Yahoo!ニュース

妊娠中に言われて傷ついたこと

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
妊娠中はナーバスになりがちだ(写真:アフロ)

妊娠中は体調も悪く神経質になりがち。周囲の一言に傷つくこともある。私も流産を経ての妊娠で、職場を異動したり夫が単身赴任になったりと激動だった上、理解のない対応をされて涙した。今回は安定期の体験を紹介する。

妊娠初期の記事はこちら→妊娠、上司にどう報告する?

妊婦さんへ・安定期編(子育て支援NPOサイトに連載した「アラフォー初めてママのときどきドキドキジャーナル」より)

数カ月前、歯の痛みがおさまらず歯科に行きました。2歳の娘は夏かぜの発熱が多く、子育てや仕事のストレスでかみしめていたのが原因らしいです。ここで不思議な出会いが。担当医は、安定期に入ったアラフォー初めて妊婦さん。「保育園や病児保育のことって、役所に行けばいいんですか?」と真剣な表情で聞かれました。

私は治療後の短い時間に、「近くに保育園があったら、見学してみてはどうですか?」「うちは病児シッターを頼んでいます」などと話しました。

私もそうでしたが、ずっと仕事をしてきた女性にとって、子育ては未知のジャンル。身軽に仕事に打ち込んできたけど、妊娠中や子育て中にどうやって折り合いをつけていくかも初体験です。コラムにつづるあれこれが、少しでも初めてママさんの役に立てば、と改めて思いました。

早産に備えシミュレーション

安定期に入ると周りの人に言えるし、出産の準備も始めます。私は流産の経験があり、つわりもひどかったので安定期が待ち遠しかったです。ところが夫の海外赴任が決まって単身で行くことに。ゆったり過ごしたかったのですが、夫の渡航準備に追われました。

赴任してからは、おなかのベビーとふたり暮らし。早産などの非常時に備え、「部屋の救急ボタンを押し、マンションの警備員さんを呼ぶ」というシミュレーションをしました。

不安はありました。産後うつになったらどうしよう。高年齢初産で体もきついだろうし、エンドレスでベビーのお世話ができるのかなって。産後1カ月ぐらいは、動き回らないほうがいいと言われます。

ホルモンバランスも変わり、慣れない授乳や産後の出血でふらふら。本当に心身がつらくなったら専門家に相談するとして、ママの体にいいごはんを用意したり、洗濯したりのサポートは必要です。

里帰り出産も条件による

ある海外出身のママの場合、両親が退職までの有給休暇を前倒しでとって来日。住み込みで支えていました。お母さんはベビー、お父さんは食事作りを担当。ママは何もしなくてもいいぐらい。これはとても恵まれた例ですが、身近に手伝ってくれそうな人はいますか?

「夫は、赤ちゃんが泣いても絶対に起きない。飲み会にも行ってしまう」というママの怒りはよく聞きますが、夫がいればごみ捨てや買い物ぐらいはしてくれるかも。

我が家のように夫が単身赴任だと、「里帰り出産にするんでしょ?」と言われましたが、そう単純にはいきませんでした。実家の近くで医療や産後のケアが充実しているかや、身内に体力・気力を含めた余裕があるかなど環境によると思います。

身内の無神経な一言

身内の困ったエピソードはいろいろ聞きました。「かぜをひいて親に連絡したら、忙しいから行けないと言われた」「産院に義理の親が毎日来て、ストレスだった」「80過ぎの義母が来てくれるけど、けがしないか、はらはらする」「『産後の世話は無理。でも孫はすぐに見せて』と迫られた」などなど。

私も産前産後、周囲の対応に何度も涙しました。妊婦は命がけです。おなかのベビーを無事に育てて産むのだから。産後もママが元気でいないと。だけどその温度が伝わらない。してほしいことと、身内の思いがすれ違うんですよね。

ストレスになる関係は距離を

母親学級で配られる冊子 なかのかおり撮影
母親学級で配られる冊子 なかのかおり撮影

手助けできないなら、「何かあったら言ってね」ぐらいの距離で見守ってもらえるのがうれしい。大げさでなく、母子の健康のために、ストレスになる関係は距離をおいたほうがいいと実感しました。産婦人科の主治医にも「身内に気をつかうより、プロに頼んだほうがいいわよ」とアドバイスされました。

私は、ベビーのお世話と家事を頼める産後ヘルパーを予約しました。身近な人に余裕があり喜んで手伝ってもらえるなら心配いりませんが、会社や自治体の助成を確かめてみてください。産前産後のヘルパーやシッターが格安でお願いできたり、助成券をもらえたりしませんか? 

出産した病院を退院後に、自宅に帰るのが不安という人は、ベビーと一緒に産後ケア入院ができるクリニックやセンターも。これは非常に高いのですが、センターがある自治体に住んでいれば助成があって気軽に泊まれるそうです。

「おいしいもの持って遊びに来て」

あとは、親しい人たちに「おいしいものをちょっと持って遊びに来てね」とお願いしました。特定の人に頼りすぎると重くなりますが、何人かが1回ずつでも来てくれれば、出かけられない産後も楽しく過ぎます。

ベビーの沐浴(もくよく)に参加してもらったり、抱っこしてもらう間にごはんを食べたり。おしゃべりをして、ほっとする時間でした。

先輩ママとのおつきあいもトライしましたよ。あるママに「うちの子は健康だからいいけど、もし病気があったら仕事をやめざるを得ない」と言われ、ズドーン。妊娠中に心配になるようなことを言われても…。

逆に「がんばっているね」「うちの子はもう大きいし、何かのときはかけつけるから」と前向きに言ってくれたママには感謝です。何か言われてもスルーする強さが必要ですし、力になってくれる人なのか見極めも大切ですね。

母親学級で友達ができた

母親学級にも参加しました。アラフォーになると、そういう団体行動って恥ずかしいのですが、体験と思って(笑)。病院の学級で偶然、隣の席になったNちゃんは予定日も近く、支え合いました。

自治体の働く妊婦向けの土曜クラスや、夫婦クラスも行きました。土曜クラスで予定日が近いママと知り合いになり、産後に子どもクリニックで再会してメールアドレスを交換。夫婦クラスは申し込みが抽選になるほどの人気で、若いママパパが多かったです。夫がおもりの入ったベストをつけてみて、妊婦の苦しさを体験できたのはよかったみたい。

次回は、妊娠中の「まめ情報編」です。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

なかのかおりの最近の記事