大阪桐蔭が本塁打攻勢でV 履正社の夢砕く センバツ決勝
45年ぶりの同一都道府県勢同士の決勝となったセンバツは、大阪桐蔭が履正社を長打攻勢で破り、5年ぶりのセンバツ制覇(タイトル写真)。夏も合わせると、6度の決勝は全て勝利という新記録になった。履正社は、8回に3点差を追いつく粘りを見せたが、最後にエース・竹田祐(3年)が踏ん張れず、悲願の甲子園優勝はお預けとなった。
本塁打で幕開け
試合は桐蔭の1番・藤原恭大(2年)の先頭打者本塁打で幕を開ける。履正社の竹田が最も警戒していた打者だ。「振りが鋭く、出塁されるとビッグイニングになる」と試合前から話していたが、ここは後続を断ったから1点で済んだ思えばと切り替えやすい。しかし竹田は2回にも7番・坂之下晴人(3年)に高めのボール気味直球を左翼席へ運ばれた。思わぬ本塁打攻勢で主導権を渡した履正社打線は、桐蔭エースの徳山壮磨(3年)の速球に手が出ず、5回まで四球3つの無安打に抑えられる。グラウンド整備直後の6回表にも藤原の2本目のソロが飛び出し3点差。その裏の無死3塁を逃した段階で、履正社は敗色濃厚に映った。
履正社が意地見せ同点に
ここ8年、大阪からのセンバツ出場校は桐蔭か履正社。あるいは今回のようにアベック出場となって、地元でのライバル関係は定着している。昨秋は大阪大会準決勝で当たり、履正社が勝っていた。その意地が見えたのは8回の攻撃だ。2死から安田尚憲(3年)が安打でつないで、1,3塁とし徳山を攻める。ここで4番・若林将平(3年=主将)が3塁横を痛烈に抜く適時打で反撃開始。5番・濱内太陽(2年)が左中間を破って二者を還し、一気に追いついた。徳山は序盤から飛ばしていて、8回はやや制球に甘さがあったかもしれない。続く竹田を打ちとって、9回は、桐蔭・西谷浩一監督(47)が勝負に出た。
桐蔭・西谷監督の決断で決勝アーチ
9回に打順が回る徳山をネクストで待機させたが、1死2塁の勝ち越し機となって、迷わず西島一波(いっぺい=3年)を代打に送った。静岡との2回戦でも終盤に決勝打を放っている西島は、「準備はできていた。徳山の代打だったし、徳山が頑張っていたので」と166センチの小さな体全体で振り切ると、打球は左翼席に消えた。西谷監督も、「相手エースよりも先に徳山を降ろすのは、彼のプライドを考えるとやりたくなかったが、今日はみんなで戦うと決めていた。西島がベンチで自信を持って準備していたので、いかせた」と決断の理由を明かした。この日は打撃不振の根尾昂(2年)を、敢えて「ブルペン待機」という形で投手として起用する腹づもりだった指揮官にとっても、同点でマウンドに送るのは勇気がいったはずだ。その意味でも、西島の一発は値千金と言える。
故障の岩本含め3年生が頑張る
ガックリきた履正社の竹田は、その後も根尾に適時打を浴びるなど5点を失い、勝敗が決した。
9回の根尾は制球に苦しんだが、点差があって、最後は捕手の直球要求にも首を振り、「スライダーの方がゴロを打たせやすい。絶対、コントロールしてやろうと思った」と注文通りの遊ゴロ併殺にしとめた。投手層の厚さ、控え選手の勝負強さなどで履正社を上回った桐蔭が、9回に本領を発揮した試合だった。これで甲子園の決勝は、6回戦って全勝(春2、夏4)で、高校野球史上初の快挙だ。
最後に投げきった根尾や2本塁打の藤原、5試合で12安打と打ちまくった山田健太ら主力が2年生ということを考えると、どこまで強くなるのか、末恐ろしい。それでも西谷監督は、「僕は3年生のチームだと思っている」と言い切る。正捕手の岩本久重(3年)を骨折で欠き、福井章吾(3年=主将)を大会前に急きょ、コンバートした。岩本はベンチで記録員としてデータを提供し、声を出してナインを鼓舞した。客観的には、大きな戦力ダウンに見えるが、岩本の存在がチームの結束につながったように思う。「岩本の分まで、と思ってマスクをかぶった。二人三脚でやってきて、岩本に感謝している」と福井が言えば、西谷監督は、「福井には厳しい要求をしたが、徳山ともどももよくやった」と3年生バッテリーを称えた。
履正社に大きな試練
履正社は、3年前にも龍谷大平安(京都)と互角の戦いを演じながら敗れている。
今回も、悲願の初優勝はならなかった。岡田龍生監督(55)は、「悔しいが打力に差があった。投手も竹田がよく粘ってくれたが、代える投手がいなかった」と振り返った。桐蔭に水を開けられまいと、前チームは寺島成輝(ヤクルト)らの頑張りで、春に桐蔭を破り、夏の甲子園を射止めた(桐蔭との対戦なし)。このチームも秋は桐蔭を破り、近畿と神宮で圧勝していたが、甲子園の頂点だけはまだ極めていない。竹田は、「日本一になるためには、(桐蔭は)絶対に倒さないといけない相手」と夏を見据える。夏の大阪代表切符は一枚だけ。履正社にとっての本当の試練はこれからだ。