まるで”竜巻”のような台風14号 中心接近で記録的な暴風のおそれも
”竜巻”のような構造の台風14号
台風14号はきのう9日(木)午前9時に、台風の勢力では最も強い、最大風速54メートル以上の猛烈な強さとなりました。きょう10日(金)午前9時現在、中心気圧935hPa、最大風速55メートル、最大瞬間風速75メートルの猛烈な勢力で、フィリピンの東海上を西北西に進んでいます。
この台風の特徴は、何といっても猛烈な強さということが一番だと思いますが、猛烈な強さのわりにはとてもスケールが小さいことも挙げられるかと思います。
現在の暴風域は、上図赤い円で示されるように、半径わずか85キロ(直径170キロ)しかなく、台風の大きさを示す強風域、黄色い円も半径165キロ(直径330キロ)しかありません。
後述しますが、猛烈な強さに発達した台風としては、過去に数える位しかないようなとてもコンパクトな構造をしている台風と言えそうです。(現在の状況)
とは言え、これが逆に危険極まりない構造をしているとも言えるのです。
現在の中心付近の最大瞬間風速は75メートルで、これは気象庁が定めている風の強さと吹き方の60メートル以上の基準を優に超え、竜巻の風の強さを定めた日本版改良藤田(JEF)スケールではJEF3に相当する烈風となります。
大きな台風ならば台風の中心が離れている所からじわじわ風が強まるものですが、これだけスケールが小さくて猛烈な強さだと、わずか数時間のうちに急激に竜巻に襲われるような烈風に見舞われてもおかしくない状況となります。
いわば”竜巻”のような台風と言ってもいいのかもしれません。
大きな台風ならば、長時間、広範囲で暴風が吹き荒れるため、もちろん警戒は必要ですが、今回の台風14号のようなスケールでは、広範囲ではないものの、中心が近付く所では、狭い範囲ですが、甚大な被害が発生することがあるため、どちらの構造の台風が危険かは言及することができないでしょう。
最新の予報円で、もし台風14号が東側のコースを北上した場合、与那国島や石垣島などの八重山地方がこの”竜巻”のような台風の襲来を受けることになり、厳重な警戒が必要です。
猛烈だが非常にコンパクトな台風14号
参考までに、同じく一時的に猛烈な勢力となり、東日本や東北地方に甚大な災害をもたらした2019年の台風19号と現在の台風14号のスケール感を比べてみました。
台風19号は大型で猛烈な勢力に発達しており、この時点での暴風域は半径240キロ(直径480キロ)ありましたから、現在の台風14号の強風域さえもスッポリと収まってしまう暴風域のサイズです。
ただこれが特に大きいのかというとそういうわけでもありません。
統計がある1977年以降で、筆者が調べたところ、猛烈な強さとなった台風は合計101個あり(今回の台風14号は除く)、これらの暴風域の最大直径の平均は約450キロありましたので、上記台風19号の実況がほぼ平均的な暴風域の大きさを示していると言えます。
一方、101個の内、現在の台風14号のように暴風域の直径が200キロに満たないような台風は、わずかに4個しかありませんでした。このことからも現在の台風14号は、過去にも数える位しかないような猛烈だけど非常にコンパクトなサイズの台風だと言えそうです。
参考:国立情報学研究所(デジタル台風)