顔を覆う衣服、ニカブやブルカを教育現場で禁止へ/ノルウェー
ノルウェー政府は12日の記者会見で、教育現場で顔を覆う衣服の着用を禁止する法案を提出すると発表した。右派・左派の両政党から賛成する声がでており、大多数で可決される見通しだ。
禁止対象となる「顔を覆う衣服」の定義は、ニカブ、ブルカ、目や口の部分だけに穴が開いた目出し帽、マスク。一方、ヒジャブや帽子のキャップは禁止対象から外れる。
「教育現場」とは、公共・民間を指し、幼稚園・保育園から大学などの高等教育機関、難民がノルウェー社会について学ぶ入門プログラム、移民のためのノルウェー語講座が対象となる予定。
ノルウェーではこれまで、ニカブなどの禁止は自治体ごとに判断が任されていた。しかし、物議を醸すテーマのために、自治体や教育現場などでは、話し合いを超えて、争いの種となる場合もあった。自治体レベルではなく、全国レベルで国会が主導で強制的に禁止したほうが、人々の衝突を避けられるとの指摘も以前からあった。
「宗教の否定」であることを政治家は否定
ニカブなどの禁止の議論の際、右派・左派問わず、「宗教の否定」であることを政治家たちは必死に否定する。
特定の宗教の禁止は「政治的に正しくはない」と批判される傾向もあるためだ。よって、各政党や政治家たちの本音はどうであれ、「公の理由」としては、「人々のコミュニケーションを困難にさせるため」が一般的だ。
イスラム教徒などが布で顔の大部分を覆っていた場合、驚く人もいる。授業での生徒同士の交流や、医療関係者と患者間の交流に支障がでるという指摘。看護師などが布で顔を覆ったままでは、不安に感じる患者もおり、衛生的にも大丈夫なのかという指摘。目だけしか見えない状態では、本人確認も難しいという安全面の指摘もあった。
移民などに寛容的なイメージが強い最大政党で野党の左派「労働党」も、今回の右派政権の提案に賛同している。
「顔を覆う布は生徒たちのコミュニケーションを妨げる」とトルビョルン・ルーエ・イーサクセン教育・研究大臣(保守党)は記者会見で語る。
「ニカブやブルカのような顔を覆う布は、ノルウェーの教育機関という土地にはふさわしくはない」とペール・サンドバルグ移民・統合大臣(進歩党)は指摘(リストハウグ大臣は産休中のため、サンドバルグ漁業大臣が代理を務めている)。
同日、アーナ・ソールバルグ首相(保守党)は自身のFacebookで、「誰かと話す時、お互いの顔を見ることができるというのは大事な価値観です」と記す。全国での全面的な禁止はしないが、人々が交流し学習するためには、保育園などでの禁止は必要だと説明した。
右派ポピュリスト政党の進歩党は、さらに厳しく、全国の公共機関での禁止も求めている(今回の連立政権としての提案には含まれていない)。
一方、服を自由に着る権利を奪うことは、一部の学生が学校などから遠ざかり、学ぶ機会を失うという批判もある。
Text:Asaki Abumi