どうなるKDDI「損害賠償」 具体的な金額は?
追記:
7月29日、KDDIが通信障害について説明会を開き、返金を発表しました。271万人を対象とする「約款に基づく返金」に加え、3589万人を対象に「お詫び返金」も実施されるとのことです。
7月2日から5日にかけて発生したKDDIの通信障害について、数百万人を対象に補償をするとの方針が報じられ、話題になっています。具体的にどのような補償をするのか、いま分かっている情報や過去の事例から予想します。
損害賠償とは料金を返還するという意味
KDDIによる補償について、7月3日に開いた記者会見で高橋誠社長は、障害の内容を見ながらユーザーへの補償を検討していく方針を示していました。
これに対し、7月22日には複数のメディアが数百万人を対象に「損害賠償する方針」と報道。KDDIは「当社が発表したものではない」とコメントしたようですが、報道内容を否定するものではなく、大筋では合っていると考えられます。
まず気になるのは、「損害賠償とは何か」という点でしょう。今回の通信障害では多くのユーザーがさまざまな形で「損害」を被ったと考えられますが、それが直接補償されるわけではありません。
損害賠償について、KDDIの約款には以下のような項目があります。簡単にいえば、使えなかった時間分の料金を損害とみなし、返金するという意味になります。
今回のような通信障害が起きた場合の返金については、「基本使用料等の支払義務」の項目で説明されています。
このことから、KDDIが補償をすることになった場合でも、ユーザーが支払った料金を超えるような範囲までの責任は負っていないことが分かります。
また、補償をするのは「まったく利用できない状態」が「24時間以上」続いた場合としています。KDDIの通信障害は3日ほど続いていましたが、多くの時間は「利用しづらい状態」だったことから、どこまでを補償の範囲に含めるかが注目されます。
さらに、補償の対象となるのは「数百万人」とのことですが、KDDIが影響を受けた回線数として発表したのは「最大3915万回線」と、大きな差があります。
この数百万人とは、音声のみを契約している人が中心になるとの報道もあります。たしかに通信障害の発生中には、音声通話はできないものの、データ通信は使えているとの声もありました。
スマホ利用者の多くは、音声とデータの両方が使えるプランを契約しているはずです。このことから、補償の対象となるのはガラケーの利用者など、一部に限られる可能性があります。
音声のみのプラン「ケータイプラン」の料金は、税込で月額1265円です。これが3日間使えなかったとすると、約款に基づいて返金されるのは単純計算で約120円になります。
日割りの返金でユーザーは納得するか
過去の事例として、2013年にKDDIはLTE通信の障害で700円を返金しています。当時の資料によると、これは「基本使用料、ISP利用料、LTEパケット定額料の3日分相当を勘案して算出した額」でした。
しかし、2013年と比べて、いまでは携帯電話やスマホの社会における重要性ははるかに高まっています。これは携帯キャリア自身が日頃からアピールしている通りです。
どのような補償があるか、詳細は7月29日15時半からの記者会見で発表される予定です。ただ、約款に定められた通りの算出方法であれば、多くの人が納得するような金額にはならない可能性があります。
ユーザーの中には、復旧を待ち続けて土日が潰れたり、仕事に支障が出たりした人もいるはずです。料金が日割りで返ってくる程度では、その「損害」をカバーすることはできないでしょう。
障害発生直後の記者会見で高い評価を得た高橋誠社長ですが、そのせいでややハードルが上がってしまった印象もあります。果たして今回の通信障害に巻き込まれた全員が納得できるような説明はあるのか、注目です。
追記:
KDDIによると、2013年の返金対応の際には約款の「損害賠償」の項目ではなく、「基本使用料の支払義務」の項目に基づいて判断したとのことです。なお、今回の通信障害に対する補償をするかどうかについては、まだ決定したことはないとしています。