ノルウェー人10人に3人が「移民は不安定な社会情勢の原因」、「新しい隣人が移民」を嫌だと思う人は6%
2015年の冬に起きた難民申請者の大量流入。ノルウェー統計局SSBが行った最新の意識調査が発表された。
現地報道は、以前よりも多くのノルウェー人が、移民や難民に対して懐疑的になったという見方で報道。しかし、発表された数字は、外国人の筆者にはそこまでネガティブにはうつらなかった。
「とてもそう思う」と「そう思う」と答えた人の数
- 移民の多くは労働市場でなんらかの貢献をする
2015年 72% → 2016年 66%
- 移民の多くは、不安定な社会情勢の原因である
2015年 26% → 2016年 32%
- 移民の多くは社会福祉制度を悪用している
2015年 25% → 2016年 30%
- 移民はノルウェー人と同じようになれるように、できる限りの努力をするべき
2015年 44% → 2016年 51%
- 移民が新しい隣人としてやってきたら、嫌だなと思うか
思う
2015年 4% → 2016年 6%
思わない
2015年 94% → 2016年 92%
分からない
2015年 2% → 2016年 1%
- 移民とどれほどの交流を持っているか
全くない
2015年 21% → 2016年 28%
- 難民や難民申請者の滞在許可受理は、現在と比べてどうあるべきか?
もっと簡単であるべき
2007年 8% → 2015年 15% → 2016年 12%
現状維持
2007年 50% →2015年 50% → 2016年 51%
もっと難しくあるべき
2007年 39% → 2015年 29% → 2016年 33%
現地報道などは、今回の調査結果を「以前よりも多くの人が、移民に懐疑的になった」という目線で伝える。
しかし、統計局の調査を10年前のものとさらに全体的に比較すると、ノルウェーの人々の外国人に対する受け入れの考え方は、大きく変化していない。
ある程度の懐疑心は、欧州での現在の情勢を考えると、自然のものではないだろうか。
むしろ、昨年の騒ぎと、与党で右翼ポピュリスト政党である進歩党の大臣たちの過激な発言が、連日報道されているにも関わらず、それでも外国人への信頼感は、ノルウェーでは高い数字をキープしているように筆者は感じた。
92%の人々が、移民が新しい隣人としてやってきても、「嫌だと思わない」というのは、日本では出てくる数字だろうか。
進歩党のリストハウグ移民・社会統合大臣の過激な言説が報道やSNSで拡散される情勢を、左派政党などは、「世間に外国人への不信感と恐怖を広める」と、ひどく心配している。しかし、調査結果では、不信感としての数字の増加は、ほぼ一桁台に収まっている。
地元報道や統計局は、移民と全く交流を持っていない人の数が、昨年より7%増加し、28%となったことにも注目(問題視)している。しかし、そもそも10人中10人が、外国人と交流を必ず持たなければいけないのか、という疑問が残る。
調査対象者の支持政党によっても、もちろん数字は大きく変化する。統計局は、移民に最もフレンドリーな回答者の支持政党は、小政党、もしくは左派政党で、赤党、左派社会党、自由党、緑の環境党と発表(現地政党に詳しい人なら、意外と思うかもしれないが、左派最大政党の労働党はそこに含まれていない)。
また、「女性、高学歴、移民と交流の枠が広い人」ほど、リベラルな思想が強い傾向があるとされた。反対に、「男性、低学歴、移民と交流の枠が狭い人」ほど、反対の保守的な傾向を示す。
ノルウェーの左寄りの人々や報道陣が心配するほど、進歩党や欧州の不安定な情勢は、国民の深層心理をそこまで変えていないのでは、と筆者はこの数字から個人的に感じた。
Text: Asaki Abumi