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トップリーグプレーオフ決勝進出。東芝、森田佳寿主将の丁寧すぎる(?)決意【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
赤いジャージィの前列1番右が森田。(写真:伊藤真吾/アフロスポーツ)

1月24日、東京は秩父宮ラグビー場。日本最高峰のトップリーグはプレーオフの決勝戦を迎える。2連覇中のパナソニックに挑むのは、3季ぶりのファイナリストとなった東芝。18日の両チーム共同会見を皮切りに、キャプテンの森田佳寿が端正な言葉で抱負を語っている。

帝京大学時代も、いまも続く大学選手権連覇期間の3季目にキャプテンを務めた。

チームを率いる岩出雅之監督には、「思考しながら話している」「それまでのキャプテンは時間をかけてリーダーシップを作っていたけど、森田は最初から(船頭の資質が備わっている)」と称賛された。

当時、クラブ全体へのスピーチの注意点を聞かれ、本人は「全部員がひとつになって戦うチームが強くて、自分もそうしたいと思っているので、必ず『全員で』といったワードを入れるようにしています」と答えていた。

東芝へは2012年度に入社。キャプテンを任されたのは昨季。指名した冨岡鉄平監督(当時ヘッドコーチ)は、2002~06年度の同部キャプテン時代に通算7つのタイトルを勝ち取っている。今度の決勝戦、森田はスタンドオフでの先発出場が予想とされる。

以下、各所での一問一答の一部。

(18日、都内での共同会見中)

「こんにちは、キャプテンの森田でございます。このファイナルでの勝利を目指して春から作ってきたチームです。こうして会見ができることを嬉しく思います。

また、相手は過去2シーズン、チャンピオンになられたパナソニックさんで。尊敬できるチーム。嬉しく思っています。パナソニックさんは、今年も優勝するにふさわしい力を有したチームを作って来られました。パナソニックさんが自分たちの現状に甘んじて、リラックスした状況でやってくれればいいのですが、精神面、技術面ともきっちりと準備してこられると堀江さんが仰られた(相手の堀江翔太キャプテンは「必死こいて頑張る」などと、気を引き締める意識を表明)。我々も負けてられないなと思っております。

我々が1年間をかけて何を作ってきたのか、落ち着いてその場その場でどういう判断をするのか。その積み重ねが結果になると思います。この試合、勝利にかける思いは我々が一番だと思っていますけれども、我々らしく決勝を迎え、80分間をいいものにしたいと思います。頑張ります。以上です」

――(当方質問)2015年12月12日、リーグ戦での直接対決は17―17の引き分け(秩父宮)。肉弾戦の手ごたえは。

「あの試合、我々はたくさんジャッカル(接点で相手のボールを奪うプレー)ができました。(フランカーのリーチ)マイケル(ワールドカップイングランド大会の日本代表でキャプテン)、(フランカーの)山本紘史が、個々の嗅覚やスキルや判断で我々に何度もチャンスを与えてくれました。ただ、あそこもギリギリの勝負でした。決勝では、もっと厳しい局面になる。あの時のように何度も何度もボールが奪えるとは考えていないです。ただ、ジャッカルだけではなく、1つひとつの接点での戦いが勝敗を決めると思っています。チームとしては重要視して取り組んでいきたいです」

(18日、共同会見後の囲み取材)

――会見中、冨岡鉄平監督が昨年の東芝の会計上の不備について発言。「いまだに解決せず、厳しい状況が続いています。そんななか、我々は何が表現できるのか。それは日本ラグビーが変革期を迎えるいま、先頭を走ること。さらに勝利をもって笑顔を作ること…。勝つための大義は明らかでございます」と決意を明かしました。

「色んな人たちに喜んでもらうために(ラグビーを)している。(好きなアーティストの)Mr.Childrenはライブをすれば一気に6万人を感動させられますが、僕たちも(試合会場で)2万人が集まるなか…東芝のファンはその半分の1万人かもしれないのですが、それでも、多くの人に喜んでもらえるのは貴重で嬉しいこと。そんななか、会社のなかで色々なことがあった。僕たちが勝つことで会社の何かが好転するかどうかはわかりません。ただ、勝つことで何かを感じてもらえるのだとしたら、それが僕たちのエナジーを生む大きな要因になります。会社を背負って…といった深刻なものはありませんが」

