レアル・マドリー、バイエルン、リヴァプール、シティ、バルサ。強者の思惑に、「スーパーリーグ」の構想。
フットボールが、「強者」のものになるかも知れない。
スーパーリーグの構想が進められている。レアル・マドリー、マンチェスター・ユナイテッド、バルセロナ、ミラン、リバプール、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマンといったクラブが参戦する可能性がある。2022年のスタートが濃厚で、各クラブの間で話し合いが水面下で行われているという。
■失われる相互連結
「フットボールが情熱的なスポーツであり続けたのは、相互連結があったからだ。つまりそれは、地域のフットボール協会とチャンピオンズリーグがどこかで繋がっているという感覚だ」
これはスペイン人ジャーナリストのアクセル・トーレスの言葉だ。
スペインの例でいえば、地域2部リーグのクラブが、地域1部、テルセーラ(実質4部)、セグンダB(実質3部)、2部、1部と昇格して、1部で上位フィニッシュしたらチャンピオンズリーグ出場権を獲得できるという「夢」があった。それは非常に難しい。だが、可能性としては存在した。
■潰える可能性
しかし、スーパーリーグの構想において、それは不可能になる。限られたクラブのみが参加する大会だからである。それでは可能性が完全に潰えてしまい、アクセル・トーレスが言うところの「相互連結」は成り立たくなる。
2018-19シーズン、チャンピオンズリーグでアヤックスが躍進した。フレンキー・デ・ヨング、マタイス・デ・リフト、ハキミ・ツィエク、ドニー・ファン・デ・ベークらを中心にした「ヤング・アヤックス」はレアル・マドリーやユヴェントスといった強豪を次々に破り、ベスト4に進出した。
19-20シーズン、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督率いるアタランタが攻撃的なフットボールで欧州を魅了しながらベスト8に進出した。ユリアン・ナーゲルスマンという新鋭の指揮官が率いるライプツィヒが、ヨーロッパの4強に名を連ねた。そういった現象が、生まれなくなる。
■巨額の資金
バルセロナのジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長は、辞任直前にスーパーリーグへの参戦を表明した。
スーパーリーグでは優勝チームに10億ユーロ(約1200億円)の賞金が与えられるという。18-19シーズンにチャンピオンズリーグで優勝したリバプールに与えられた額は1億1100万ユーロ(約133億円)だった。その約10倍、破格の数字だ。
近年、欧州のフットボールシーンにおいては、「国家クラブ」が台頭してきている。パリ・サンジェルマン、マンチェスター・シティ、アラブ人オーナーをトップに据えるクラブが大型補強を敢行して急速に力をつけてきた。一昔前であれば、ネイマールやキリアン・エンバペがパリSGで共存し、ジョゼップ・グアルディオラ監督がシティでケヴィン・デ・ブライネやラヒーム・スターリングを指導しているという画は想像できなかっただろう。
ゆえに、この構想は「国家クラブ」への対抗手段であるとも言える。ただ、大会の管轄をめぐり、UEFAやFIFAからの反発がある。また、各国の協会は基本的にスーパーリーグの発足を快く思っていない。一方で、着々と準備は進行している。フットボールが、ビッグチームの、ビッグプレーヤーのためのものになる。その未来の足音が忍び寄っている。