Yahoo!ニュース

サンウルブズ、日本最後の試合でワラターズに大敗。「収穫」と「底」の話。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
4月23日、歴史的初勝利を挙げた際の指揮官(左)とゲームキャプテン(右)。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

国際リーグであるスーパーラグビーに日本から初参戦しているサンウルブズは、7月2日、東京・秩父宮ラグビー場での第15節で一昨季王者のワラターズとぶつかり、12―57で大敗した。かねて今季限りでの辞任を発表しているマーク・ハメットヘッドコーチ、脳震盪の疑いのため前半で退いた立川理道ゲームキャプテンが、試合後に会見した。

チームは2月からの13戦で、1勝11敗1引き分け。この日のうちに南アフリカへ飛び、残りの2試合に備える。

以下、会見中の一問一答(※は当方質問)。

ハメット 

「良い出たしでワラターズにプレッシャーをかけられたが、相手はワールドウラスのチーム。前節で(首位の)チーフスから45点も取って勝ったチームだと再認識しました。けれどもサンウルブズは、天候がどうだとか(この日の最高気温は35度)、怪我人がどうだとか(6月の日本代表の活動で、堀江翔太キャプテンが肘を故障)、そんな言い訳をしない。ただ、このジャージィを着て、向上し続けるチームを目指しています。ファンの前で結果を出せなかったのは残念です」

立川 

「僕は(頭を打って)前半で交代してしまった。試合のことはあまり言えないんですけど、感覚的に戦えているという部分はありましたし、まだまだ足りない部分もありました。どういう状況であれ言い訳をせずに、前を向いてやっていくしかない。結果はすごく残念ですけど、残り2試合はこのメンバーでできる最後の試合。タフなツアーですが、しっかり戦いたい」

――ハーフタイムにどんな過ごし方をしましたか(※)。

ハメット 

「相手のオフロードパスを止めようと話をしました。相手は、ワイドな展開も上手くできていた。それに対して、我々はディフェンスでオーバーコミット(1か所に複数人が集中する状態)したり、守備の人数が足りなくなったりと、翻弄されていた。その修正を促しました」

――後半先手を取られてから、左右のプロップを交代させました(※)。

ハメット 

「暑かったので、元気なプロップを出したい、と。これから27名のスコッドで南アフリカ遠征に行きますが、我々の選手層は底をついてきている。選手達の健康状態を管理しなければいけないので、こういう交代をしました。立川も、(試合中の脳震盪の検査の後に)フィールドへ戻るゴーサインは出たが、彼の将来のために退けました(事実上、前半終了時点で交代)」

――収穫は。

立川 

「トライは取れなかったですけど、ボールを動かした時はいいアタックをできていた。自信を持っていい。ディフェンスは…。前半は、個人的なタックルミスが続いただけで、崩されたわけではない。ただ後半は、(悪い流れなどを)引きずりながら点数を取られた。もっともっと反省しなければ」

――スーパーラグビーを通じて、フィジカルの強化はなされたか。

立川 

「(相手のタックルに)まともに当たらず、前に行ったり…。個人的には、フィジカルの部分(で手応えがある)。タックルも、スキル(が重要)。その技術の向上は、高いレベルのなかでできているのではと思います」

――攻防が目まぐるしく変わった頃の防御に課題があるような。

ハメット 

「その通りです。ターンオーバーからのディフェンスが難しくなっています。汗でボールが滑ってルーズボールが増えて(そうした場面が増えた)。我々の最初の20分間は、カウンターから相手にとって危険なアタックもできた。けれども、ルーズボールが出たところでは(全体的に)相手が上回っていた。彼らの特殊要素やスキルの高さが要因です」

――ここまでで学んだものと課題。

ハメット 

「日本での最後のサンウルブズの試合。課題はハイボールの処理と相手ボールでのセットプレーの処理。あとは山田章仁が(7人制ラグビーへの専念のため)抜けたことで、ウイングのポジションでのワイドなアタックが機能しなくなった。けれど、忘れちゃいけないのは、課題よりポジティブなところがあったことです。今季は、30名超の選手が過去に経験できなかったスーパーラグビーを経験できた」

立川 

「スーパーラグビーの試合に出ることは、外で経験できない。若い選手がスーパーラグビーを経験できると、個々の能力の向上にもつながる。得られるものはたくさんある。国内のチームに帰っても、志高くやれるので。

課題は…僕のなかではないですけど…。スケジュールがタフななか、今後よくできることはたくさんある。選手、協会の意見をすり合わせながらもっとよくしていきたいです」

――来週からは2週間の南アフリカ遠征があります。

ハメット 

「間違いなくタフ。それでもチャンスはある。前回(4月)の遠征の教訓を活かしたいです。初遠征の選手には、いい経験をさせてあげられる。引き続き、我々をサポートする人が誇りに思えるような戦いをする。

最後に一言、いいですか。きょうは、日本で最後の試合。ここまで毎週、本当にエンジョイできました。忙しかったが、このチームの指揮を取れてよかった。

このチームは、我々だけではなく、周りを含めた全員でチームです。メディアの方、スポンサーの方、ファンの方も含めて。記者の方とも顔なじみになって、関係を築けたのも嬉しかった」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事