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アマゾン、ついにPrimeの米国会員が1億人を突破 なぜ、そんなに人々を魅了するのか?

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 少ない注文金額でも配送料が無料になったり、急ぎ便サービスも無料で利用できたり、さまざまなデジタルコンテンツが利用し放題になるアマゾンの会員制プログラム「Prime」。日本でも利用者が増えているが、米国では、その数が、ついに1億人の大台を突破した。

米国のPrime会員、過去3年で2倍に

 米国の市場調査会社CIRP(コンシューマー・インテリジェンス・リサーチ・パートナーズ)がまとめたレポートによると、同国では昨年(2018年)10〜12月時点の会員数が、1億100万人となり、1年前から10%増加した。

 この伸び率は、ここ最近低下傾向にある。かつて40%ほどあった伸び率は、現在、8〜12%程度で推移している。

 ただ、会員数は、過去3年間で2倍に増えている(図1)。2013年10〜12月時点の2600万人と比較すると、ほぼ4倍である。今の膨大な会員規模を考えると、10%という伸び率は、目覚ましい数値だとCIRPは指摘している。

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 1億100万人とは、アマゾンの米国顧客の62%が会員であることを意味する。また、依然、1人の会員が1年間にアマゾンで買い物をする金額は平均1400ドルで、非Prime会員(600ドル)の2.3倍だ。アマゾンはロイヤルカスタマーの創出に成功しているという。

米国の年会費は119ドルだが、実質は784ドル?

 同社がPrimeを米国で始めたのは2005年2月。当初は、79ドルの年会費で、商品を2日後に届ける配送サービスを追加料金なしで利用できるようにしたり、翌日配送便の料金を割り引いたりする特典で始めた。

 また、映画・テレビ番組を無料で視聴できるストリーミングビデオサービスや、アマゾンの電子書籍端末やタブレット端末を持つPrime会員が、電子書籍を無料でレンタルできるサービスなども提供。

 そして、同社は、2014年4月に年会費を99ドルに値上げ、昨年(2018年)5月には、これを119ドル(約1万3000円)に引き上げた。ちなみにPrimeの日本における年会費は3900円である。

 こうして、米国では、会費が上昇したにもかかわらず、会員は増え続けている。その要因として、米JPモルガンのアナリストは、Primeの実質的な価値の高さを挙げている。

 例えば、通常の配送サービス(即日、翌日、2日便)は年間で、125ドルに相当する特典だという。最短1時間以内で商品が届く「Prime Now」は同180ドル相当。

 映画・テレビ番組が見放題になるストリーミングビデオサービスは、同120ドル相当。電子書籍のレンタルサービスは同108ドル相当だと、JPモルガンは試算している。

 Primeには、このほか、音楽聴き放題のストリーミングサービスや、オーディオブック、写真のクラウド保存サービスもあるが、これらの実質価値を加えていくと、合計は784ドルとなり、119ドルという年会費は割安だとJPモルガンは指摘している。

ますます増え続けるPrime特典

 アマゾンは昨年、傘下の高級スーパーマーケット「ホールフーズ・マーケット」の商品を即時配達するサービスと、ホールフーズの商品をネットで注文したあと、店舗の駐車場で受け取ることができるサービスを始めた。

 このほか、最新テクノロジーを活用し、顧客の不在時などに商品を、宅内や自動車の中に配達するサービス「Key by Amazon」も始めた。これらはすべてPrime会員限定である。こうしてアマゾンは、特典を増やし続ける戦略で、顧客の囲い込みを図っている。

  • (このコラムは「JBpress」2019年1月22日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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