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通園バス置き去り事故 子どもを信頼して預けることができる園の見極め方とは

赤田太郎の仕事に役立つ心理学常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

またしても悲劇が繰り返されてしまいました。

2022年9月5日、静岡県の認定こども園で、3歳の女の子が通園バスにおよそ5時間、置き去りとなり、その後、死亡しました。死因は熱中症が重篤化した「熱射病」とみられています。

去年7月にも福岡県の保育園で5歳の男の子が、通園バスにおよそ9時間放置され、熱中症で死亡しました。それを受けて、国は全国の幼稚園などに対し、送迎バスの確認の徹底などを呼びかけていましたが、また悲劇が繰り返されてしまいました。

園に送り出したあと、わが子がバスの中に閉じ込められていたとしたら…私たち、親はどうすることもできません。

子どもには、閉じ込められてもクラクションを鳴らせば良いことや、窓をたたくなど助けを呼ぶことをしっかり伝えることが大切ですが、どの親も、そのようなミスが起こらない園に子どもを通わせたい。

この記事では、子どもがバスに置き去りにされた原因と、仕事に関連した職員関係から考える、信頼できる園の特徴についてお伝えします。これを参考にして、今通わせている園や、これから通わせたいと思っている園が信頼できるかチェックしてみてください。

記者会見で示された4つの原因と「根本的原因」

園が行った記者会見では、事故原因として四つのポイントを示しました。

〈1〉乗降車時の人数確認を怠った〈2〉複数人での車内点検を実施しなかった〈3〉最終的な出欠情報の確認をしていない〈4〉登園するはずの園児がいない場合の保護者への連絡をしていないという、4重のミスが重なったとのことです。増田立義理事長(73)は「安全管理がきちんとできていなかった」と謝罪している。

問題は、出欠確認システムがあるにも関わらず、多くの職員が見過ごし続けけてきたのかです。これまでも、登園予定の園児を「欠席」と勘違いしてバスに乗せないケースや、欠席連絡をしたにも関わらず、バスが迎えに来て待機していることもあったり、保護者などによる帰りの迎えが来るのに、バスに乗せてしまうケースなどが繰り返されていたといいます。

こんなに重ねるほどミスを犯す園は、なぜ生み出されるのでしょうか。

あまりにもずさんで言葉がでません。数多くのプロがいる現場にもかかわらず、こうした問題を言い出せない、「改善できない職場環境」がそこにあるということになります。

安心して預けられる園の特徴とは

私たちはどのようにして信頼できる園を探せばよいのでしょうか。その参考になる概念に高信頼性組織というものがあります。ここから、園を選ぶための視点についてお伝えします。

高信頼性組織とは、文字通り、高い信頼があり事件・事故を起こさない組織、不測の事態に強く、長期間にわたって、高い安全性・信頼性を維持し続けている組織のことを言います。ワイクらは、高信頼性組織について5つのプロセスがあると示しています。

①些細な徴候も報告する正直さ
②念には念を入れる慎重さ
③オペレーションに対する鋭敏さ
④全力で対応する機敏さ
⑤その場で適切なものに権限を委ねる柔軟さ
最後にこれを統合するマインドを兼ね備えている

①些細な徴候も報告する正直さ

今回の園ではある意味、正直さを感じるが、問題がここまで放置され続けていたことが信じられないじょうきょうです。些細な徴候どころかトラブルばかりです。

ちょっとした変化に気がつける先生がいて、トラブルも正直に報告されること、そしてそれが繰り返されないように学んでいる園であれば、信頼できる園だと言うことがいえます。

②念には念を入れる慎重さ

高信頼性組織は、これでもかと言えるほど、物事に対して慎重に進めます。事件が起こった背景は、子どもをこれでもかといえるほど、慎重に確認していなかったことにあります。

物事を単純に考えることなく、さまざまな可能性を想定します。多分いるだろう、降りているだろうと人数確認を単純化する園は、大変危険です。

保護者から見て、「念には念を入れているなぁ」と感じられる対応こそ、信頼できる園だといえるでしょう。

③オペレーションに対する鋭敏さ

問題が起こると即座に対応します。この事件を起こした園は、今までたくさんトラブルがあったにも関わらず、なんにも対応しておらず、オペレーションに対して真逆の対応になっています。

信頼できる園は、働きかけにいつでも迅速に対応してくれる鋭敏さがあります。園に伝えたときに、そのことに対してすぐに対応してくれますか?お願いしているにもかかわらず、何もしてくれない。このような園は、問題に対して迅速に対応するシステムが十分に整っていないといえます。

④全力で対応する機敏

一度事件が起こったときには全力で対応する機敏さがあります。事件の園では、すぐに記者会見を行ったことや、素直に状態を説明したものの、それはあまりにもずさんなものでした。園の運営を全力で対応しているようには感じられませんでした。

⑤その場で適切なものに権限を委ねる柔軟さ

年に数回しか運転しない理事長は、その安全性に対して、なんにも分かっていませんでした。管理すべき立場である理事長が安全管理の重要性を理解していないからこそ、無責任に大切な命が失われる結果となりました。

「もう一人の職員に任せていた」

責任を転嫁する、協力関係もダブルチェックもないオペレーションでした。つまり、「適切なものではない人」に権限を委ねる「いい加減さ」となっていたといえるでしょう。

マインドを兼ね備えているか

最後にこれを統合するマインドを兼ね備えていることが重要とされます。事件・事故は絶対に起こさないと全職員が常に現場で意識しているか、ということになります。

マインドは劣化すると言われています。登園システムがあるにも関わらず、「逸脱の常軌化」が繰り返されました。

自分の通わせている園が、決められたルール通りに運用されていないとき、事件の発生一歩手前の状態と認識しましょう。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

こんなに悲しい事件はありません。二度と繰り返さないようにしてほしいと思っています。このような問題を二度と繰り返さないために、私自身は「保育現場を高信頼性組織にするための」研究活動を行っています。ぜひ、協力してくださる方や意見などがありましたら、お知らせいただきたいと思っています。

このように、日常生活や仕事上で役立つ心理学の知識や解決方法について、情報をお届けしています。

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最後までお読みいただきありがとうございました。

常葉大学(静岡県)准教授 博士(教育学)公認心理師臨床心理士

常葉大学(浜松)健康プロデュース学部心身マネジメント学科/常葉大学大学院健康科学研究科臨床心理学専攻 准教授。立命館大学/武庫川女子大学・大学院非常勤講師。働く人と家庭のメンタルヘルス・ストレス・トラウマが専門。働くみなさんにこころの健康の大切さを伝えるために、誰でもわかりやすい心理学をYouTube・Instagramで発信しています。

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