第8波の新型コロナ死亡者数、実際はもっと多い?
新型コロナ第8波の累計死亡者数が1万5,000人を超え、第7波の累計死亡者数を超えました。第8波はまだ波の途中にあり、さらに死亡者数が増えることは確実です。皆さんが思っているより新型コロナの死亡者数はもっと多いのかもしれません。
すでに第7波の累計死亡者数を超える
新型コロナ第8波の入院・死亡のほとんどは高齢者で占められています。
高齢者施設クラスターからの入院が多く、第7波よりもさらに平均年齢が高いことから、亡くなる患者さんが多いです。
第8波の累計死亡者数は1万5,000人を超え、過去最多の死亡者を出した第7波の累計死亡者数を超えています(図1)。まだ波の途中であることから、今後さらに死亡者数が増えることが予想されます。
感染症の中期的死亡
新型コロナに限った話ではありませんが、感染症というのは、急性期だけでなく、こういった中期的な死亡も起こりえます(図2)。
2類感染症の結核も同じで、結核は治ったはいいが、寝たきりになってしまい、その後色々な疾患を併発して数か月後に亡くなられることがあります。
感染症を契機にしているが、色々な疾患を合併してしまい、少し後になって死亡したものを、感染症による死亡として含めるのかどうかは実は判断が難しいのです。
特に第8波では、ウイルス性肺炎よりも誤嚥性肺炎・細菌性肺炎の合併が多く、これまでの新型コロナによる死亡とは少しイメージが異なります。
心血管系疾患などその他の疾患を併発したり、基礎疾患が悪化して施設に戻れないほど老衰が進んでしまったりすることも多く、新型コロナが引き金となっている水面下の死亡者数はもっと多いかもしれません。上述したように、この中期的な死亡は、新型コロナの死亡者数として計上されていません。
なので、皆さんが思っているより新型コロナの死亡者数はもっと多いのではないかと私は考えています。
実際の死亡者数はもっと多い?
「療養期間中に新型コロナ患者が死亡したとき」に死亡の届け出がなされています。
厳密な死因を問わないため、「新型コロナではない死亡も新型コロナにしている」と批判されることがありますが、そこまで的外れなラベリングは実際にはおこなわれていません。
新型コロナによって寝たきりになり、ある程度の期間を経て最終的に老衰のようにして亡くなられる場合、メディアで報道されている死亡者数として計上されていない可能性があります。
療養期間を終えたにもかかわらず、徐々に悪化して基礎疾患や誤嚥性肺炎が悪化して亡くなった場合、主治医は新型コロナが影響したと考えて診断書を書きますが、これは人口動態統計のほうへ反映されます。個人的には、こちらのほうが新型コロナ死亡の実態に近い印象を持っています。
厚労省の2022年1月~8月の新型コロナの死亡者数合計は2万1,487人ですが、人口動態統計では同時期の新型コロナの死亡者数は2万6,336人となっています(図3)(1)。結構差がついていますね。
つまり、現在メディアで耳にする新型コロナ死亡者数は過少に見積もられており、療養期間が短縮された現在、もしかするとさらに死亡者数を過少評価している可能性があります。
ピークは過ぎた?
1日感染者数がまだまだ多く油断できない状況ではありますが、先行指標である東京都発熱相談センターにおける相談件数は、6,000件台をピークにして減少傾向にあります(図4)。
このままピーク越えになってくれるとありがたいのですが、アメリカで猛威をふるっているXBB.1.5が懸念事項です。この変異ウイルスが第8波の後半で拡大してくると、第6波がBA.1とBA.2の合成波になったように、二峰性の長い波になる可能性があります。
今後、第7波後半よりも高い新規感染者数で波の上下を繰り返すとなると、相当な期間の医療逼迫が予想されます。
(参考)
(1) 人口動態統計月報(概数)(令和4年8月分)(URL:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/m2022/08.html)
(2) 東京都発熱相談センターにおける相談件数.(URL:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/cards/number-of-reports-to-tokyo-fever-consultation-center/)