「大怪獣ガメラ」はパブリックドメインか?(追記あり)
「GAMERA rebirth」なるガメラの新作映画がNetflixにより世界配信予定だそうです(参照記事)。まだ監督もキャストも公表されていませんが、ギレルモ・デル・トロ監督の「パシフィック・リム」のように怪獣映画リスペクトかつ現代的視点でも胸熱の映画になることを期待します。
さて、この機会に、大映による1965年公開の初のガメラ映画「大怪獣ガメラ」の著作権が米国ではパブリック・ドメイン(PD)になっているという説について調べてみました。大映の倒産により米国ではPDになっているという説(たとえばこちら)と、経営悪化により大映が海賊版に権利行使する余裕がなくなっただけであって著作権としては残っているという説(たとえばこちら)が見られます。なお、先に書いておくと、調べ出してから後悔するほどややこしい話でした。
まず、日本について見てみると、映画の著作物の保護期間は2004年に公開後50年から70年に延長されましたので、「大怪獣ガメラ」もこの恩恵にあずかり、著作権切れは2035年になります。こちらはシンプルです。
米国はそうシンプルではありません。そもそも、「大怪獣ガメラ」(Gammera the invincible)は1965年(米国では1966年)公表の作品なので旧著作権法が適用になります。米国旧著作権法はベルヌ条約加盟前ということもありクセがすごく、著作権による保護および権利維持のために著作権表示・登録・更新という手続が条件になることがあります。1965年(米国では1966年)の発行であれば、1978年の新著作権法への切り替えにより、発行の年から95年間著作権を維持することが可能ですが、そのためには発行から28年目に延長手続が必要です(米国著作権法304条)。
米国著作権局のサイトで著作権登録の履歴をサーチしてみると、大映を請求人とする記録としては、たとえば「羅生門」(1952年発行)の更新はありますが、「大怪獣ガメラ」の更新はないようです(他の請求人による更新の情報もありません)。これにより、米国における「大怪獣ガメラ」の著作権は1994年(1966年+28年)で保護期間満了になっていると推測する人もいそうです。1994年というと大映の映画事業を引き継いだ徳間書店が経営難に陥り始めた時期ですのでそれどころではなかったのでしょうか。「大怪獣ガメラ」PD説はここから来たのかもしれません。
しかし、「大怪獣ガメラ」は米国外で最初に発行(公開)された著作物であるという点に注意が必要です。コーネル大学図書館のウェブサイトによると、このような場合には、仮に更新がされていなくても、 最初の発行国(日本)で1996年1月1日時点にパブリックドメインになっていなければ著作権は発行から95年経過まで存続するようです。
さらに調べるとこれは1994年に制定されたウルグアイ・ラウンド協定法によるものであり、正確に言うと、最初に米国外で発行された著作物の著作権が米国内で更新手続をしなかったこと(あるいは、その他の手続上の要件に従わなかったこと)により米国内で権利切れになっていても、1996年1月1日時点で(最初の発行国でPDになっていない限り)権利が自動的に回復されるというとのことのようです(米国著作権局による通達)。
ということで、結論としては、映画「大怪獣ガメラ」の著作権は日本でも米国でも権利満了していない(PDではない)ということだ思います。権利者は、大映の事業を引き継いだKADOKAWAと思われます。追記:Wikipediaの英語版によればSandy Frank Film Syndicationという会社に著作権譲渡されているようです。(何か私の知らない事情があるかもしれないので断定形は避けさせていただきます)。
追記:すみません、米国映画の”Gammera the invincible”は、日本の「大怪獣ガメラ」の英語吹替版かと思って書いてしまいましたが、そうではなく、特撮部分だけを流用し、ドラマ部分は米国で撮り直したもののようです(参照Wikipediaエントリー)。両者を違う作品と解釈すれば、”Gammera the invincible”は、米国内で最初に公開されたと思いますので、上記のウルグアイ・ラウンド協定法は適用されずPDになっている可能性があります。一方、日本の「大怪獣ガメラ」については上記の説明通り米国でも著作権は存続しているものと思います。