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ストレスだらけの新米教師役で主演の生田絵梨花 「考えすぎてがんじがらめ」からの脱却

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『素晴らしき哉、先生!』に主演する生田絵梨花(C)ABCテレビ

生田絵梨花が地上波で初主演する連続ドラマ『素晴らしき哉、先生!』が明日スタートする。2年目の新米教師を演じているが、ヒロイックな主人公でなく、過酷で理不尽な教育現場でストレスを抱え、退職を決意しながら担任を持たされる役どころ。「教師だって人間なんだよ!」と叫んだり、感情の起伏が激しい。乃木坂46時代から持ち前の歌唱力でミュージカルでも活躍し、ピアノの腕前も抜群など、才色兼備の優等生イメージが強い生田が、振り切って今までにない顔を見せている。

葛藤や板挟みで大変な方へエールになれば

――自分で好きだった先生もののドラマはありますか?

生田 『女王の教室』はとても好きでした。でも、今回演じる笹岡りおはあの先生とは真逆で、へっぽこな感じですね(笑)。

――生徒の問題をバッサリ解決していくような先生でもなくて。

生田 先生の話ではあるんですけど、学校生活だけでなく、家族の話、恋人の話もあったり、1人の人間としての生き方が描かれていて。きっと誰でも、仕事場や学校での自分と素の自分との葛藤で揺れ動いたり、いろいろな人間関係で板挟みになりながら、生きてらっしゃると思うんです。大変なのは自分だけじゃない、完璧は無理だとか、少しでも共感してもらえて、観る方へのエールになったらいいなと思っています。

(C)ABCテレビ
(C)ABCテレビ

「人間なんだから」はよく思うことです

――生田さん自身、職業は違っても、りおと同じような気持ちになることもありますか?

生田 「教師だって人間なんだよ!」というのは、私もこの仕事をしながら、よく思うことではあります。たとえばステージに立ったり、カメラ前で歌ったりするとき、自分の中では気持ちを鼓舞しながら、精いっぱいやっているんです。それを「全然緊張してないね」と言われたりすると「いや、いや! 緊張します。人間なんだから」となったりはします。

――生田さんは何でもできると思われがちですよね。

生田 先生方は学校の中だけでなく、街でたまたま生徒や保護者に見られたときも「先生なのにいいんですか?」と言われることは、今回のドラマの描写にも出てきますし、リアルによくあるそうなんです。それで普段も行動に気をつけていると、本物の先生もおっしゃっていて。このお仕事をしていても、そこは一緒で、親近感を覚えました。

ストレス発散には辛いものを食べたり

――りおは理不尽な教育現場でストレスフルな毎日を送っていて、愚痴をSNSの裏アカで吐き出したりしています。生田さんはストレス発散やうさ晴らしで何かすることはありますか?

生田 時によって違います。ひたすら食べるときもあれば、ワンちゃんや友だちの赤ちゃんと触れ合って癒しをもらうときもあります。自然の場所に行ってリセットしたりもします。

――ひたすら食べるときはどんなものを?

生田 だいたい辛いものですね。火鍋とかユッケジャンとか。

――りおは授業の他に生徒のトラブル処理も押し付けられたり、物理的にも相当忙しそう。生田さんは仕事で充実した日々かと思いますが、昔から音楽活動と舞台やドラマを並行されたりもしていて。体がキツいことはないですか?

生田 全然ありますけど、耐性は持っていると思います。体力に関しては、時間があればジムに通っています。日々撮影が立て込むと行けないので、ひたすらサプリでビタミン摂取をします。

おいしいごはんが日々の生きがいに

――食生活にも気をつかっているんですか?

生田 お弁当ばかりになると、片寄りますから。でも、今回のドラマのお弁当は素晴らしいんです! 野菜が入っていたり、チョイスが抜群。お弁当担当の方が、私たちのモチベーションが少しでも上がるように、大事に選んでくださって。私自身、おいしいごはんは日々の生きがいなんです。いつも満面の笑みで「ごちそうさまでした」と言えるお弁当に、励まされています(笑)。

――どんなメニューなんですか?

生田 オリジナリティがあります。そもそもお弁当に野菜が入っているだけで、すごくありがたくて。

――普通は肉か魚かの二択が多いようですね。

生田 お弁当屋さんのお弁当というより、洋食屋さんのテイクアウトみたいだったり。実際に餃子のテイクアウトをしてくださることもあって、すごく嬉しいです。

頭の中からは生まれなかった感覚を

――生田さんは囲み取材での定番的な質問にも、ひとつひとつすごく考えて、言葉を選んで答えられていました。役について考えるときはなおさらでしょうから、頭の中が途轍もないことになりませんか?

生田 そうなんです。考えすぎてしまうタイプです。煮詰まって、思考にがんじがらめになってしまうことが多いんですけど、この現場で初めて、やってみて「あーっ!」と発見することがありました。考えることは考えても、頭の中からは生まれなかった感覚を、たくさん教えてもらっている感じがします。

――考えすぎて答えが出なければ、そのままで挑んでみるように?

