パクリか合法か。日本のティラミス騒動のような酷似商品で韓国でも騒がしい
パクリか、それとも合法的な企業戦略なのか。日本では今週、ティラミス専門店を巡る騒動が起きたが、韓国でもそれに近い騒ぎが起きている。
韓国でざわついたのは、ビール業界だ。とあるビールメーカーから2月に発売予定の新商品が、ライバル社の商品にそっくりだとして模倣疑惑に包まれたのだ。
その新商品名は、「FilGOOD」。韓国の大手ビールメーカーOBビールの新商品なのだが、実はこの「FilGOOD」に先行して販売されている商品があった。
その名は「Filite」。Hite眞露の商品だ。眞露と言えば、韓国の人気歌手でもある“国民の妹”IUが長くモデルを務め、日本でもお馴染みの酒類メーカーだが、「FilGOOD」は「Filite」にソックリ。
商品名のみならず、商品名の特定アルファベットに黄色でアクセントを効かせたことや、イメージキャラクターに動物を用いたことなどパッケージデザインの類似性も指摘されているのだ。
ただ、Hite眞露から出ている「Filite」は、“韓国初の国産発泡酒”で、既存の韓国産ビールよりも40%ほど低価格であることから、発売当初から売り切れが続出していた。
もともと焼酎のイメージが強い韓国だが、近年はアルコール度数の低いチューハイやビールなどが好まれている。
2017年頃からは日本の「アサヒ」「ほろよい」といった輸入ビール・チューハイが人気に。両商品は日本を訪れた韓国人観光客の間で絶賛されていたが、韓国でも買えるようになって、その人気にさらなる拍車がかかった。
(参考記事:日本人は意外と知らない!? 韓国人観光客が絶賛する「日本の商品」BEST 7)
そんな輸入ビールの人気に待ったをかけるべく誕生したのが「Filite」で、その背中を追いかけるように今度は「FilGOOD」が登場し、物議を醸しているというわけだ。
「Filite」側としては「パクられてしまった」という感じでもあるのだろう。
もっとも、韓国でこのような“模倣騒動”が起きるのは珍しいことではない。日本のお菓子や氷菓とソックリな商品が、突如として韓国で発売になることもある。
(参考記事:ジャイアントコーンの「そっくり商品」も……韓国で日本のお菓子の“パクリ”が絶えないワケ)
ただ、今回の「FilGOOD」は通常の模倣疑惑に収まらず、さまざまな批判にさらされている理由は他にもある。それは、飲み口の真下の部分に書かれた「HAPPOSHU」という英語表記だ。
「HAPPOSHU」とは、まさに日本語の「発泡酒」をローマ字表記にしたもの。おそらく発泡酒であることを強調するためのアクセントとしてローマ字表記したのだろうが、「発泡酒を指す“バルポジュ”という韓国語があるにも関わらず、なぜわざわざ日本語をヨンムン(英文)表記にしたのか」と、拒否反応をあらわにする韓国人が少なくないらしい。
実際に、韓国ではその歴史も相まって、日本から由来した物を日本語で表記する場合が多い。韓国で生まれた新語が、実は日本のものだったという“ややこしすぎる日本語”がよくある。
特にその現象がよく見られるのが食品や食べ物の呼び名だ。
例えば、昨年韓国で人気を博した「もちロール」の「もち」は、韓国語で「トック」と言うにもかかわらず、商品では「モチ」をそのまま表記。以前流行った「いちご大福」も、「タルギ(いちご)モチ」と呼ばれていた。
「すし」に「ラーメン」、「おでん」など例を挙げればキリがないし、「刺身」「わさび」「マグロ」「イカ」「アナゴ」「アジ」など、水産物は日本語がそのまま通じるケースが多い。
ファッション業界ではユニクロの商品である「フリース」が日本語発音のまま使われており、他にも「ワク(枠)」や、「ダンドリ(段取り)」「プンパイ(分配)」「ムデポ(無鉄砲)」なども、俗語として広く使われている。
ちなみに昨年、とある韓国国会議員が国会会議で「ゲンセイ」という日本語を発して大きな波紋を呼んだことがあった。
(参考記事:日本語を口走った韓国の国会議員が大炎上。韓国における“日本の残滓”とは)
当時、その議員は「公の場において適切ではない」と強く責められたのだが、実際には前出の外食業界をはじめ野球界や美容界などで当たり前のように使われてきた言葉でもあった。
あらゆる分野で日本語読み・表記が用いられているのは、韓国が抱えるジレンマでもあるようだが、いずれにしても、韓国国民からあまり歓迎されそうにない“HAPPOSHU”の「FilGOOD」。
このままだと、日本のティラミス騒動のように、どちらかが商品名やパッケージデザインを変更せざるを得なくなりそうだか、その運命やいかに。