なぜバルサで混乱が生じているのか?ギュンドアン発言、アラウホの退場…CL敗退で訪れた危機。
ビッグマッチを落とした。もう、後には引けない。
チャンピオンズリーグ準々決勝、バルセロナはパリ・サンジェルマンに敗れた。ファーストレグを3−2で制していたバルセロナだが、セカンドレグで1−4と敗れ、ベスト8敗退が決定している。
「失望している。僕は非常に失望しているよ。(ラウンド突破は)僕たちの手中にあったんだ。でも、僕たちはパリ・サンジェルマンにそれをプレゼントしてしまった。とても簡単な形でね」とセカンドレグの試合後に語ったのはイルカイ・ギュンドアンだ。
「これを言うのは厳しい。けど、あの決定的なシーンでは、絶対にボールに触れられると判断しなければいけない。あの場面で、ボールにタッチできていたかは分からない。ただ、僕は失点、あるいはGKとの1対1の決定機を明け渡すほうが良かったと思う」
ギュンドアンが言及しているのは、30分のシーンだ。パリSGの攻撃でブラッドリー・バルコラが抜け出し、それを止めようとしたロナウド・アラウホがファール。一発退場を命じられた。
バルセロナは10人になり、苦しんだ。結果的には、そこから4失点を喫して、敗退が決まった。
問題のシーンは物議を醸した。ジャッジの是非(レッドカードか否か)はもとより、ギュンドアンが語るように、アラウホがタックルに行くべきだったかどうかなど、欧州の複数メディアで多角的な検討がなされている。
ただ、重要なのは、「なぜその現象が起きたか」である。そこには、パリSGの戦略と戦術があった。パリSGはセカンドレグで、前線の配置を変えてきた。左WGにバルコラ、CFにキリアン・エムバペ、右WGにウスマン・デンベレと3トップを並べた。守備の際、パリSGはバルコラとエムバペが2トップ化。エムバペを右に回して、パウ・クバルシの前に立たせて、ロベルト・レヴァンドフスキへのフィードを封じた。
クバルシからのボールの出口が塞がれ、バルセロナのパス回しは外循環になる。苦しいなかで何とか縦パスを入れようとしたアラウホのパスがミスになり、パリSG側のカウンターが発動。つまりこれは、ルイス・エンリケ監督の狙いだった。
波紋を呼ぶ場面があると、とかく過剰に反応しがちになる。だがそういった時こそ、“サッカー的に観”ることが肝要だ。
セカンドレグでは、パリSGがプレスの形をしっかりと準備してきた。前線からのプレッシングを嵌めて、エムバペ、デンベレ、バルコラのスピードを生かして、ショートカウンターを炸裂させる。そのプランが当たり、パリSGがラウンド突破を決めたのである。
■ロッカールームの雰囲気
冒頭のギュンドアンのコメントに対して、アラウホは「いま自分が考えていることは言わないでおきたい」と話すにとどまっている。
「ロッカールームのなかで、守るべき価値と規律がある。でも、僕は彼と個人的に話をしたいと考えている」
ギュンドアンは昨季、マンチェスター・シティで3冠を達成した。チャンピオンズリーグ、FAカップ、プレミアリーグで優勝に貢献をして、この夏、満を辞してバルセロナに加入している。その選手の発言には、重みがある。また、そういった経験やメンタリティが買われて、バルセロナからオファーが届いたという経緯もある。
また、ギュンドアンはドイツ人だ。犠牲心、自己批判の精神というのは、長くスペインでプレーしてきたウルグアイ人のアラウホやバルセロナの選手たちとは異なる向きがある。
いずれにせよ、バルセロナはCL敗退が決まった。そして、今週末には、レアル・マドリーとのクラシコが控えている。
マドリーとの勝ち点差は8ポイント開いているが、クラシコはクラシコだ。ここでバルセロナが勝てば、ラ・リーガ優勝の望みはつながる。瓦解を食い止めるためにも、負けられない試合が続く。