【歴史認識問題から通貨スワップまで】北朝鮮の“代弁国”はなぜこれほど態度が大きいのか
竹島上陸に対して、日本は8回にわたって抗議した
韓国の国会議員団が10月22日、竹島に上陸した。「正しい未来党」の李燦烈韓国国会教育委員会委員長らよる国政監査権の行使だという。
今年に入って韓国国会議員が竹島に上陸するのは、これで2度目になる。5月23日には「共に民主党」の沈載権韓国国会外交統一委員会委員長が警備隊を慰問するために上陸した。しかしこの時はひとりでこっそりと渡航したため、韓国メディアが報じたのは25日で、日本政府による抗議は28日と遅かった。
しかし今回は立法府による公務で、往復には韓国警察のヘリコプターが使用され、事前に大々的に韓国メディアが報じている。日本政府も10月10日に東京とソウルと北京で抗議した上、10月18日にはソウルで重ねて抗議。そして19日には東京で再三にわたって抗議し、22日には東京で金杉憲治アジア大洋州局長が金敬翰韓国大使館次席公使に、ソウルで水嶋光一在韓日本大使館総括次席公使が金容吉外交部東北アジア局長に抗議した。
にもかかわらず、李氏らは竹島上陸を決行。その背景に最近の韓国の暴走ぶりがうかがえる。
約束は破っていいのか
10月16日には在京韓国大使館に対する国政監査が行われ、来日した韓国国会外交統一委員会の面々が2015年の日韓慰安婦合意の交渉過程について追及した。
その中には「合意は国家間の約束であって、法的性格の条約ではない」や「“不可逆的”という言葉を入れたのは越権行為」といったとんでもない意見も出たようだ。しかしながら慰安婦合意が文書化されていないからといって、その法的効力に変わりがない。それは「条約に関するウイーン条約」第3条で確認済みだ。
だが韓国は康京和外交部長が「慰安婦問題を国際的に深刻な人権問題として発表する計画がある」と述べ、9月の日韓外相会談では日韓慰安婦合意に基づいて作られた「和解・癒し財団」の年内解散を河野太郎外相に伝えたとされる。また9月に就任したばかりの陳善美女性家族部長官は元慰安婦女性のための施設である「ナヌムの家」を訪れ、同財団の解散を示唆した。
あくまで自国の都合が優先
こうした行為を「単なるパーフォーマンス」と放置してはいけない。日韓両国の信頼関係に大きな亀裂を生じかねないゆゆしき問題だ。
混乱は竹島問題や慰安婦問題についてのみではない。韓国済州島で行われた国際観艦式で、旭日旗掲揚問題も勃発している。「参加国の国旗と韓国の国旗のみの掲揚」と参加国に伝えたために、国内法で旭日旗を掲揚しなければならない海上自衛隊の艦船は参加を見送らざるをえなかった。その一方で文在寅大統領が演説した韓国海軍の艦船は韓国国旗と異なる将軍旗を掲揚し、その矛盾ぶりを露呈させた。
韓国の暴走はこれらにとどまらない。読売新聞は10月20日、韓国・EU首脳会談後に採択されるはずだった共同声明が、北朝鮮の非核化への成果を盛り込みたい韓国の意向によって採択を見送られたと報道した。厳しい経済制裁を決めた国連の安保理決議など、北朝鮮に向けられる国際社会の目は厳しいが、韓国だけが逆行しているのだ。
おカネだけたかられる日本
その一方で、日韓通貨スワップ協定の話が浮上している。
韓国経済が大打撃を受けたアジア通貨危機を契機に2001年に20億ドルから始まった日韓通貨スワップは、野田政権時の2011年には700億ドルまで拡大した。しかし2012年8月の李明博大統領(当時)の竹島上陸で関係が悪化して2015年に終了。その後、再開案も浮上したが、2017年1月に釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置された事件で交渉は中断している。
日本が忘れてならないのは、このスワップ協定は日本のためではなく韓国を救うためだめのものである点だ。かつてスワップ協定を延長しようとした時、韓国銀行総裁は「日韓両国の利益に資するなら、延長してもよい」と高飛車に発言したが、菅義偉官房長官は定例会見で「(日韓通貨スワップは)日本の利益になるわけではない」とこれをぴしゃりと否定した。よってスワップ協定を再開するとしても、やはり日本の利益になるわけではない。
それどころか、文大統領が切望する北朝鮮の自由化が現実化すれば、その経済負担は日本が背負わせられかねないのだ。こうしたひとつひとつの事実をきちんと踏まえ、日本は韓国と付き合うべきだ。文大統領の笑顔に騙されてはならない。