米、カラギーナンを有機食品から排除
人の健康への影響が懸念されているにもかかわらず、アイスクリームやゼリー、ドレッシングなど様々な加工食品に使われている食品添加物のカラギーナン。このカラギーナンを有機食品に使うこと禁止する決定が、米国で下された。
欧州連合(EU)はすでに幼児用粉ミルクへの使用を禁止しており、カラギーナン排除の動きが国境を越えて静かに広がり始めた格好だ。日本では今のところ禁止措置はとられていないが、自治体や業者の中には自主的に使用を控えているところもあり、安全性をめぐる議論が改めて出てきそうだ。
発がん性の疑いも
米農務長官の諮問機関である「全米有機認証基準委員会(NOSB)」は11月17日、カラギーナンを有機食品に使用可能な原材料リストから外す議案を賛成多数で可決した。農務省による最終決定は2018年後半になる見通しだが、消費者団体は、この決定を高く評価している。
カラギーナンは、紅藻類からアルカリ処理によって抽出。液体が分離するのを防いだり、液体を固めたりする作用があり、主に「増粘剤」や「安定剤」、「ゲル化剤」として使われる。
もともと天然由来のため安全とのイメージもあるが、動物実験などの結果、炎症性大腸炎や結腸がんなどの病気を引き起こす可能性を以前から指摘されてきた。
WHOは「安全」
世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)の合同専門家会議は、1980年代に毒性試験結果に基づくカラギーナンの評価作業に取り掛かり、2001年、事実上「安全」との判断を下している。
だが、カラギーナンの安全性をめぐる論争は収まらず、EUは、独自の判断で幼児用粉ミルクにカラギーナンを使うことを禁止。米国でも、多くの消費者団体がカラギーナンの食品への利用に強い懸念を表明していた。
今回のNOSBの決定は、必ずしも、カラギーナンを「危険」と判断したわけではなく、過去の様々な研究結果を検討した結果、「安全であると確信できなかった」ため。つまり、疑わしきものは使用せずという「予防原則」に基づく判断だった。有機食品は安全性がより重視されるだけに、かりに一般の食品には認めても、有機への使用は認めるべきではないとの世論に配慮した形だ。
消費者の不安に配慮し、すでにカラギーナンの使用を中止しているメーカーも多いが、NOSBの決定で、脱カラギーナンの流れが加速しそうだ。
日本でも使用控える動き
カラギーナンに関しては、日本でも以前から、消費者団体などがその安全性に疑問を呈しており、自治体や業者の中には自主的に使用を控える動きも出ている。
例えば、兵庫県尼崎市は、学校給食にカラギーナン入りのゼリーを採用しない方針を決めている。日本生活協同組合連合会は、カラギーナンを独自に決めた「使用制限添加物」に分類し、使用をできるだけ制限するよう努めている。
日本政府はいまのところ、カラギーナンに関し特別な使用基準は設けていない。