――チームは2008年度にも部員の不祥事がありましたが、その後、結束。優勝しています。

「今年の年明け、そのことを風化させないためにと冨岡監督から話がありました。もう、その時代を経験していない選手が半数以上もいるんですよね。当時、ラグビーを続けられるかどうかという場所に立たされて、会社や応援してくれる人にも支えてもらって、それで、いまの僕たちがある。そういった話は、毎年、あります」

(19日、東京都府中市の東芝グラウンドで。チームの練習後。以下、すべて当方質問)

――記者会見、お疲れさまでした。

「電車が大変でしたよね(18日は積雪に見舞われた)」

――きょうのグラウンドにも雪が積もっています。

「(周囲の人に)雪かきをしてもらって、何とか(練習を)やっています」

――今季のラグビーについて伺います。アウトサイドセンターのリチャード・カフィ選手、ヤマハとの準決勝(大阪は花園ラグビー場で、34-22と勝利)では3トライと好調でした。

「フォワードが崩してバックスが(点を)取るというのがラグビーの大まかな流れですが、我々のバックスとしてはただチャンスを待っているのではなく、フランソワ(・ステイン、フルバック)、カックス(カフィ)と外国人選手を揃えていて、バックスでのチャンスメイクも可能だと思っていて、それができるかどうかもあの日の課題にしていて。(カフィのトライシーンを)1こ1こ観ていくと、そこに繋がるまでのデコイラン(囮)の働き、パススキルといった細かい積み重ねであそこ(カフィが走るスペース)が空いているんです。もちろん、5人、6人を抜いた彼のランニングスキルはすごいのですが。乗っていますね」

――パナソニックの守備ラインの出方を受け、どんなアタックをしたいか。

「まぁ、あまり詳しくは言えないですが…。パナソニックさんはブレイクダウンの見極め(接点に入るかどうかの判断)がうまく、(グラウンド全体にタックラーが並ぶ)。簡単にスペースができることはない…。その辺にしてもらっていいですか?」

――大まかに、どんなプレーが重要になりそうですか。

「そうですね…。15人がきちっと立ってくる(皆が倒れている時間を減らし、スペースを埋める)ディフェンスに対して、何をするかは、試合を観てくださいということです」

――会見で話されていたジャッカル。レフリングとの相性も、成否のカギを握りそうですね。

「まぁ、ギリギリのところですからね(タックルの直後、いったん起き上がらずにボールへ絡んだと見なされるなどしたら反則を取られる)。レフリーは、人それぞれに傾向があります。基本的にはディフェンスの時に厳しく笛を吹かれることが多い。その意味では、(ジャッカルに関わる部分で)レフリーへの対策をするということはないです。ただ、注意するとしたらタックルの時の現象、ですね。タックルが(相手のランナーに)勝ったのか、負けたのかを判断する。それを受けて、(接点に他の選手が)入るのか入らないのかを判断する。我々もその点を頑張っていますけど、パナソニックもその見極めがうまいですよね」

――記者会見で「不正会計問題で…」という言葉がありました。その話はチーム内でもよくなされることなのですか。

「(笑いながら)不適切会計問題、です。常々ではありませんが、事あるごとにそういう話があります。僕たちもそれを感じて、やっています。最後、僕が座って話していたところ(会見後の囲み取材)にはいらっしゃいましたっけ?」

――はい。

「昨日言った通りですが、僕たちがラグビーをしている理由には、自分たちが勝利したいというものももちろんありますけど、それと同じくらい、あそこで雪かきしている方ですとか、家族など、支えてくれる方に『よかったね』と喜んでもらいたいというものがあるんです。自分たちの勝利が、少しでも力になる…とはならないかもしれないですけど、いまは、自分たちの勝利を通して伝えられるものが少しある時なのではないかと思っています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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