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ベジェリン獲得には失敗。セメド確保はD・アウベス後釜を探し続けるバルサの「救済策」となるか。

森田泰史スポーツライター
CLでは過去ドルトムントと対戦。セメドはバルサでの挑戦に臨む。(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

今夏アーセナルDFエクトル・ベジェリン獲得に乗り出していたバルセロナだが、カンテラーノを復帰させる話は頓挫している。名誉挽回すべく、ロベルト・フェルナンデスSD(スポーツディレクター)が選んだのは、ベンフィカのポルトガル代表DFネルソン・セメドだった。

■近年の大型補強

バルサは近年補強に大金を投じている。この3年間で投じた資金は3億4300万ユーロ(約442億2470万円)。巨額を費やして15選手を獲得した。特に昨夏は大型補強を行い、移籍金の総額は1億2275万ユーロ(約158億3400万円)に上っている。

ただ昨夏の大型補強には、2つの大きな理由があったと考えられる。ひとつは、前年の夏の移籍市場でFIFAに補強禁止処分を受けていたこと。もうひとつは、宿敵レアル・マドリーのチャンピオンズリーグ優勝の影響だ。

長く“2強時代”を続けてきた両クラブのライバル関係は、補強の差配にも影響を及ぼす。実際、バルサがリーガエスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグのトリプレテ(3冠)を達成した翌夏、マドリーは巨額の資金を投じてFWクリスティアーノ・ロナウド、カリム・ベンゼマ、MFカカーを獲得している。

フロレンティーノ・ぺレス会長が第二次政権で再び「銀河系軍団」の形成に走ったように、バルサは昨夏大量に選手を引き入れた。だが獲得した6選手で、納得のパフォーマンスを見せたのはDFサミュエル・ユムティティだけ。要は補強に失敗したわけである。

■SB獲得に38億円の投資は妥当なのか

そして今夏、「派手さ」以上に「正確性」が補強に求められる中で、ロベルトSDがまず取り掛かったのがベジェリン獲得だった。しかしながらアーセン・ヴェンゲル監督率いるアーセナルは4000万ユーロ(約51億円)から5000万ユーロ(約63億円)とされる高額な移籍金を頑なに要求し、バルサの希望を挫いた。

7月に入り、アーセナルに対してベジェリン譲渡を検討する猶予を10日間ほど設けたといわれるバルサだが、ついに忍耐の限界が訪れる。13日、ラウール・サンジェイFD(フットボールディレクター)、幹部のハビエル・ボルダス氏を伴ってポルトガルに赴いたロベルトSDはセメドの移籍でベンフィカと合意。念願の右サイドバック獲得を成就させた。

バルサは固定額3000万ユーロ+成果報酬額500万ユーロの移籍金をオファーしてベンフィカを説き伏せている。ひとまず支払う移籍金3000万ユーロ(約38億円)は、ベジェリン獲得に必要とされた移籍金に比べれば、安上がりに見える。が、多角的に見ればこれは決して安価な補強ではない。

例えば、サウサンプトンは2015年夏に650万ユーロ(約8億3000万円)でスポルティング・リスボンからセドリク・ソアレスを獲得している。セドリクはポルトガル代表の右SBのレギュラー。バルサは代表でセドリクに定位置を譲るセメドを、およそ5倍の移籍金で引き入れた格好だ。

■D・アウベス並の期待値

レアル・マドリーが、2011年夏にDFファビオ・コエントラン獲得に3000万ユーロを支払った時は、話題を呼んだ。サイドバックとしては非常に高額。そんな批判があったからだ。

コエントラン獲得の3年前、2008年夏にDFダニエウ・アウベス獲得を望んだバルサは固定額2950万+報酬額600万ユーロの移籍金でセビージャと合意している。サイドバックの選手としては当時史上最高額の移籍金だった。

だがD・アウベスは8年間バルサの右SBとして活躍し、391試合出場21得点102アシストで14タイトル獲得に貢献。投資額を回収するパフォーマンスを見せた。

D・アウベスのように8年以上バルサの右SBを務め、数多の奪冠に貢献する。それがバルセロニスタのセメドに対する期待値だとしたら、余りに高過ぎるのではないだろうか。

一方で、ビッグクラブで選手の成長を待つ時間はない。セメドに求められるのは、SBでありながら攻撃に深く関与して勝利につながるプレーをすること。シーズン開幕から、肥えたバルセロニスタの厳しい目がセメドに注がれることになりそうだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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