新型コロナと「川崎病」類似症例の関連を初証明 イタリア研究報告
「川崎病」類似症例と新型コロナウイルスの関連性を初めて証明する論文が、5月13日、医学雑誌「ランセット」に掲載され、注目されている。
欧米では、「川崎病」類似の炎症性疾患や発熱、腹痛、発疹などの症状を見せる子供たちの中に、新型コロナに感染している子供がいる事例が相次いで発生していた。イギリスでは、14歳の少年が亡くなり、75人から100人の子供たちが現在治療を受けている。アメリカでは、ニューヨーク州で102人の子供たちがこの症状を見せ、3人が亡くなった。
医師たちは、新型コロナが子供たちに「川崎病」似の症状を引き起こしているのではないかと考えていたが、両者の間にはまだ明確な関連があるというエビデンスはなかった。
川崎病似症例が30倍に増加
しかし、このほど、イタリアでは最も新型コロナの感染率と死亡率が高いベルガモの医師たちが、新型コロナと「川崎病」似の症状に関連があるとするエビデンスを発見した。
ベルガモにあるパパ・ジョヴァーニXXIII病院の医療記録によると、「川崎病」似の症状を見せる症例は、感染爆発前の5年間は3ヶ月に1例の発生に留まっていたが、感染爆発以降は月に約10例へと30倍に増加。今年2月半ばから4月半ばまでの間に、この症状の治療を受けた子供10人のうち8人が新型コロナの抗体検査で陽性だったという。ちなみに、陰性だった残りの2人については、検査結果に誤りがあったからだと医師たちは考えている。
同病院の小児科長のロレンゾ・ダンティガ医師は、
「我々の研究で、新型コロナと「川崎病」似の炎症性疾患に繋がりがあることが初めて明確に証明された。患者が見せている「川崎病」似の症状は新型コロナが引き起こしたことは間違いない」
と話している。
ちなみに、米ニューヨーク州で、「川崎病」似の症状を見せる患者102人についても、新型コロナ検査で60%が陽性、抗体検査では40%が陽性だったことが判明している。また、ニューヨーク市内で症状を示した82人のうち、65%にあたる53人が新型コロナに感染しているか、抗体を持っていたことも明らかになっている。
アメリカでも、「川崎病」似の症状を見せる子供たちの多くが新型コロナに感染しているか、あるいは抗体を持っている状況は、イタリアの研究報告を裏づけているのかもしれない。
また、イタリアの研究報告は、「川崎病」似の症状を見せる子供は非常にまれで、新型コロナに曝された子供1000人のうち1人しかいないと推定している。
それでも、医師たちは、政府が外出規制を緩和する場合、新型コロナが「川崎病」類似の炎症性疾患を引き起こす可能性があることを考慮するよう警告している。
学校再開は慎重に
ところで、アメリカで「川崎病」似の症状を見せている患者の年齢の内訳を見ると5~9歳(29%)、10~14歳(28%)、1~4歳(18%)、15~19歳(16%)、0歳(5%)、20~21歳(4%)と小中高大学で学んでいる子供たちだ。
外出規制措置の下、子供たちにはオンライン教育が行われてきたが、今、アメリカでは、この秋、学校を再開すべきか議論が行われている。そんな中、トランプ氏と米国立エネルギー感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ博士は考えが対立していることが浮き彫りになった。
ファウチ博士は「子供たちが学校に戻るまではワクチンはできず、子供が感染した場合に危険性がないとは言い切れない。新型コロナは全てのことが分かっているわけではない。特に子供については慎重になる必要がある。学校再開については簡単には答えが出せない」と米国時間12日、米上院公聴会で証言。学校再開に対して慎重な姿勢を見せた。
これに対して、トランプ氏はファウチ氏のコメントは「受け入れ難い」とし、「学校は絶対に再開すべきだ。学校が閉鎖状態では、国の復活は考えられない」と訴えている。
ちなみに、カリフォルニア州に23校ある、アメリカ最大の4年生大学システム「カリフォルニア州立大学システム」は秋もオンライン授業を続行すると発表。アメリカでは今、トランプ氏以上に国民に信頼されているファウチ博士の考えを支持した判断となった。
今回、イタリアの医師チームが新型コロナが「川崎病」似の症状を引き起こすエビデンスを提示したことも、学校の秋再開の判断に影響を与えるかもしれない。