生田 自分だけで何とかしようと思わず、とにかく相手役の方とのやり取りに集中してみたり、どうしようもならなそうだったら、とりあえず動いてみたり。人の話を聞かせてもらうときも、1人にさせてもらうときもあって、そこは状況によりけりです。

自分の本音に耳を傾けるようになりました

――りおは「若手だからってこき使いやがってよ」とか「あのガキ、遠慮しろよ!」などと荒れたり、感情の起伏が激しくて。生田さんのイメージを覆す表情も見せています。

生田 感情の放出の仕方が大きいですね。ポジティブな方向にも、ネガティブな方向にも。悲しさや悔しさをガッと出すとき、うまく自分とコネクトさせられなくて、6時間くらいトライさせてもらったこともありました。孤独になりそうな瞬間がたくさんありましたけど、葉山(奨之)さんや桐山(蓮)さんから、役者として気持ちがわかると声を掛けていただいたり、スタッフの皆さんがずっと待ってくださったり、温かみをすごく感じた1日でした。

――そうした起伏を表現するために、意識することもありますか?

生田 自分の本音に耳を傾けるようになりました。りおは感情に素直で、愚痴が出たり、笑っていてもしんどいとか、人間らしい面をすごく持っていて。私はそういう感情を、無意識に麻痺させてしまうところがあるんです。まず自分で自分に制限を掛けないことで、りおの表現を探っていたりはします。

車の中で2~3時間ワーッと言うこともあります

――それで振り切った感じになっているわけですね。

生田 予告映像から「今まで見たことがない感じがする」と、よく言われました。でも、現場の方たちには「こっちが素じゃないの?」と言われていて(笑)。お芝居ではあまり表現してなかったことですけど、やってみると意外としっくり来て、自分でも驚いています。考えてみたら、私もお仕事で理想があって、頑張っても無理だったとき、帰りの車で2~3時間、1人でマネージャーさんにワーッと言うことがあります(笑)。それを仏のような顔で聞いてもらっていますけど、りおが愚痴っているシーンがしっくり来る理由は、そこだったかもしれません。

――意外とりおとの共通点があったと。

生田 こんなに台詞が多いのも初めてで、ヒーヒー言いながら覚えていましたけど、皆さんと作品世界に入ったら、不思議と自分から湧き出た言葉に思えたりします。あと、りおがかなり酔っぱらったシーンがあって、上手いと誉めてもらいました(笑)。今まで私が見せたことのない一面を、このドラマでたくさん引き出してもらっています。

――地上波の連続ドラマでは初主演なんですよね。

生田 決まったときは嬉しいのはもちろんですけど、それを上回ってしまうくらい、「大丈夫かな。自分に務まるかな」という不安が大きくて。役回り的にも先生ということで、ハードルが高く感じました。その不安もりおに重ねて、体にも心にも汗をかきながら、全身でぶつかっている毎日です。

沼にハマっても絶望せずに進むように

――『素晴らしき哉、先生!』で、りおは教師として挫折寸前から立ち直っていきます。そういうような経験は、生田さん自身にはありますか?

生田 挫折というか、沼に入って抜け出せないことは、よくあります。お芝居だと自分の心を使うので、日々の生活でも切り替えができなくて、ずーっと引きずってしまう。役を引きずるというより、自分が沼の重くてダルい感じのままになってしまうんです。

――どんな作品でそうなったんですか?

生田 作品ごとに毎回、そうなっているかもしれません。

――そこから、どう立ち直るんですか?

生田 以前は沼ったら絶望していて、どんどん沈んでいってました。バタバタすることで、より沼にハマってしまったり。今は沼ったまま、どうしようかととりあえず進んでみたり、その沼の温度を感じてみたりしています。

――今まで何だかんだと抜け出してこられたから?

生田 というより、沼ってしまったら、結局は何をしても抜け出せないんです。だから受け入れて、そのまま歩いてみる。そこは自分が変わってきたかなと思います。

太田プロダクション提供
太田プロダクション提供

Profile

生田絵梨花(いくた・えりか)

1997年1月22日生まれ、ドイツ出身。2012年に乃木坂46の1期生としてデビューし、2021年に卒業。主な出演作はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』、『レ・ミゼラブル』、『モーツァルト!』、『MEAN GIRLS』、ドラマ『PICU 小児集中治療室』、『こっち向いてよ向井くん』、『アンメット ある脳外科医の日記』、映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』、『Dr.コトー診療所』など。ドラマ『素晴らしき哉、先生!』(ABC・テレビ朝日系)に主演。

『素晴らしき哉、先生!』

8月18日スタート

日曜22:00~ ABC・テレビ朝日系

公式HP

(C)ABCテレビ
(C)ABCテレビ

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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