方、父は認知症ではないので、真正面から怒っていると思って、仕事先からメールをしたんです。

 勝手にやってごめんなさいということ。そして生活費を稼がないといけないと思ったこと。家族を悪く言うつもりは一切ないということ。この3つを伝えました。

 すぐに返信が来ました。

 「怒ってないよ。お姉ちゃんとお母さんのことは愛を持って書いてね。お父さんのことは何と書いてもいいから。みんなから愛されるものを書きなさい」

 父と母は折り合いが良くなかったんですけど、私が実家に住むようになって、父と母の意見が一致したのはそれが初めてでした。

 ポンコツだけど、愛を持って育ててもらったなと思いました。そして、今でも愛を受けているんだなと思いました。

 本当に、家族って何なんでしょうね。「家族とは〇〇だと思います」とバシッと言えたらいいんですけど、切れ味の悪いことでごめんなさい(笑)。

 ただ、家族のことを書いて、さらに家族の奥深さを知ることになりました。それは間違いなく今言えることだと思っています。

(撮影・中西正男)

■にしおかすみこ

1974年11月18日生まれ。千葉県出身。本名・西岡純子。青山学院大学卒業。ワタナベエンターテインメント所属。94年にデビュー。コンビ活動などを経て、ピン芸人としてムチを持った女王様キャラクターでブレークする。マラソンや水泳などスポーツでも力を発揮しフルマラソンのベストタイムは2019年に記録した3時間5分3秒。今年9月から「FRaU(フラウ)」で家族への思いを綴った連載を開始。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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