Yahoo!ニュース

阪神・村上頌樹、パーフェクト投球で交代の賛否…上原浩治の見解は?

上原浩治元メジャーリーガー
東京ドームに詰めかけた阪神ファンからは「えー」という声があがったという(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 プロ野球阪神の村上頌樹投手が12日の巨人戦で快投を演じた。

 七回まで一人の走者も出さないパーフェクト投球だった。岡田彰布監督は八回の村上の打席で代打を送った。次の回に二番手の石井大智投手が同点本塁打を許したことで、ファンの一部からは「記録達成に挑ませれば」という声が上がり、サンケイスポーツによれば、岡田監督も試合後のテレビインタビューで「勝ったからよかったようなものの、頭の中はずっと完全試合行けたんかなというね、それは残ってますね。片隅にね」とコメントしたそうだ。

 正解はないが、私は妥当な投手交代だったのではないかと考えている。84球での投球だけに、「まだ行けたのでは」という意見もあるだろうが、先発での実績がまだない若い投手にとっては、スタミナ的にも厳しい状況だったのではないだろうか。むしろ、手ごたえを残してマウンドを降りたことで、次に生きる登板になっただろうし、次に完全試合のチャンスが来たら達成してやろうというモチベーションにつなげることができればいいのではないだろうか。

 とはいえ、ファンの心理もすごくわかる。完全試合なんて現役時代に一度あるか、ないかのチャンス。しかも、七回まできている。プロは興行の世界であるがゆえに、個人の記録にも注目が集まるが、私の持論は「すべての個人記録は、チームの勝利という土台があってこそ」ということがある。七回までのパーフェクトな投球は文句なしに賞賛に値するが、未来の2イニング(結果的には延長になったが)でのチームの勝利へのアプローチに「最善の策」を考えたときには「継投策」だったのではないだろうか。

 もちろん、継投にもリスクはある。完全試合ペースで後を託された中継ぎの重圧は相当なものだろう。石井投手は同点に追いつかれたが、崩れなかったことで延長での勝利を呼び込んだ。そのことも評価に値する。また、降板後の村上投手も納得しているように見えた。スタミナやコンディションは本人にしかわからないこともある。

 この1勝が今季の阪神の成績を左右することもありうる。七回までパーフェクト投球でチームの勝利に貢献した。ファンの人たちにしてみれば、「たら、れば」を言いたい気持ちもわかるが、投球内容が十分に高い評価に値することは結果が物語っている。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

上原浩治の最近の記事