なぜアトレティコはB・シウバ獲得を検討しているのか?リーガ王者とシメオネの大いなる野望。
2020-21シーズンのリーガエスパニョーラを制したアトレティコ・マドリーが、次のシーズンに向けて動き始めている。
アトレティコはリーガ38試合で勝ち点86を獲得して、2位レアル・マドリー(勝ち点84)、3位バルセロナ(勝ち点79)、4位セビージャ(勝ち点77)との激しいタイトル争いで競り勝った。アトレティコにとっては、2013-24シーズン以来、7年ぶりのリーガ制覇だった。
■中盤の創造性
だが時は止まらない。ディエゴ・シメオネ監督とスポーツディレクターを務めるアンドレア・ベルタは、すでに来季を見据えている。『フランス・フットボール』によれば、アトレティコがベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)に関心を寄せているという。
シティは今季、プレミアリーグで独走状態を維持したまま、優勝を飾った。加えて、カラバオ・カップのタイトルを獲得。チャンピオンズリーグでは、チェルシーとの決勝まで勝ち進んだ。その過程でジョゼップ・グアルディオラ監督はB・シウバを貴重な戦力として数えていた。
B・シウバは2017年夏にシティに加入。彼の獲得に際しては、シティがモナコに移籍金5000万ユーロ(約65億円)を支払っている。直近の3シーズンにおいて、B・シウバの出場試合数は45試合(2020-21シーズン)、52試合(2019-20シーズン)、51試合(2018-19シーズン)で、安定したプレータイムを確保していた。
だがシティは来季に向けてハリー・ケイン(トッテナム)、ジャック・グリーリッシュ(アストン・ヴィラ)を補強候補に挙げているといわれている。グリーリッシュを獲得した場合、彼には「11番」のポジションが与えられ、B・シウバの出場機会が減ると予想される。そこで、B・シウバの移籍話が出てきている。
アトレティコとB・シウバが紐付けられる背景には、ジョルジュ・メンデス代理人の存在がある。
クリスティアーノ・ロナウドやジョゼ・モウリーニョ監督の代理人を務め、”スーパーエージェント”と呼ばれるジョルジュ・メンデスだが、2019年夏にはジョアン・フェリックスをベンフィカからアトレティコに移籍させている。
アトレティコはアントワーヌ・グリーズマンが契約解除金1億2000万ユーロ(約156億円)でバルセロナに移籍したため、その後釜を探していた。当時19歳だったアタッカーに、クラブ史上最高額の移籍金1億2700万ユーロ(約165億円)を支払い、取引が成立した。それを仲介したのがジョルジュ・メンデス代理人だ。
■次善の策
一方、アトレティコはB・シウバの獲得に固執しているわけではない。次善の策を準備しており、そのターゲットがロドリゴ・デ・パウル(ウディネーゼ)だ。
シメオネ監督は以前からデ・パウルに興味を抱いていた。シメオネ監督がアトレティコで獲得を欲してきた選手が3人いる。アンヘル・コレア、ルシアーノ・ビエット(2015-16シーズンにアトレティコに在籍/現アル・ヒラル)、そしてデ・パウルである。
アトレティコは今季、従来の【4-4-2】から【3-1-4-2】に布陣を変更した。ボールを握り、攻撃的なフットボールでリーガのチャンピオンに輝いた。しかしながら、ルイス・スアレス(リーガ21得点)、マルコス・ジョレンテ(12得点)の決定力に依存するところがあり、彼らが欠場した試合では苦しんだ。
B・シウバ、デ・パウルに求められるのは、インサイドハーフで決定機に携わる仕事だ。B・シウバのプレービジョン、デ・パウルの2列目からの飛び出しは現在アトレティコに不足しているものを補うはずだ。
■カンテラーノとジレンマ
ただ、アトレティコがB・シウバやデ・パウルを確保するためには資金を捻出しなければならない。
そこで鍵を握るのがサウール・ニゲスだ。シメオネ監督のシステムチェンジで、「被害を被ってしまった」選手の一人である。ボランチを本職とするサウールは、非常にポリバレントであるものの、【3-1-4-2】では嵌めるポジションがない。
サウールの契約解除金は1億5000万ユーロ(約195億円)に設定されている。ユヴェントス、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・ユナイテッドが関心を寄せているといわれ、アトレティコとしては移籍金の提示額次第で交渉に応じる可能性がある。
サウールはアトレティコのカンテラーノだ。コケとサウールは、近年のアトレティコを土台から支えてきた。リュカ・エルナンデスがバイエルンに、トーマス・パーティーがアーセナルに移籍した後も、コケとサウールの存在がアトレティコのカンテラーノの希望になっていた。
そのサウールが移籍に傾けば、クラブの価値と評価はブレる。だが変化を受け入れるならーー。アトレティコとシメオネが、ジレンマに襲われている。